「良い?コイツに言いくるめられたらダメよ陽炎!わかった?!」
「はいはい解った。解ったから」
「で、では私達はこれで・・」
鎮守府に到着してから2時間と経たずに曙と神通は去っていった。
思ったよりあっけなかったなあ。
「随分仲良くなったのね!」
「えっ!?」
陽炎の言葉に驚いて向き直ると、陽炎は遠く見える二人を見つめたまま続けた。
「軍事行動中よ?事が済んだら速やかに撤収が当然なのに、2時間近くいたんですもの」
「短くない?」
「短くないわよ。私は帰りの道すがらでも食べやすいようにおむすびにしてたんだし」
「あ、食べてから帰るじゃなく?」
「送り届けるっていう任務は達成したわけでしょ?」
「あ、そうか。もう速やかに撤収するしかないんだ」
「そうよ。多分あの子達が計算してた予備時間一杯まで居たんだと思うわよ」
「そっ・・か・・」
「だからそんなにしょんぼりしないの!私が居るんだし!」
陽炎はくるりとこちらに向き直ると、パッと咲くように笑った。
良いなこの子、雰囲気を変えることに慣れてる。助かるわ。
「改めてよろしく、陽炎」
「ええ、よろしくね、司令!ところであなた、男なのよね?」
「そうだけど?」
「あーえっとねぇ・・」
陽炎はカリカリと頭を掻きながら続けた。
「さっきも言ったけど、私、男の人と会うのも話をするのも初めてなのよ」
「そんなに少ないの?!」
「当然じゃない。私達の仕事場って戦場の最前線も最前線でしょ」
「そうだね」
「だから全員保護対象である男が来る場所じゃないわけ」
「本営にも居ないってこと?」
「うーん・・将官付秘書とかなら居るかもだけど、私は見たことないわ」
予想以上だなあ。
まぁそういえば今までまだ男と会ったことないけど、別に会いたくないし。
「状況は良く解ったよ」
「だからあたしの行動や発言で気に触ったら言ってね!直すようにするから!」
「全然気にしなくていいと思うよ」
「ちなみに今までで何かある?」
「いや、可愛くてしっかりしたお嬢さんだなと」
ついぽつりと独り言のように零してから、はっとして陽炎を見れば
「・・・・・」
小さく口を開け、ぽかんとしたまま次第に頬が赤くなっていく陽炎がそこに居た。
口のような栗だな、いや逆か。
「あ、いや、陽炎、つい口をついて出てしまった」
「・・・へあっ!?はっ、破壊力高いわね!意識飛んだわ!」
男ってすごいわぁとつぶやく陽炎。
あんまり考え無しの発言は控えないといけないな。
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「で、これが艦娘建造マッシーンなわけだ」
「そういうこと。ここに資材入れてスタートボタン押すわけ!」
「いっぱい居る妖精達にも何かするの?」
「普通こんなに居ないんだけどね」
「多すぎてボタンが押せないまである」
艦娘が建造されるという機械の周りには、これでもかと妖精が集まっている。
操作パネルにまで所狭しと並んでこちらを見てるので本当にボタンが見えないし押せない。
そして全員、手に工具らしきものをもって私をじっと見ているのである。
「あ、あー、試しに1回建造してみようか」
解ってるじゃないかと言うように腕組みしてゆっくり頷く妖精達。
陽炎もその様子を見て苦笑している。
「でもねぇ、備蓄量カツカツなのよねぇ」
「ん?確か2000ずつあるって説明聞いたけど?」
「あれが2000もあるように見える?」
陽炎が指さす先には燃料や鋼材がちまっと置かれているのが見える。
「・・なんか1割くらいしかなくない?」
「あら、良い勘してるわね。燃料とボーキサイトが150、鋼材と弾薬が200ずつよ」
「え?まだ補給船来てないの?」
鎮守府の資源は補給船が定期的に補充していく仕組みだと聞いていた。
実際七條司令官の鎮守府には毎日来ていたし、しっかりした量の補充があったのを見ている。
「来てるわよ。補給量は在籍艦娘の数によるんだけど、いずれにしろ少なすぎるわね」
「それはつまり?」
「舐められてるってことでしょうね」
えー?
七條司令官の鎮守府とうちは同じ補給船のルートのはず。
彼女のギンバイを疑わなきゃいけないの?
「他の鎮守府が取ってるってこと?」
「いいえ。他の鎮守府への補給物資は横取りできないわ。最初から積まれてないってこと」
「上の方の中抜きってこと?」
「それしかないわね」
「割とあるの?」
「私が知ってるくらいには有名よ」
後方に控えるお偉いさんが私腹を肥やすって、なんだかなあ。
どこの巨大組織も上の方はだめになるのかね。
「ってことで無いものは無いの。解った?」
「私は分かったけどさ・・」
「そう、よね・・」
私は陽炎から妖精達へと視線を向ける。
「ねぇ君達、燃料とか手に入る方法知らない?」
すると妖精の一人が頭に巻いたタオルを外し、力一杯絞る仕草をしてみせた。
「絞る?搾り取る・・菜種油?ゴマ?えーっと・・え?銃で撃つの?何を?」
そういや艦娘を解体すると少量の資源が得られるよね。だとすると・・
「もしかして敵艦?正解?イ級でも良いの?おお、それならすぐ近くに居るね!」
私が妖精一人と問答する間、妖精達の視線を一身に浴びた陽炎は頬をカリカリと掻きながら答えた。
「ま、まぁ少量で1~2回なら大丈夫じゃない?」
「ん?ああ、そっちの話題だったね。じゃあさい・・いや、全部33で回してみよっか」
「何で33なの?30じゃなく?」
「最低値と言いかけたら妖精達がすごく嫌そうな顔したから」
「はーい。じゃあ33-4ね」
「その言い方良くない」
「なんのこと?」
「いいからオール33というんだ」
「オール33」
「よし」
「へんなの」
肩をすくめつつも応じてくれる陽炎は控えめに言ってめっちゃ可愛い。
「準備出来たわよ!」
「ぽちっとな」
「・・あ、軽巡ね」
「建造時間で大体わかるんだっけ」
「そうよ」
「じゃあ出来たら呼んでくれる?助かるよ」
「妖精と直接会話できるってすごいわね・・」
「まぁ私の方は妖精さんの声は聞き取れないけど、身振り手振りで何となくって感じ」
「それでもいいじゃない。じゃあ執務室に戻りましょ」
「はいよ。じゃあ皆さんよろしく!」
ぴしっと敬礼する妖精達にぺこりと頭を下げると、私は陽炎の後を追ったのである。
「1出撃でこんなに書類書くんだ・・」
「まぁこの辺りは私達が書くから、司令はこの辺ね」
「全部特になしって書くのは・・」
「査察で厳しく指摘されると思うわよ?」
「ですよね・・・あ、出来たの?」
書かねばならない書類の多さにうんざりしてると、妖精が現れた。
「〇」と書かれた白い旗をキレイに振っている。
振り方上手ですな。
「じゃあ行ってみようか、陽炎」
「ええ、ちょうど小休止になるでしょ」