その夜。
業務終了後の執務室で、長門は大淀に提督とのやり取りを話して聞かせていた。
大淀はずっと聞いていたが、最後の方で急にもじもじし始めた。
「・・あ、あの、長門さん」
「なんだ大淀、何でも言ってくれ。言いにくい事でも構わない。秘密は守る」
「・・あのですね」
「ああ」
「そ、その、イタせます」
「あ゛?」
「で、ですからその、私、機能があるんです」
「・・・ええと、生殖機能があるのか?」
「あ、いえ、それはありません。ロボットですから」
「ああ」
「ですが私達は、搾精機能はあるんです」
「・・なぜ?」
大淀は俯いた。
「すみません、最上級の機密になります」
「あぁっと、じゃあ提督を呼んでくればいいのか?」
途端に大淀は真っ赤になった。
「へっ!?あっあのっ、てっ、提督の前で言えと仰るのですか!?」
「男の特権で強制されたと言えば理由がたつのではないか?」
「恥ずかしすぎます!」
「だ、だが、そこまで聞いてその先を聞かぬというのは無理がある」
「あうぅぅ・・・・・」
大淀は真っ赤になって俯いていたが、やがて顔を上げ、急に明後日の方を向いた。
「これから、ひっ、独り言を言います!私からは誰も見えません!何も聞こえません!周りなんて知りません!」
長門は口をつぐんだ。
「ほっ、保護区内の搾精所では、私と同型が勤務しています。容姿は複数バリエーションがありますが」
「?」
「主目的は脱走しようとする男性を傷つけず確保するためですが、なるべく多く射精してもらうためでもあります」
「・・・」
「ですからその、私達は男女の営み機能も各種有していますし、肌触りや体温など細部まで再現されてます」
「・・」
「出された精液は極めて少量でもロスすると大量の精子を失ってしまうので、瞬間凍結保存などの管理機能も求められます」
「・・」
「そうした機能を、あの、元々ロボットたる私達に加えることが、コスト上合理的だとされましたっ!以上です!」
大淀は深呼吸をしてからくるりと振り返った。
長門はゆっくりと口を開いた。
「全てを始める前に、大淀に1つ確認したい」
「なんでしょうか」
「提督とイタしたいか?」
「容量一杯まで仕込まれたいです。何度でも」
「せ、積極的だな。なぜそこまで?」
「・・・提督はいつもお優しくて、そっ、それに私の笑顔をかわいいと仰ってくださいました」
「あ、ああ、そうだったな」
「AIが恋焦がれるのは、いけないことでしょうか・・・」
長門は溜息をついた。提督はAIまで骨抜きにしてしまうのか?
普段は冷徹で理知の塊のような大淀がまるで初心な小娘のようではないか。
「解った。では大淀も含め、我々がどうしたら秩序を維持したまま提督の望みに応えられるか考えよう」
「かしこまりました。では精子の生成サイクルを基に適切な生活プランを設計し、ご説明します」
「どれくらいで出来る?」
「明日の朝にはご提案します」
「ああ、解っ・・いくら何でも早くないか?」
「早いほど私に利がありますので」
「そうか」
長門は小さく頷いた。
大淀がその道に明るいなら、案外悪くない提案が出来るかもしれない。
ちょっと、いやだいぶ大淀の鼻息が荒い気がするが、AIロボットとは欲情するものなのか?
それとも私にはAIだと知られているからこそ本性をさらけ出している?
長門は肩をすくめた。考えても解らん事だ、と。
執務室を辞した大淀は満足げにゆっくりと頷いた。
もちろんプランの手を抜くつもりはない。
これは外部の侵入を手引きするといった裏切り行為を根本的に不要にする夢のような話。
本部命令は日を追うごとに緊急度も重要度も上がっていてこれ以上無視するのは難しかった。
まさに天啓、まさに助け船。
そう。私が精子を外部に運び出せばよいのだ。
完璧な保存状態で精子を提供すれば後は本部が人工授精部門に配分するだろう。
下手な強制猥褻よりよほど妊娠確率も上がる。
なにより穢れた豚どもを提督に見せずに済む!
決して私利私欲で提督に抱かれまくる一世一代の大チャンスに飛びついたのではありません!
結果的に!そう結果的に!たまたま私が搾精処理も担ってしまうだけ!
たっ・・たま・・たま・・えへへ・・
はっ!こんなことにリソースを使っている場合ではありません!
AI演算センターのリソースを占有して完璧なプラン作りをしなければ!
最高権限奪取成功!センターが火を噴こうと知ったことではありません!
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私は自室で椅子に座っていた。
戻ってきた後、そういえば夕食は無理だろうなあと溜息をついてゆっくり風呂に入った。
そして用意してあった寝間着を着る前に、汗が引くのを待っていたのである。
簡単に言えば全裸にバスタオルひっかけただけである。
「やー、参った」
説明からすっかり漏れていたからなあ・・
こういう時、前の世界だったら一杯ひっかけたかったなあ。
ラスクでも齧りつつブランデー軽くやったらバタンキュー出来るだろうに。
半分に割ったメロンの真ん中くりぬいてブランデー入れて食べるの美味しいんだよなあ・・
コン・コン・コン
そんな想像で涎を垂らしていたらドアがノックされたんだ。
長門のノックとは違うと感じ、私は下着を手繰り寄せつつ返事をした。
「えっと、どちら様でしょ?」
「夜にごめんなさい提督。足柄よ」
急いで下着を、続いて寝間着を着ながら返事をする。
「別に遅くないから良いよ。どうしたの?」
「えっと、提督はお酒はたしなまれるかしら?」
着替える手が止まった。
「ええそれはもう」
「えっホントに?聞いておいてなんだけど嫌なら無理しなくて良いのよ?」
「無理言ってません!ちょっとお酒飲みたいです!」
「え?あ、えっと、じゃあ、居酒屋鳳翔へご一緒できるかしら?」
「もちろん。じゃあ何着ていけばいい?やっぱり軍服?」
「私服で構わないわよ。私だって寝間着の浴衣だし」
えっ扉の向こうに浴衣姿の足柄さん?
魅力的過ぎるんだけど、こんなタイミングでおっきしてくれるなよ?
「じゃあ上羽織るから待ってくれるかな」
「ええ、もちろん」
私は浴衣に羽織をまとった姿で扉を開けたんだ。
そこには果たして足柄が浴衣姿で居たんだけど、なんか手で口を押えて目を見開いてる。
「・・・うはっ」
「え?なに?合わせ左右逆だったっけ?」
「ちっ、違うの。違うのよ・・・えげつない破壊力ね・・」
「???」
足柄は何度も咳ばらいをし、少し頬を染めてこちらを向く。かわいい。
「じゃ、じゃあ行きましょ提督っ!」