艦娘可愛いです。   作:銀匙

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【その3】

「で、こっちが霧島だ」

「こんにちは」

「はっはい!マイクチェックオッケーです!」

「カラオケ歌うの?」

 

昨晩とは打って変わった様子の七條司令官に連れてこられたのは食堂だった。

既に腹いっぱいですよとアピールしようとしたらその場に居る艦娘を次々と紹介された。

なるほど、食事時だから皆ここに居ると。手間を省いたね?

 

「司令官!話題の人にインタビューを申し込みたいのですが!」

「青葉か。ちょうどいい、鎮守府内まで認める。外には出すな」

「わっかりました!」

 

霧島さんと握手していたら横から青葉さんがカメラを持って割り込んできた。

インタビューとな?ふむ、ここは第1印象が肝心だな。

 

「まず!お名前をどうぞ!」

「それが・・・まるで覚えてなくてね・・故郷の事も・・」

「あっ」

 

瞬間ネガモードって知ってるかな?

それまで普通に振舞っていたのに突然表情を暗くして俯きがちに弱弱しく笑うことだよ。

一気に聞けるような雰囲気じゃなくなるようにしたい時に有効だ。

純真な子ほど良く引っかかるけど、引っかかりすぎることがあるから注意だよ!

 

「揶揄うのはやめてやれ。青葉はこれで意外と繊細なんだから」

 

そう。逆に七條司令官のように老獪だと通じないぞってイタタタタ!

 

「良からぬことを考えてるのが丸わかりだぞ?ええ?」

 

凄みの効いた笑顔で頬をつねらないでください!

 

「いひゃいいひゃい。うひょれしゅ」

「まったく。名前も思い出せんのか?」

「その辺は本当にさっぱりで」

「いつまでも名無しというわけにもいくまい。適当に名乗れ」

「・・・ジョ」

「ずっとその名前で皆で呼び続けるからそのつもりでな?解ってるな?」

 

くっ。

ジョージ・モス・ラムール3世とか言って「なんでやねん」と返してもらおうと思ったのに!

 

「・・・・桧山竜二で。ひのきにマウンテンの山、竜王の竜に漢数字の2で」

「・・・兄がいるのか?」

「知りません」

 

じゃあなぜ2人目みたいな名前なんだと呟く七條司令官を横目に、私は青葉さんに向き直った。

「というわけで桧山竜二です。年齢はヒミツで。どうぞ青葉さん」

「あ、えっとですね、私は呼び捨てにしてください!さん付けは居心地が悪いので!」

「じゃあ・・青葉?」

「はい!」

「よくできました」

「返事しただけなので頭撫でなくていいです!」

「元気でよろしい」

「撫で続ける理由を付けなくていいです!」

「このトシになると若い子はみんな孫みたいに思えてなあ」

「おや、おいくつなんですか?」

「知らないですよ?」

「お住まいやご出身とかも・・」

「さっぱりです」

「えー・・あまりにも紹介ネタが無さすぎます」

「びっくりだよね」

「そろそろ頭撫でるの止めてください」

「はい」

 

手を引っ込めると、青葉が両手で自分の髪型を軽く整えながら言った。

 

「阿武隈ちゃんにやったらダメですからね!」

「阿武隈ちゃん以外は良いの?」

「特にダメってことです」

「なるほど?」

「・・解ってるか否かより、やらないですよねって聞いた方が良いのでしょうか」

「嫌がられることをわざわざやらないよ~」

「ほんとですかぁ~?」

「ほら見てよ、この目を見ても信じられないかい?」

「見てるから言ってるんですけど」

「そんなっ!」

「ちなみに好物とかも全部記憶にないんですか?」

「んー、昨晩にしろ今朝にしろ、料理を前にすると旨そうだなあと思ったから見たらわかるかも」

「ほうほう」

「かくいう青葉は何が好き?」

「かつ丼ですね」

「卵は?」

「ほぼ生で」

「ネギは?」

「クタクタで」

「かけるのは?」

「一味以外何があるというのです?」

「素晴らしい」

「恐縮です」

 

笑顔で強く握手を交わす青葉と私を横目に、心底どうでもいいとばかりに首を振る七條司令官。

もっと興味持とう?

 

「あー、じゃあ青葉、鎮守府内の案内と立入禁止区域の説明は任せた」

「お任せください!行きましょう竜二さん!」

「・・・」

「竜二さん?」

「・・あっ私か」

「もー!自分で名乗ったじゃないですかぁ!」

「だって即席で作った偽名だし」

「身も蓋もない!いーから行きますよ!」

 

こうして青葉に引きずられつつ食堂を後にした。

視線をくれた子達に手を振ると苦笑しながらも振りかえしてくれた。良い子達である。

 

 

-----

 

 

「護岸に階段がついてるんだね」

「そうでないと私達が上陸できないので」

「そりゃそうか。じゃああのクレーンは?」

「補給船から積み荷を降ろす時に使ってますね」

「あの上ってハシゴで行き来できるんだ。サボるのに良さそうだよね」

「どうしてそういう所の観察眼だけ鋭いんですか・・・」

「失礼な」

「だってさっきから、あそこは昼寝スポットだなーとかそんなんばっかり」

「実際合ってるだろ?」

「だから余計タチが悪いんですっ!」

「青葉のお気に入りは黙ってるからさ」

「・・どこだと思ってるんですか?」

「黙秘します」

「本人にまで黙らなくてもいいでしょう!」

「口が堅いでしょ?」

「まるで信用できません」

「そんなこと言うと口が滑っちゃうかも~」

「可愛くいっても脅迫ですからねそれ」

「ちぇっ」

「それはさておき、鎮守府は大体こんな感じですかねぇ」

「立ち入り禁止はいきなり崖になる裏の獣道と稼働中クレーンの真下だけか?」

「あ、ラッシュの時の工廠にうかつに入るのも止めた方が良いですね」

「どうやってわかるんだ?」

「大騒ぎですからすぐ分かります」

「ほうほう」

「そろそろお昼ですね。食堂に行きましょうか」

「今日の日替わりはカニピラフらしいよ」

「何で知ってるんですか?」

「厨房の中で立てかけ看板に書いてるのが見えたから」

「だからどうしてそういうとこばかり見てるんですか」

 

 

-----

 

 

「あっ那智さん!」

「青葉か。どうした?」

「桧山さんの案内が終わって昼食まで食べたんですが、この後どうしようかと」

「とりあえず司令官のところに連れていくか。私が引き継ごう」

「恐縮です!」

ここでお別れになるなら礼を言っておくか。

「青葉、ありがとうね、良く解ったよ」

「いえいえ・・あの、いいですか桧山さん?ちゃんと真面目に学んでくださいね?」

「え?私はいつだって真面目だよ?」

「・・・那智さぁん」

「青葉ご苦労。ゆっくり休め。あ、印刷前に最終稿を見せろと司令官が言ってたぞ」

「はぁーい」

何故か疲れた様子で肩を落として歩き去る青葉を見送っていると、

 

「何してる、置いていくぞ?」

 

と、少し離れた所から那智さんが声をかけてきた。

 

 

 

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