気まずい。
高雄との秘め事の直後に鈴谷が執務室に入ってきたんだけど。
「・・・・」
鈴谷は執務室の私達を見て真顔に戻り、鼻をくんくんさせながら部屋に入ってきた。
一応告白済みの相手だから不貞の現場になるのかな。
まぁ言い訳も何も出来ない状況だから、覚悟を決めないとね。
「高雄」
「はいっ!」
普段の鈴谷からは考えられないほど低い声だったよ。
「盟約は?」
「守りましたっ!」
「よし」
そういえばどこかでその単語聞いたなあ・・ええとどこだっけ・・・あ。
“盟約がありますのでまだ連結は致しません”
翔鶴がそんな事言ってたっけ。ってことは高雄と鈴谷は知ってるんだ、盟約の中身。
「提督」
あ、ついに私に視線が向いた。
「うん」
「端的に答えて」
「うん」
「どーして鈴谷より先に高雄のおっぱい揉んだの?」
「は?」
「鈴谷触って良いよって言ってたよね。揉むって何度も聞いたよね」
「てっきり冗談だと思ってました」
「え、マジ?」
「うん。高雄は本当に悩んでたから・・あ、高雄、上を着なよ、風邪ひくから」
「あ、ありがとうございます」
鈴谷が真顔から眉を顰める表情に変わった。
「んー、高雄」
「はい」
「なんて言ったの?」
高雄はシャツのボタンを四苦八苦して留めつつ答えた。
「私は自分の胸が邪魔で、なんでこんなに大きいのか嫌で仕方ないと」
「そんで?」
「提督はお胸様が私についてるから素敵なんだ、提督に揉まれて私が感じたら二人とも幸せになれると仰ったので」
「実践してもらったと」
「とても信じられなかったのですが、藁をもつかむ思いだったので」
「なるほど・・嘘は言ってないみたいだね」
私は肩をすくめた。
「全く言ってないよ」
「てーとく」
「うん」
「高雄のお胸は気持ちよかった?」
「ふわっふわで最高でした」
「ふわっふわ?」
「ふわっふわです」
「ふむ」
鈴谷の表情が普通に考え事してる時のそれまで戻っていった。
何だと考えて怒ったんだろう?
「なぁ鈴谷、私も教えて欲しいんだけど」
「なに?」
「盟約の中身」
しんと、執務室の中が静まり返った。
ややあって、鈴谷が口を開いた。
「どうして知りたいの?」
「それで皆の行動が制限されてる気がするから、私が出来るなら解決したいんだ」
「うん、間違いなく提督が出来るよ」
「教えてもらえないかな」
「んー・・・・」
鈴谷は今度は困ったぞという表情になった。
不謹慎だけど美少女はどんな表情でも美しい。真顔で睨まれるととても怖いけど。
「ほんとは自然とそうなって欲しかったんだけど、まぁ良いか」
「うん」
「あのねてーとく」
「うん」
「私とシて?それだけ」
私は数秒間、目をぱちぱちと瞬きした。
「ごめん鈴谷、意味が解らない。私は盟約の中身を聞いたのだけど」
「言わないとダメ?」
「理屈で納得できないと間違いなくおっきしないんだよ、男って」
「はぁーめんどうだなあー」
鈴谷がガリガリと頭をかいたあと、キッと向き直った。
「ええとね、盟約は提督との子作りを、私が最初って事にしたの」
「は?」
「だから私と提督がスるまでは他の子達は抜け駆け禁止、子作り以外ならオッケーって事にしたの」
「なんで?」
「・・そこは聞かないで欲しい」
私は机に頬杖をついた。何らかの特典か功績で、鈴谷は私と一番最初に子作りする権利を得た。
あぁなるほど。だから濃厚な行為の後の雰囲気を子作りしたのかと勘違いして怒ったわけだ。
うん、理解はした。理解はしたけど・・
「鈴谷」
「うん」
「童貞に価値があるの?」
「あー、別に提督が童貞かどうかは・・そういや提督童貞なの?」
「童貞じゃないね。ただ過去の記憶か前世の記憶か曖昧だから、この体が経験済かは分からない」
「提督前世の記憶があるの?」
「言ったじゃん。私は男女比1:1で女性が貞操を守る世界の記憶と基準があるって」
「言ってたね。あ、そっか」
「少なくとも今のこの世の話じゃないでしょ」
「確かに。で、おせっせの記憶もあると」
「そうでなければ高雄を気持ちよく出来なかったと思うよ」
巨乳の子って握られたり掴まれるととても痛いみたいだからやめてあげてね。オッサンとの約束だ!
「ふーん。で、鈴谷とシないのは冗談だと思ってたって言ったよね」
「うん」
「それはその、女が貞操を守る側の常識と照らしてそう判断したって事だね?」
「そのとおり」
「じゃー男が貞操を守る世界として考えて欲しいんだけど」
「うん」
「鈴谷と最後までエッチな事してください!」
そう言って鈴谷は右手を差し出しながら90度腰を折ったのである。
私は慌てて執務席から腰を浮かせた。
「えーちょっと待って。考える。考えるからとりあえず頭上げて」
「ヤダ」
えーとえーと、若いハンサムな男が冴えないおばちゃんにエッチしようって言ってるって事か。
何それホストクラブの売上競争とかカルト宗教の勧誘か結婚詐欺的な何かとしか思えない。
でもなあ・・
私は鈴谷の姿を改めて見た。
ピシッと直角に腰を折り、ちょっと手を震わせながら差し出してる様子に嘘は感じられない。
ていうか騙されたところで私には財産も失うものもないわけで。
だとすれば・・
「鈴谷」
私は鈴谷の右手をそっと両手で包みながら言った。
「どうして美人の鈴谷が私なんかにそこまで真剣なのか今一つ理解できないんだけどさ」
「・・・」
「良いよ、というかぜひお願いします」
そこで鈴谷がようやく顔を上げてくれた。
そこに浮かぶ表情は真剣さと、不安と希望が入り混じってて、自分が告白した時の事を思い出すくらいだったんだ。
あれ、相手・・あれ?あの髪の色は・・
とにかく、鈴谷は嘘を吐いてないと確信したんだ。
「でも子作りって1発で上手くいくもんじゃないんだよ?」
「詳しく」
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それから私は鈴谷と巻き込まれた形の高雄の2人に対し、男女の営みについて話して聞かせた。
「へぇー、妊娠するのに何年も何回もする夫婦も居たんだね!」
高雄が頷いて続ける。
「今なら人工授精で95%は1回で、残り5%も2回目でほぼ100%ですからね」
「そーそー、女の体がちゃんと妊娠するのにふさわしいタイミングで施術するしね」
「あー、まぁ、男女の営みってほとんどが妊娠目的じゃないから」
「詳しく」
「どうして話す前から目がギラギラしてるの鈴谷さん」
「いーからはやく説明する」
「・・えーっとね」
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「ふおおおおおっ!つまり快楽が主目的だと言うの!?」
「そうなるね。妊娠「しちゃった」って言ってたし」
「しちゃった?つまりしたくなかったのにしてしまったってこと?」
「そうなるね。快楽が目的だったのに妊娠してしまって困ったなと」
「なんで困るの?」
「最大の理由はそのあとしばらくエロいこと出来なくなるでしょ」
「ふんふん」
「あとは一夫一妻制度なのに妻以外の人とシてたとか、育てる苦労とか、社会的立場とか」
「社会的立場?」
「未成年の妊娠とかだね」
「未成年だと問題なの?」
「こっちではどうなの?」
「んー、無い訳じゃないよ。やんごとない方々が世継ぎ状況の問題で11歳とかで生んでるし」
「うわ」
「まー手厚く医師団が付き添ってるから失敗しないけどさ」
「忌避感はないんだ」
「受精に血縁が絶えるとか仕方ない理由があるからね。そっちはあったんだ」
「うん。成人前の女の子が妊娠するのはあまり良いこととされなかったね」
「ふうん・・あ、だから提督、鈴谷が未成年と勘違いしてて萎えたって言ったんだ!」
「ロコツ。まぁそうだよ。白い目で見られたら可哀想だからね」
「こっちでは全然問題無いよ。そもそも鈴谷っていうか艦娘は皆成人してるし」
「そうだったね。だからこそ告白したんだけど」
「う、うん。あれは思い出すだけでイケるよ」
「で、だ。鈴谷さんや」
「うん」
「鈴谷の盟約は1回男女の営みをする事なの?それとも妊娠までってことなの?」
再び執務室に静寂が訪れた。