艦娘可愛いです。   作:銀匙

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【その6】

 

 

「提督、マルロクマルマル、起床時間だ・・・起きているか?」

 

長門は返事が無い事に違和感を覚えたが、すぐに思い直した。

昨日までの提督は私が言い終わる前に「はい」と返事が来る。

朝食の時もそう。部屋の前に食事を置いておくと綺麗に食べ終えて同じ所に置いてある。

しかし昨日の午後、事態は一変した事を思い出したのである。

 

長門はジト目になった。

何故か軍服のまま、よだれを垂らし、グーグー眠る提督の絵図が頭に浮かぶ。

いやまさかそんな。同じ人間だぞ?

 

・・・どうしようもなく、だらしない予感しかしない。

 

「提督、10秒後に開けるぞ?問題があるなら言え。10・9・・・・2・1!いいか?」

 

ガチャリと開いたドアの音に私は振り返った。

 

「おはよ。別にそこまで気遣わなくていいからね?長門」

 

え?なんで長門は鳩が454カスール弾喰らったような顔でぽかんとしてるの?

 

「すまない。ちょっと、いやかなり意外だったのでな」

「前の私はそんなに寝起きが悪かったの?」

「いや、私が来る前にきちんと起きていた」

「じゃあ何が意外なの?」

「さて、朝食は部屋で食べるか?食堂に行くか?おすすめは部屋で食べる方だ」

「何が意外なの?」

「先に言っておくがコーヒーか紅茶か選ぶときは心するんだぞ?決して偏るなよ?」

「何が意外なの?」

「そうだ。朝食開始まで間があるが、先にシャワーを浴びるか?それなら風呂場はあっちだ」

「何が、意外、なの?」

「・・・・・」

 

一回言うごとに長門へ一歩ずつ近づいていく。

もちろんだんだんジト目になるのはお約束だ。

長門は目と鼻の先である。

 

「さぁ言ってみ?何が意外なのか」

「黙秘する」

「まぁいいや、長門」

「な、なんだ?」

「昨夜はからかいすぎた。ごめんね?」

「っ!?」

 

うん。長門は本当にすぐ表情に出る。

今は不意を突かれたあって顔してる。

 

謝るとか褒めるって、機会を逸するともう全く言えなくなる。

「3年前の8月6日の15時36分、落し物拾ってくれてありがとね」

とか言わないでしょ?言われた方もむしろ気味悪くなる。

だから相手の反応とかとりあえず置いておいて、最優先で言っちゃう。

え?さっきから散々余計なこと言ってなかったかって?

まったく身に覚えが無いですね。

 

ところで長門から反応が消えたんだけど、まさか。

 

私はゆっくり長門の前で手を振ると、はっとしたように長門が反応した。

さすが長門復帰が早い。ザ〇とは違うのだよ〇クとは!

 

「驚いた。男性も謝罪するのだな」

「さすがに失礼すぎる」

「いや、すまない。今まで聞いたことが無くてな」

「今までの私からってこと?」

「今まで会った男全てだな。といってもごく僅かだが」

「そりゃインパクト強い出来事になったね」

「そういう事だ」

「・・あのさ長門」

「なんだ」

「もしかして、飛行艇から降りて出迎えてくれた艦娘に挨拶を返す男というのも・・」

「見たことも聞いた事もないな」

「そりゃ金剛が気を失う訳だ」

「だからといって別に謝る必要はないぞ。嬉しかっただろうからな」

「うん。あ、朝食は食堂で食べるよ?」

「所属艦娘を壊滅に追い込む気か?考え直す気は無いか?」

「はははまさかそんな」

「昨晩の加古を思い出そうな?良いな?解ってるな?気軽に対空機関銃の引き金を引くなよ?」

「7.7mmって全然撃墜出来ないよね」

「お前のは毘式40mmだバカモノ」

私は自分の下の方に視線をずらし、頬を染めながら小声で答えた。

「そっ・・そんなには・・太くも長くもないからさ・・あの、期待させちゃってごめんね」

「ばっバカッ!バカモノッ!そっちの意味じゃない!!」

長門が顔を真っ赤にして両腕をぶんぶん振っている。すごいな風を感じるよ。

いやぁキワドイ話題までちゃんとついてきてくれるって嬉しいなあ。

「長門は太い方が良い?」

「すまんが未経験なのでな、知らん」

「最高だよ長門」

「・・冗談で・・言っては・・いないな。処女なぞうっとうしいだけだろう?」

「なんで?」

「血生臭いから先に破って来いと言われると聞いたのだが?」

「は?痛いのが可哀想だから経験してるならそれはそれでいいよって言うだけだよ」

「・・痛いのか」

「らしいよ?ないから知らないけど」

長門が視線をずらした。

「その・・なんだ・・」

「大丈夫だよ長門。うんと優しくするからね」

「ばっ・・ばかっ・・ばかもの・・まだすると決まったわけでは・・バカ」

あー真っ赤になって恥じらう長門かわいい。

ほんとにもう、皆可愛いなあ。

 

 

-----

 

 

えっと。

「・・・・」

 

私と長門が食堂に入ると、賑やかだった場内が水を打ったように静まり返った。

その、なんだ。私が食堂に足を運ぶのってこんなにも異常な事なの?

そっと配膳窓口に行くと間宮さんがわたわたしている。

 

「あ、あわ、あわわわ」

「間宮さん、おはようございます。1人前頂けますか?」

「けぴっ・・」

えっなんで?ご飯貰おうとしただけでなんで白目剥いて倒れちゃうの?

「へっ?だ、だだ、大丈夫かい間宮さ・・」

 

ガッ!

 

その時私の右肩が強く掴まれた。振り返ると長門が首を振りながら肩を掴んでいた。

 

「レフェリーストップだ提督。予想以上だった。部屋に戻ってくれ。私の判断ミスだ。すまなかった」

 

私はがくりと肩を落として部屋に戻ったさ。

朝食は長門がお部屋まで持ってきてくれたので一人で食べました。しくしく。

でも久しぶりのご飯美味しいです。寂しくてもモリモリ食べるよ!

 

「このままずっとボッチ飯なのは嫌だなあ」

「ボッチ飯とは一人で食べるご飯の事か?」

「そう。一人ぼっちの飯だから」

「面白い省略の仕方だな」

「こっちでは言わない?」

「言わないな。ところでそんなに皆と食べたいのか?」

「うん。会話もなく食べるなんてつまらないでしょ」

長門は腕を組み、首を傾げた。

「間宮があれではな・・もう少し段階を経たら、あるいは・・」

「段階?」

「週に1度ずつ、一瞬顔を出す、1分ほど立ち入る、5分ほど座る、水だけ飲んで帰る、お茶を頼むといった具合だ」

「5週間かけてお茶しか飲めないんだ。でもなんで間宮さん気を失ったのかな」

「言わなかったか?提督が不快な視線を感じたと指差すだけで逮捕されると」

「あ」

「間宮は人一倍真面目で頭が回る。リスクを理解し極度に緊張しても致し方あるまい」

「・・まぁ実際に出来るなら、本人にそのつもりが無くてもってことか」

「そうだな。害意が無いことを説明し納得してもらうのも手かもしれないが」

「改めて思うけど男の扱い無茶苦茶だね」

「どう扱えば良い?」

「同僚かなあ。長門にとっての日向とかそんな感じ」

「同じ理由で厳しいだろうな」

「まぁ無礼講みたいなものだもんね」

「うん?酒席の無礼講の事か?」

「そうだよ。真に受けて上司に忠言でもすれば愚か者と呼ばれ一発で左遷される、あの無礼講だよ」

長門は苦笑した。

「心象的に近しいものはあるだろうな。昨日の今日でにわかには信じられんしな」

「一旦棚上げかなあ。さて、と。鎮守府での私の仕事なんだけどさ」

「ああ」

「企画立案は長門が差配してるんでしょ?承認書類は私が書くの?」

「いや、私だ。基本的に鎮守府は私達4人で動かしている」

「その間、昨日までの私はどうしてたの?」

「部屋に居たぞ」

「部屋の中で何してたの?」

「席に座ってじっとしてたな」

「・・・あのさ長門、それ、無理」

「なぜだ?」

「長門出来る?1日中呼ばれる時以外自室の席に座ったままじっとしてるって」

「・・・・無理だな」

「でしょう?ほとんど拷問だよ」

「気が付かなかった。提督は普通に動かなかったからそれが当たり前になっていた」

「というわけで、今の私に置き換えて考えてみて。何すれば良い?」

「部屋に居ろ。出るな。絶対。決して。座ってろ。動くな。外鍵をつけて良いな?」

「くっ即答しやがった」

「昨晩はピンを抜いた手りゅう弾と表現したな」

「うん」

「あれは嘘だ」

「言い切ったよこの人」

「行くところ行くところトラブルしか起こさないからな。もはや比べるものがない」

「いやぁ比類するものなしなんてそんな」

「褒めてない」

「だよね。だからとりあえず部屋に居ろと」

「そうだ」

「仕事手伝わせてよ」

「解るのか?」

「・・そこは教えてよ」

「あとでな、あとで」

「絶対教えてくれないやつ」

「提督が如何に変わろうが今日も鎮守府を回さねばならんのだ」

「せめて誰か話し相手が欲しいです」

「私は昼間は忙しいから無理だ。仕方ない、誰か寄越す。いいか?それまで絶対部屋から出るなよ?」

「フリ?」

「爆弾をばらまくなと言っている」

「しばらく待って誰も来なかったら出ちゃうかも~」

「それを何と言うか知ってるか?」

「ピュアなふりしたタチの悪い脅迫」

「正解だバカモノ」

 

 

 

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