艦娘可愛いです。   作:銀匙

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【その12】

 

 

「なぜそこで鳳翔さんとのノロケ話を聞かせちゃうのよ」

私達の話を聞いた陸奥は開口一番そう告げた。

「いや、報告として」

「具体的過ぎるのよ。鳳翔にも結婚の件は説明して了承を得た、で良いじゃない」

「おー」

「姉さんもそこで初めて納得したって顔しないの。女なんだから」

「そうは言ってもだな」

「言い訳しないの」

「はい」

すげぇ。長門が言い負かされたの初めて見た。

「・・ところで提督は」

「うん」

「そろそろ戸惑いは収まってきたのかしら?」

「戸惑い?」

「提督風に言えば、違和感のある別の世界に突然やってきたことに対する戸惑い、よ」

私は頷いた。

「うん。慣れてきたかと言われたら慣れてきつつあるね」

陸奥は頷いた。

「そう。だとしたらもう少し相手の事を気遣ってあげてね」

「・・そうだね。あ、陸奥」

「なぁに?」

「ウインクがサマになってるね。イイオンナだわ。惚れた」

 

あっ余計なこと言ったと手で口を押さえたくらい、陸奥の目が瞬く間に据わってね。

ちらっと隣の長門を見たら般若みたいな顔をしていたからすぐ視線をそらしたよ。

 

「・・提督」

陸奥の声が低い!

「ハイ」

「さっ、最後に残った理性で言うからよぉく聞いて」

「ハイ」

「今私に押し倒されたくないならちょっと時間置いて出直して」

私は顎に手を当てて悩み始めた。

だって陸奥だよ?超美人な隣の若奥様的な年頃のイイオンナだよ?

むしろ私が押し倒したいくらいなんだから全然・・ってあれぇっ!?

ふと風を感じて顔を上げたら長門が私を抱えて物凄い勢いで部屋を飛び出し寮の階段を駆け下りていたんだ。

 

長門はそのまま走りに走って人気のない岸壁まで連れてきてくれて。

ぜーぜー息を切らしてるね。悪いことをしてしまった。

 

「あっ、あぶっ、危なかったぞ提督。なんで逃げなかった?足がすくんだか?」

・・・そっか。

「えっとね、ごめん長門。1つ重大な差異を言ってなかった」

「なっ・・なん・・だ?」

「今の私には、性欲がある」

「せいよく・・・性欲だとぉっ!?」

 

 

-----

 

 

「なんということだ・・・」

長門は私の説明を聞くと、右手で顔を覆ってしまった。

「今までは当然そんな素振りなかったんだよね?」

「当たり前だし、それどころではないぞ」

「どういうこと?」

「今生きてる男の口から、女に欲情するなどというセリフは絶対出てこない」

「え」

「ハッキリ言えば、その、あー」

「?」

長門は顔を真っ赤にしてもじもじした後、

「・・えっ、エロ小説の、それもド下品な超エロいやつでもない限り、男が欲情するなど書かれもしない」

それは相当な差異だな。

「あ、その、つまりさ」

「・・ああ」

「今の世界で言うとおっきする私はとんでもないビッチってこと?」

長門は僅かに私を複雑な眼差しで見た後、こくりと頷いた。

「じゃあさっきの陸奥の反応は」

「普通の会話をしていたら突如異性から鼻血もののエロ展開に誘われた、だ」

「まさに最後の理性を発動してくれたんだね」

「ああ。那智や加賀辺りなら黙って組み敷いて服を剥ぎ取ってコトに及んでいただろう」

私は頬をかいた。

「えーとね、長門」

「あ、いや、言い方がショッキングだったか。すまん。だがな」

「バッチコイです」

「は?」

私の返事を聞いた長門が一瞬固まり、一呼吸おいてガバッと天を仰ぎ見たかと思ったら

 

「提督があっ!違いすぎるっ!私にどーしろというんだああああ!!!」

 

そう叫んだんだよ。

 

うん、解る。性被害受け続けて女性不信になってた人がある日突然女大好き~ってなったんだもんね。

でも私はそうだから皆と結婚したいんであって、えちちな事無しに過ごすつもりなんてサラサラないわけで。

 

 

-----

 

 

長門が叫んでから時間が経ちました。

日没間近の夕方で、カラスが「アホー!アホー!」と怒鳴ってるように聞こえます。

岸壁には小さく体育座りをして、ぼうっと遠くの海原を眺める長門。

哀愁が漂いすぎです。

 

さすがにいたたまれないし罪悪感半端無いんだけど、でも言わないといけない。

「ごめんね長門。もっと早く気づけば良かったね」

「うー」

「で、でも正確に知ってほしいんだよ、でないと変な話になりかねないからさ」

「・・・提督」

「なに?」

「人間の女は?」

「知らないから・・えっこれ何?」

「たまたま持っていた見合い写真だ。これもその、バッチコイなのか?」

 

どれどれ・・

え、なんだろう、この白いボンレスハム。脂身多いね。

こっちは和服を着た皺だらけの冷蔵庫で、これはカビた毒キノコかな?

 

「異性というか人と認識出来ないです」

「そこまでか・・まぁ高齢の権力者だからな」

「こんなのと遭遇するくらいならさっきの陸奥に抱かれたい」

「いや、あれは完全に目がイってたぞ?受け入れたら朝まで骨ごとしゃぶられるぞ?」

「あそこに骨は無いんだよ長門」

「そういう話じゃない!あーそうだ!そういう会話をしていたじゃないか!」

「うん」

長門は両手で頭を抱えてしまった。

「くそっ、えーとつまりなんだ、とりあえず所属艦娘ならバッチコイなんだな?」

「長門をはじめ、みんなバッチコイです」

長門は深い深いため息をついた。

「待ってくれ。ちょっと。ちょっとだけ待ってくれ。鎮守府の秩序が崩壊しないように調整する」

「誰と?」

「大淀だ」

「あ、ちなみに」

「まだなにかあるのか」

「大淀もバッチコイです」

長門は気は確かかという目で私を見た。

「おい、さすがに大淀とはイタせないぞ?治安維持ロボットにまで欲情するのか!?」

「チューとかお触りとかでも十分です」

長門はガシガシと頭を掻きむしると、いきなり立ち上がった。

「んああああああ!もー!海のバカァァァアアー!」

立ち上がった途端に海原へ大絶叫した長門は、やがて息を整え、それはそれは深いため息をついた。

こちらを向いた長門は明らかに憔悴していて。

「とにかく、大淀と調整してくる。誰にも絶対言うな。いいな?」

「はい」

ここは冗談をいう場面じゃないってことくらい解ってますよ?

大人しく自室に帰ります。ていうか連行されました。

 

 

 

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