艦娘可愛いです。   作:銀匙

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【その4】

 

 

O月×日:密室でズボンを下ろされた。長年勤め信用していた鎮守府の用務員。

 

O月△日:飛びついてきて乳首に噛みつかれた。仮配属中の艦娘。

 

△月×日:警備員離席の隙を狙い、押し倒してきて服を破られた。また見合い相手。

 

 

う、うわぁ・・・

それはただひたすらに、淡々と被害を綴った束だった。

この人ありとあらゆる女性から散々な目に遭ってるなあ・・

女性に冷たいなあって思ってたけど、鎮守府着任後もこの期間でこの件数じゃ女性不信になるわ。

 

私の後に読んだ大淀は小さく頷いた。

「残念ながら事実かと。日付的にいくつかは私が現行犯逮捕した件ですので」

「裏付けまで取れちゃったかあ・・そりゃまぁ、記憶も封じたくなるか」

 

少なくとも今の私にとって艦娘達はゲームの中の美女美少女という認識である。

恥じらいも貞操観念も私側の仕様であり、間違ってもヒャッハァではない。

あれだけの可愛い子にしゃぶられるんだろ文句ないじゃんというかもしれないが、こっちだって人間だ。

人としての尊厳を無視され、闇雲に性欲をぶつけられるなんてムリ。

 

リアルの艦娘と出会えたと喜んでばかりもいられない、か。それにしても。

 

私は大淀に問うた。

「ねぇ大淀、どうして建造するの?」

大淀は肩をすくめた。

「本営最高命令です。全ての鎮守府で艦娘を増やすようにと」

「現状戦況は劣勢ってコト?」

「はい。戦況は膠着状態で消耗戦の様相を呈しています。増やさなければ削り切られてしまいます」

「・・私が提督を辞めればいいのかな」

「それでは提督がますます危険に晒されます」

「大淀は優しいね」

「あっ・・ありがとう・・ございます」

「でも結局私はお荷物だし、本当に現在が気が触れたのなら被害も防ぎきれてないって事だし」

「・・」

「いっそ、じさ」

「ダメです提督。それだけは拘束してでも防がせて頂きます」

大淀の声が妙に冷えた。

私は大淀を見た。

夜の闇の中で、大淀の瞳が青白く光っていた。

「警告します。発言を続けるとコードに抵触する恐れがあります」

「大淀、きみは機械なのか?男として聞いている」

大淀が一瞬行動を停止した。

「・・・はい。AIです」

「鎮守府内の治安維持部隊?」

「はい、私一人ですが」

「じゃあどうしてこんな体たらくを許してるんだ?」

私は黙示録を指先でトントンと叩いた。

「それは・・」

「警備を増やすなり、この鎮守府だけ建造を止めるなり、対策は打てるはずだ。なぜ野放しにする」

「その質問には答えられません」

「男の命令として言うね。答えて」

「・・・・」

数秒の間、大淀の表情が百面相のように変わり、やがて。

「・・回答が許可されました。理由は政治的配慮です」

「なんだって?」

「一刻も早く男を増やしたい。義務以外にもあらゆる手段での繁殖を試みろと指示が出ています」

「誰から」

「日本政府の官房長官です」

私は溜息をついた。結局は国のエゴか。

「それにしては未遂で逮捕ばかりだ。中途半端じゃないか?」

「長門、日向、金剛が所属艦娘達を指揮して徹底抗戦を続けているからです」

「理由は」

「提督をお守りすると」

「大淀の立場は?」

「・・中立です」

「男として聞くね。大淀のスタンスを教えて」

「消極的中立。最低限の治安維持以外不干渉を貫いてます。これが立場上の限界です」

「引き続き男として聞くね。古巣からは何と?」

「行動パターンの情報提供や侵入の手引き等を常時催促されています」

「行わない理由は?」

「私だって・・罪のない提督を守りたいですから」

「そっか。強い口調で聞いてごめんね」

「いえ。疑問はもっともですし、普通は決して言えない事なので・・すみません」

「そうだろうね。良く解ったよ」

 

私はどさりと背もたれに自分の身を預けた。

じゃあ世界で信用出来るのは長門を始めとしたうちの子達だけって事じゃないか。

気づけよ今朝までの私。味方まで拒絶してどうすんのさ。

 

オーケー分かった。

やったろうじゃないの。

 

その時、執務室のドアがノックされた。

 

 

-----

 

 

「良いか提督?決して、余計な事を、言うな、語るな、踊るな、歌うな。解ったな?」

「分かってるよ長門。心配しないで?」

「これほどまでに不安にさせる返事をかつて聞いた事があるだろうか。いや、ない」

「そこまで言う?」

 

私が呼びに来た艦娘(足柄だった)について行くと、食堂の外で長門が待っていた。

そして噛んで含めるように繰り返し余計な事をするなと念押しされているのである。

 

「ほんとに大丈夫だよ。男の特権まで使って大淀から色々聞いたからさ」

長門の肩がピクリとはねた。

「・・男の特権だと?」

「うん。間違いなく機密事項にアクセスしたと思うよ。あれ特権モードだと思う」

「大淀が治安維持ロボットだと知っていたのか?」

「AIだと答えてくれたよ」

「凄いな。彼女は拷問されてもAIだと自白しないし、分解されそうになれば自爆するのだが」

「自爆までは知らなかったけどね。それとね長門」

「ああ」

「今まで護ってきてくれてありがとう」

「・・艦娘が自らの司令官一人守れないでどうする」

「それを内側からの敵にも適用するのが長門らしいと思うよ」

長門が眉をひそめた。

「内側だと?」

「鎮守府内じゃないよ。同じ国のってコト」

「あぁ。内憂外患で困ってしまう」

「そんな中で僅かな味方である長門を裏切ったりしないから」

私を見つめた長門は溜息をついた。

「・・これから食堂に案内する。所属艦娘が職務遂行中の1人を除いて居て、全員信用出来る」

「何を話せばいい?」

「自分に関してありのままを。そうだな、貞操逆転や男女比の話もしていい」

「良いのか?」

「それが現在の判断基準なのだろう?認識を合わせる必要がある」

「解った。茶化さずに伝えるよ」

「ああ」

 

それから食堂に入った私は、面々の表情を窺いながら真面目に説明した。

驚き、同情、そして突き放し。

素直に頷いてくれた子はとても少なかったと思う。

まぁ大淀さえ気が触れたと判断したのだからね。

保護対象と認識してくれなくなるかもだけど、私にはこれしかなくて。

 

「というわけなんだ。顔と名前が同じ別人とでも思ってくれた方が良いかもしれないけど」

 

そういって肩をすくめた時、一人の艦娘が立ち上がった。

 

「なにかな、比叡さん」

「・・・あなたは本当に、男性の司令ですか?」

「生物学的に男で、長門から経過を聞く限り今朝ここに居た提督です」

「金剛姉さまは、今朝までの司令を、とても心配していました」

「理由は?」

「度重なる性被害を未然に防げない、未遂は襲われてはいるのだから司令は参っていると」

「うん」

「だからせめて、心から司令を案じている艦娘も居ると解って欲しいと」

「うん」

「もう1度聞きます。あなたは本当に、男性の、私達の司令ですか?」

「誓って偽りは言ってない。君達の記憶が無くて何も言えないのが本当に残念だけど」

比叡は私をまっすぐに見た。

私は口を閉じてまっすぐ比叡を見た。比叡かわいいよ比叡。

 

数秒間の後、比叡は頷いた。

 

「解りました。引き続き司令をお守りします」

 

長門が口を開いた。

「比叡以外でも問いたい者は今言え。信頼形成が重要なタイミングだ」

 

別の艦娘が立ち上がった。加古だ。

「提督」

「うん」

「あたしはさ、防げてないのは悪いと思うけど、提督にも協力して欲しいって思う」

「具体的には?」

「私達とケッコンカッコカリしちゃえば見合いは要らないし、寝室含めた24時間警護も可能になる」

「・・」

「これいうと、ほら、今の長門みたいに良い顔されないけど事実でしょ?」

傍らの長門を見ると、苦虫を噛み潰したかのような顔をしていた。

「・・」

「プライベートは一切踏み込んでくるな、外来者は通せ、守りは完璧にしろってのは無理だよ」

私は長門をちらりと見てから加古に頷いて、口を開いた。

「加古」

「うん」

「いいよ、結婚しよう」

「は?・・・・へっ?」

傍らで長門が勢い良くこちらを向いたけどさ。

「私はここに居る皆と結ばれるのは大歓迎だよ。良く言ってくれた」

皆可愛いけどこういう事言える機会ってあまりないんだよね。渡りに船とはまさにこのこと。

でも、その途端に加古があわあわし始めた。

「えっ?あっ、あれっ?私寝不足?幻聴聞こえてる?幻覚まで?変なもの食べちゃった?」

「違うよ」

私はつかつかと加古の前まで歩いていくと、そっと抱きしめた。

「ふにょへっ!?・・あっ・・・あ゜っ」

どうしよう。なんか腕の中の加古がビックンビックンしてる気がするんだけど・・・

あっこれ手を離したら崩れ落ちる奴!加古すごい良い匂いだから役得だけど!

ふと、加古の肩越しに長門を見たら、鬼のような形相で半笑いをしていたんだ。

「ふっ・・ふふっ・・提督・・ふふふふふ」

「長門、聞いてくれ。私は本当に加古の提案が正しいと」

「余計な事は言うなと、あれほど念押しをしたではないか」

「余計な事なんて何も言ってないよ!」

「加古を見ろバカモノ!昇天して痙攣してるじゃないか!」

「軽く抱きしめただけでイクなんて思わないでしょうが!!!」

 

それから5分間に渡り、私と長門が加古の肩越しに非難の応酬をしていると、不意に声がした。

 

「テートクも長門も、いい加減にしなさい。order?」

声の方を向くと、腰に両手を当てた金剛がそこに居た。

頬膨らませてなんとかわいいことか。

「もう真夜中ヨ?加古はちょっと嬉しすぎただけデース」

「嬉しすぎた?」

「長年の提案を呑んでもらえたのと、嫁として選ばれた事デース」

「・・そうか」

「それと」

「?」

「もう皆、解ってるデショ?長門がテートクを信じてるってコト」

周りを見回すと、ほぼ全員が苦笑していた。

その一人、足柄が肩をすくめた。

「そうね。相手を信じてないと低レベルの口げんかなんて出来っこないもの」

長門が一気にジト目になった。

「足柄、私は」

「いーじゃない?今朝までの彫像みたいな提督よりずっと血が通ってる感じがするしね」

そのまま足柄は私に流し目を送ると

「何番目でも良いから私とも結婚ヨロシクね?これでも苦労してきたんだから」

そう言ってパチンとウインクをくれたんだ。

 

 

 

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