艦娘可愛いです。   作:銀匙

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【その3】

 

 

飛行艇から鎮守府に降り立つと、3名の艦娘が駆け寄ってきた。

日向、大淀、そして

「テートク!Welcomebackデース!なーんて・・」

「ただいま金剛。出迎えありがとう」

「・・・へっ?」

 

こんごうは こんらんしている!

 

長門が金剛の目の前で手を振るが、反応が無い。

溜息をつきながら金剛をひょいと肩に担ぐと、私に視線を寄越した。

「これで私の発言が信用できたか?」

「最初から信用してるけど?」

「ならなぜ刺激した?」

「刺激って・・挨拶は大事でしょ?」

長門は俯き、それはそれは深いため息をつきながら頷いた。

「・・そうだな。挨拶は大事だ。大騒ぎになる前に執務室へ行くぞ」

「うん」

長門は残る二人に疲れ切った目を向けた。

「緊急事態だ。このまま執務室へ来るように」

2人は既に呆気にとられていたが、ぴしりと敬礼を返した。

 

 

-----

 

 

「なん・・だと・・」

「そっ、そんな・・理解の範囲を超え・・いやそんなまさか」

長門はそれはそれは長い段階を踏み、丁寧に丁寧に説明しソフトランディングを試みた。

私が補足しようと口を開くと、声を発する前に素早く手で制止をかけるくらい気を使っていた。

それでこの反応である。

ちなみに金剛は今もソファですやすやである。

それにしてもなぜ私が場を和ませるジョークを言おうとしてることが分かるかなあ。

ねぇ妖精さん?つまんないねー?

 

暇で仕方ないので、私に寄って来た妖精さんをそっと手でつまみ、高い高いをしていた。

妖精さんは大喜びだが、それすら既に面々には異様な光景だったらしい。

 

日向が慎重に口を開いた。

「長門。今なら質の悪い冗談だったで金剛にとりなす。この人は妖精が見える女優だな?提督をどこへ隠した」

「私がそんなことをするほどヒマ人に見えるか?」

「見えないからこそ騙せる勝機がある」

「疑いすぎだバカモノ。そんな事をして何になる」

「そうか。内部に裏切者がいたか。最終防衛策だな?」

「違うといっている」

「そこまで言うのなら瑞雲に誓えるか?」

「“瑞雲に誓って、この方が本物の提督だ”これで良いか?」

「バカナァッ!」

「どこまで疑ってかかるつもりだ」

劇画調の顔でがくがく震えつつ動作停止した日向に代わり、大淀が口を開いた。

 

「ええとその、つまりその、記憶を無くされたからこれまでの拒絶感が無くなったという事ですか?」

「・・それはあるかもしれぬ。だがそれだけでは説明がつかないだろう」

「はい。男女比1:1の世界、貞操逆転の概念・・あっ」

「なんだ?」

「あの、その、それは提督の理想だったのではないでしょうか?」

「なに?」

「男女比が1:1で女性が貞操を守る側なら、過去のあのような惨事は最初からありません」

「・・・なっ」

「ですから、そういうユートピアを願うあまり、そうだと思い込まれたのでは?」

 

私は妖精さんを高い高いしたまま硬直した。

ええと、今までの常識がユートピアレベルなんですか?

もう鎮守府の外に出たくないです。引きこもって良い?

妖精さんをそっと下ろし、私は長門を見ながら小さく手を挙げ、発言権を求めた。

長門はしばらく疑わし気に私を見ていたが、やがて溜息と共に頷いてくれた。

どれだけ信用ないんだろう。

 

「えっと、名前も思い出せないわ常識も文化もとんちんかんとなれば気が触れたと思われても仕方ないよね」

「すっ、すみません」

「いやいいよ大淀、そういえばそうだなあって納得したし、もしかしたらそうなのかもしれない」

「・・・」

「ただ、長門はさ、こっちの私の方が良いって言ってくれたんだ」

「・・・それはそうですよ。女だって拒否されたくはありません」

「だよね」

「でも提督がそうなってしまったのは、度重なる誘拐や強制猥褻の連続被害の結果ですので」

「そんなに?」

「・・そうした記憶は封じてらっしゃるのですね」

「一応聞いて良い?大まかな件数だけでも良いから」

「鎮守府に着任されるまでに誘拐被害26回、強制猥褻被害は逮捕案件だけですが591件です」

 

そりゃ女という存在を意識の外に置きたいだろうよと、納得した私であった。

 

 

-----

 

 

私は長門と大淀からこの鎮守府に関するレクチャーを受けていた。

「えーつまり、建造に成功しても鎮守府に配属されるとは限らないってこと?」

大淀が頷いた。

「はい。男性を見てヒャッハァしてしまう艦娘は即座に転属となります」

「ヒャッハァ」

「特に駆逐艦と軽巡に多いのですが、年々隠蔽が巧妙化しています」

「隠蔽って?」

「無表情無関心を長期間装いながら襲う機会を窺っていて、提督が無防備な瞬間にすぽーんと」

「すぽーん?」

「自ら全裸になって襲い掛かるわけです」

「あぁ逆ル●ンダイブね」

「ええと?」

「多分分かんないだろうから良いよ。これ以上は版権怖いし」

「???」

 

ってことはですよ?

 

「なぁ長門」

「あぁ」

「今日の会合で視線も感じなかったのは奇跡なのか?」

「いいや。貴殿が不快な視線を感じたと指差した時点で即座に逮捕拘束される」

「逮捕!?現役軍人が?」

「そうだ。逮捕自体に例外はない」

「うわぁ・・」

「それでも抜け道はあるから用心した方が良いぞ」

「例えば?」

「近くの人を見ていたと抗弁し、凄腕の弁護士をつけ、裁判の長期化を狙い、貴殿に告訴を取り下げさせるという方法だ」

「なんでそんなこと」

「自分を見てくれるなら裁判の被告席でも良いという女が山ほどいるからな」

「うぉ・・ぉぉ」

拗れすぎだよ!

「幸い軍人で司令官クラスともなれば何度も性癖調査される。よほどの手練れ以外は弾かれる」

「よほどの手練れがいるって言ってるよねそれ」

「さて大淀、現在の鎮守府内には未テスト者は居ないな?」

「物凄く強引に話題変えたよね長門?ねぇ長門?ちょっと?きりっとした顔で無視しないで?」

「居りません」

「大淀さん?私の声を聞いて?泣くよ?」

「では説明会を開く。イチハチマルマルに食堂で良いか?」

「第2艦隊の補給が間に合いません。イチキュウマルマルにしてください」

「判った。ではイチキュウマルマルで」

 

無視された私は妖精さんを指の腹で撫でていた。

ふんだ。悪戯してやる。

ねー妖精さん?何しよっか?

 

 

-----

 

 

そして執務室の時計の針が23:00を指した現在。

私は大淀と二人で執務室に事実上軟禁されていた。

 

「最初から提督が居ると収拾がつかなくなるから後で呼ぶ。それまで部屋から出るな。良いな?出るなよ?」

 

長門は言い切った。

完全に読まれてるよ、くそう。

開幕早々小指立ててド演歌を1曲歌おうと思ってたのに。

 

で。

執務室から直接男性用トイレに入れるからそっちは困らなかったんだけど。

 

「あの、大淀」

「はい」

「お腹が・・空いたのですが」

「すみません。話し合いが夕食会を兼ねてるので呼ばれた後に食事となります」

私は傍らで遊んでいた妖精さんに話しかけた。

「妖精さん、お腹空いたね。ひもじいねぇ」

妖精と二人でお腹を軽く押さえながら涙目で大淀を見る。

「いっ、あっ、なっ、長門さんから執務室を離れるなと厳命されてますので」

「何も言ってないよ・・・・・」

「間違いなく非難してますよね!?」

「じゃあ誰かに頼んで持ってきてもらってよ・・それくらい良いでしょう?」

「くっ・・しっ仕方ありません・・こちら大淀、誰か応答を・・こちら大淀?・・あの・・」

 

大淀は確かにインカムを何回か鳴らして必死に呼びかけたが、応答が無いらしい。

 

「大丈夫なの?実は敵に攻め込まれたりしてない?」

「その場合はアラートが鳴りますし、本当にそうならますますここを離れるわけにはいきません」

「私の腹のアラートは鳴り響いてるよ・・部屋になんか無いかなあ」

「期待薄かと思いますが・・・」

 

私は執務室の机や戸棚を開け閉めして間食の類を探したが、見事に何もない。

それどころか生活感皆無。ここには本当に短い時間しか居なかったのだろうね。私ってば。

 

でも。

食料の代わりに引き出しの奥に押し込まれていた紙の束を見つけたんだ。

表紙には「黙示録」の文字。

タイトルからして嫌な予感しかしないけど。

まさか私、中2病患者だったとか?

なさそうだよね・・

 

 

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