「行ったけど成果なかったね。ごめんね加古」
「ううん」
意気消沈してるかなと心配していた私は、思いのほか明るい加古の声に思わず振り向いた。
加古は俯き加減ではあったけど確かに微笑んでいた。
「どしたの、加古?」
「ん?何が?」
「いや、がっかりさせちゃったかなと思ったんだけど、なんか表情的にそれだけじゃないのかなって」
「えっとね」
「うん」
加古は深呼吸を1つして、ニコッと笑いながらまっすぐ私を見た。
「提督が、私の為に動いてくれた。それが何より嬉しかったんだ」
「・・あー、あぁ、そっかぁ」
「うん。今までではありえなかったから」
「以前の私は、怒鳴ったりしたの?」
「無表情・無言・無視を貫いてたよ。返事してたのは長門にだけだと思う」
「どうして長門だったんだろう」
「一番長い付き合いだからじゃないかな?鎮守府設立以来の付き合いだし」
「ってことは、皆は少しずつ着任した感じ?」
「うん。長門の後、本営から金剛・日向・大淀が追加で来て、残りのメンバーが移籍なり建造なり、かな」
「加古は?」
「移籍だよ。こっちの鎮守府で建造された軽巡姉妹と引き換えに」
「・・・その姉妹はどうして?」
「着任挨拶でヒャッハアでドーンしちゃったんだって」
私は顔を手で覆った。以前の私、どんまい。
「あー、加古は着任するの嫌じゃなかった?」
「なんで?」
「えっと、手を出したいのに出せないならある意味拷問かなって」
加古は苦笑した。
「あ、えっと、ヒミツにしてほしいんだけど」
「良いよ」
「あたしは着任前、好みの人だったらちゃんと振り向かせたいって思ってた」
「何もおかしくないと思うけど?」
「お互い好きになって、好きだって言って、お付き合い、みたいな」
「うんうん。基本だよね」
「でも以前の提督は私達がどんな言葉をかけようとどんな提案をしようと一切無視してたから、さ」
「あー」
「一度諦めたんだ。でもまぁ、選んだ仕事だし、守ること自体は嫌いじゃないから続けたの」
「そっか」
「だからね、提督」
「うん」
「あたしは、この後ナシって言われても、昨日の晩救われたんだよ。えっと、今の提督に」
「そっか。ナシなんてこれっぽっちも言うつもりないけど」
「とっ、ところで提督はケッコンカッコカリしたら、触れ合いとかも許してくれるの?」
「ん?」
「あ、不快だった?ごめん。そうだよ。警護強化の為だもん。誤解しちゃダメだね調子に乗りました忘れてくだ」
私は生憎と、学ばない人間なんだ。
性懲りもなく同じことを繰り返してしまうんだ。
何を懺悔してるのかって?決まってるじゃないか。
悲しそうに私に手を振って発言を取り消そうとした加古をぎゅっと抱きしめて、耳元で囁いたんだ。
「そんなわけないよ。加古はお嫁さんなんだから、色々触れ合おう?」
どうなったかって?
加古が目を回してゆっくり倒れてきたから私のベッドに寝かせたよ。
そして30分後にパチッと目を覚ましていきなり半身を起こしたかと思ったら、
「提督の香りに包まれるベッド最高っ!これ以上の寝具をアタシは知らないっ!まさに神具っ!」
そう叫んで、またバタンと目を回してベッドに倒れこんじゃったんだ。
床に落ちなくて良かったよ。
これはバタンキューって言って良いのかな?
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加古は昼食を運んできた大淀さんがドナドナしていった。
昼食後、部屋で一人ボーっとしていたら、榛名がティータイムの席に招待してくれたんだ。
部屋に入ると金剛、比叡、榛名、霧島。
金剛型大集合である。なんと華やかな空間だろう。
榛名に淹れてもらった紅茶を受け取り、温かいスコーンとバターとジャムも受け取る。
軽い会話が交わされた後、一拍置いて金剛が溜息をついた。
「まったく、テートク変わりすぎデース」
私は返事が遅れた。
だって榛名に淹れてもらった紅茶に霧島お手製のスコーンだよ?堪能しないでどうするの。
「・・んえ?」
「んえ、じゃないデース」
「ごめんごめん。榛名に淹れてもらった紅茶と霧島手作りスコーンが美味しくて夢中になってた」
一瞬で頬を染める榛名と霧島。
「あっ、えっ、あのっ、はっ、榛名は・・もう、大丈夫じゃないです・・」
「そこで突っ伏すと紅茶かかるよ!?」
とっさに比叡が榛名を支えたから事なきを得たけどさ。
霧島は軽く俯いただけで意識取り戻したからセーフ。
金剛は一層大きな溜息をついた。
「お茶会を無茶苦茶にしないでくだサーイ」
「お茶だけに?」
たっぷり5秒間沈黙し、その間ゆっくりジト目になってから金剛は口を開いた。
「・・次は無いですヨ?」
「すみません」
「まったくもう」
「ねぇ金剛さんや」
「ハーイ?」
「鎮守府の運用に、私のお見合い調整も入ってるの?」
「Yes。むしろそれが仕事の大半デース」
「件数が多い?」
「あの手この手でしつこいのデース!」
「うん。手に取るようにわかる。そしてその外交的なものを担ってるのはもしかして」
「私デース」
「じゃあ第1夫人は金剛の方が適してる?」
金剛はティーカップとソーサーをテーブルに戻し、グイグイと掌で目を押さえながら答えた。
「・・・テートク」
「うん」
「それは差配役として、という意味ですカ?」
「えっとね、金剛」
「ハイ」
「私はまず、断られない限り皆と結婚したいんだ」
「・・・食堂でも言ってましたネ」
「ただ、すまないけど私の今の記憶では一夫一妻の例しか知らなくてね」
「Yes。男の人は普通それを強く望みマス」
「だから今朝、加古から聞くまで第1夫人の役割とかも分からなかったんだ」
「ふんふん」
「それで皆を苦労させたくないから、一番いい形を探したいんだ」
「・・テートク」
「うん」
「私は、第1夫人の差配役として使えそうだから、ケッコンするってことデスカ?」
「長門の時も言ったけど絶対に違うよ。金剛の性格も、容姿も、素晴らしいと思うから離したくないんだよ」
「記憶は無いんじゃないのですカ?」
「あ、そっか。そこは長門から聞いてない?」
「What?」
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「ゲームに出てくる私のイメージとここにいる私が同じとは限りませんヨ?」
金剛がジト目で見てきたので、私も頷いた。
「そうか。長門や加古はあまりにもそっくりだったからイコールで考えてたけど」
「さすがに全部一緒とは思えないデース」
「だとしたら、そうだね。失礼な話か。一旦さっきの話を取り消すよ。ごめんね」
「Yes」
「それで、金剛達は毎日お茶会してるの?」
「No。そんなに茶葉が買えません。週に1度デース」
「それはお金の問題?」
「配給量の問題デース」
「じゃあ今度から私も手配するから、その週に1回のお茶会に交ぜてくれないかな」
「・・・理由は?」
「君達の事を知りたいし、必要なら認識を改めるから」
金剛はじっと私を見て、じいっと私を見て、じいいっと私を見て。
時間を追うごとにどんどんジト目度合いが増してきて。
私の顎の少し下から私の目の中を覗き上げるかのように迫ってきて。
「あ、あの、金剛姉さま」
と、比叡が制止するまで私の目と鼻の先までずずいとにじり寄ってきた。もはや糸目状態である。
疑われてる場面じゃなければ両手で頬を包んで濃厚なキスをしたかったけど、今やったら間違いなくラリアットだよね。
涙を呑んで我慢するよ!
「・・・・では次回お茶会に招待しマース」
「うん」
「そこで問題を起こさなければ、その場で次回に招待しマース」
最大限に警戒されているね!
さすがに解るよ!
「解りました。ではまずはそれから始めてください」
「Yes」
「いつか信用してもらえると良いな」
「・・それはテートク次第デース。では、今日のお茶会はお開きにしまショウ」
部屋に戻ると大淀が待機していた。
「あれ、ごめん。何か用事だった?」
「いえ。加古さんが目を回してしまったので、代わりに私がお相手を務めるようにと」
うん。エロい妄想をするくらい許してほしい。
大淀は別に夜のお相手なんて言ってないけども!
「あっ・・それじゃ丁度良かったのかも」
「なんでしょう?」
「紅茶の配給量ってどうやって決まるのか知りたくて」
「飲みたいのですか?」
「正確には金剛達のお茶会に交ぜてもらうから、配給を増やしてほしいなと」
「男性からの希望という事なら通るかと」
ふと私は嫌な予感がした。
「あ・・ええとさ、大淀」
「はい」
「ここに金剛がいるでしょ。他の鎮守府にもいるの?」
「もちろん居られますよ?」
「ってことは私が希望すると他の鎮守府の紅茶を取ることになるの?」
「いいえ。軍の総購入量が増えるだけです」
「じゃ良いか。今金剛達はどれくらいの量を買っているの?」
「1年で6缶ですね」
それで週1って言ってたよね。
「じゃあ私も同じ量を同じペース手配できるかな?差し当たってまず1缶欲しい」
「承知しました。手配しておきます。届いたらこちらにお持ちしますか?」
「そうしてくれる?」
「解りました」
「あとさ」
「はい」
「コーヒーって、誰が好きなの?」
「コーヒーですか?一番お好きなのは鳳翔さんですね」
「・・えっ鳳翔さんいるの?」
「正確には、居られますが拠点防衛任務専門です」
「どこの拠点?」
「もちろんこの鎮守府です」
「じゃあ出航しないってことか」
「はい。夜は居酒屋鳳翔を営んでおられます」
「で、コーヒーが好き、と」
「加賀さんもお好きですね」
「そっちの配給は?」
「全く足りないと仰ってますね。月に1袋ですから」
「二人で?」
「はい」
そりゃ少ないなあ・・
「じゃあ同じ量手配できる?無理?」
「出来ると思います。同じようにしますか?」
「うん。でも持参する時は袋を分けてほしい。互いに香りがつくと困るから」
「かしこまりました」
「ちなみに大淀は?」
「私はお茶で、充分配給があります」
「・・・・・えっと」
「同じ茶葉ですが、発酵前に加工されてるので紅茶には変えられませんよ?」
「ありがとう大淀。聞きたかったことだよ」
「ちなみにこの辺りにはタンポポも生えていません」
「先回りして回答してくれてありがとう。じゃあよろしく」
大淀はインカムに手を添えた。
「こちら大淀。本営輜重課へ男性からの緊急指示を伝えます。紅茶1缶とコーヒー1袋を即時配達願います」
なんか大事にしてない?もしもし?