艦娘可愛いです。   作:銀匙

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【その7】

それから30分ほど経過して。

 

コン・コン・コン

 

「はーい、なんでしょ?」

「あっ、あのっ!はっ話し合いに来た加古でござる!」

 

どうしよう。ドアの向こうなのに確実にテンパってるのが解る。

とりあえずドア開けてみよう。

 

「どーぞどーぞ」

「お邪魔するでござる!」

どうして武士口調なのさ。

ロボットみたいに動きカックカクだし、手と足がシンクロしてないよ?逆に器用じゃない?

 

「えと、まぁ、そのソファにどうぞ」

「ありがとうでござる」

 

私の部屋には応接スペースがあって、2人掛けのソファ、1人掛けのチェアがそれぞれ向かい合って置かれてる。

その2人掛けの方に加古を座らせ、私は向かいの2人掛けソファに腰を沈めた。

 

「長門から話し相手になるよう頼まれたんだよね?」

「そっ、そう・・ともいえるし、違う・・ともいう」

「どうしたの?」

 

加古は何回か口を開きかけては閉じを繰り返し、ようやっと話し始めた。

 

「なっ、長門がさ、昨晩の提督は冗談なんかじゃないって・・言うから・・確認したくて」

「存在が?」

「ちっ違くて、その、あの、あっ、アタシを抱きしめて・・言って・・くれた・・こと・・」

 

あぁ。プロポーズ。

 

「もちろんだよ。だって私は加古が好きだもの」

 

加古はそれを聞いた途端、目のハイライトが無くなった。

口が半開きになり妙につややかである。

 

「えはっ?・・・・ぺぷ?」

 

この子は何を言っているんだろう?

 

 

-----

 

 

「あー、ホンットヤバかった。三途の川を渡り切っちゃったよ」

「渡り切ったんだ」

「でも提督と結婚して子供生むまでは死ぬもんかって必死に泳いで帰ってきた」

「自力で帰ってくるの凄い」

 

しばらくして再起動した加古は青ざめた顔でそんなことを真面目に語り始めた。

ほんと何言ってるのこの子。かわいいから良いけど。

 

「あっ、えっと、えっとね提督」

「うん」

「私が一番で良いの?」

「なして?」

「昨夜の食堂でのやりとりでも、提督は長門と仲良いように見えたから」

「見えたから?」

「先に長門とケッコンカッコカリした方が良いかなって」

「あ、ちょいまち加古」

「え?」

「奥さんになる順番に時間順以上の意味があるの?第1夫人だけの義務とかさ」

 

 

-----

 

 

「すごい権力だな第1夫人」

「普通だよ?」

加古から説明を聞いた私は青くなった。

第1夫人は今晩夫と誰が寝るかとか、第2夫人以降の婚姻許可とかそんなものまで管理するらしい。

そこに男の意思が無い辺りが完全にモノ扱いだよね。あるいはペット。

「えっと、加古は第1夫人じゃなくて良いの?」

「アタシは政治とか駆け引きとか苦手だし。金剛か長門が仕切ってくれる方が安心する」

「解った。なら執務室行ってくるよ。話は早い方が良いでしょ?ちょっと待ってて」

「へっ?あっ?てっ提督?ちょ待って早っ!?」

 

 

-----

 

 

その時、長門は金剛と昨日の出撃結果の分析を進めていた。

「第1艦隊の報告では、南西部に異変ありと見た方が良いデース」

「ちょうど遠征で通りがかった第2艦隊の意見とも一致するな」

「ですがこの数の敵集団を私達だけで相手するのは少し面倒デース」

「数もそうだが、姫級か鬼級がいるのなら近隣鎮守府の育成の為・・うん?」

 

コン・コン・コン

長門はノックの音に気付いた。

 

「入れ」

 

ガチャ。

「ちょっと失礼するよ」

「んっ?提督・・と、加古か。どうした?今は仕事で忙しいのだが」

「用事は1つだけだから」

「なんだ」

「結婚しよ長門。第1夫人を頼みたいんだ」

 

長門の手からペンが滑り落ち、加古の顔が真っ赤になり、金剛が額に手をやったのが同時だった。

 

「ちょっ!?早い方が良いってそこなの!?」

私は加古が背後から話しかけてきたので振り向いた。

「だって加古第2夫人の方が良いんでしょ?」

「提督は第1夫人が誰でも良いの!?」

「良くないよ。けど、長門がお嫁さんになってくれるのは全く問題ないです」

「それは実務的な意味?それとも」

「もちろん男女としてだよ。好きでもない女の子にプロポーズなんかしない」

 

「テートク?」

 

その声は決して低くもないし、怒鳴られたものでもなく、大人しい静かな声だった。

しかし私と加古がぞくりと硬直するには十分な迫力で。

恐る恐る声の方を向くと

 

「時間とっ、場所をっ、わきまえなヨー!」

 

金剛のラリアットが飛んできたんだ。

 

 

-----

 

 

「いやーまいった」

「バカモノ。ほんとに、ほんっとに、バカモノめ。このバカ。ああもう」

加古が私の顎の手当てをしてくれてる間、私は再起動した長門からひたすらになじられた。

それでもちゃんと席につかせてくれる辺りが優しいよね。

そして私がちょっかいかけようとするたびに金剛がこれ見よがしに腕まくりするんだ。

言わなきゃ良いのではって?聞こえないなあ。

 

「あ、長門」

「なんだ」

「決して嘘は言ってないからね?」

「これで嘘なら41cm砲の実弾演習標的にする」

「それ粉微塵になるやつ」

「それにしても・・嘘では、無い・・のか」

「本当の事だよ」

長門は頬を赤らめつつ溜息をついた。

「昨日の朝とのあまりの差異に頭が追い付かん」

「昨夜も言ったけど、うちの鎮守府の子達は皆ストライクだから」

「ストライクとはどういう意味だ」

「好み!皆がオッケーしてくれたら全員と結婚したい!」

長門が穏やかに微笑みながら私を見た。

正確にはちょっと視線が上にズレていて、こくりと頷いたんだ。

「?」

その時、背後から殺気を感じてびくりとした。

 

「チョーシに乗るテートクは・・ぐりぐりお仕置きの刑デース」

 

左右のこめかみにぴとっと当てられた、小さな拳。私を包む良い匂い。

しかし動作を始めるととんでもなく痛かった。

 

「アイタタタタタタタ!」

「わ・き・ま・え・な・ヨ!」

 

私が力一杯グリグリされた後、加古と二人でポイと執務室を追い出された。

私は廊下で肩をすくめ、小声でつぶやいた。

「えーっと、部屋に戻ろうか、加古」

「うん。それが良いよ」

 

 

 

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