それから30分後。
岸壁には長門、金剛、大淀が並び、伊勢、日向、そして鳳翔が向かい合っていた。
恐る恐る伊勢が手を挙げた。
「ね、ねぇ。なんで私が出陣側なのか誰か教えてくれないかなあ・・」
その間にも長門、金剛、大淀が鳳翔に向かってビシリと敬礼し、鳳翔が軽く答礼を返す。
伊勢は涙目で日向を見た。
「あのさ、鳳翔さん足治ったばかりじゃなかったっけ?航海訓練にしては装備が本格的なんだけど」
日向は小さく首を振った。
「これから始まるのは航海訓練などではない」
「何が始まるの」
「第3次大戦だ」
「私達3人だけで!?」
「違う」
「あ、支援艦隊ありなのね」
「鳳翔一人だ。私達は立ち合いに過ぎん」
「へ?どういうこと日向?ねぇちょっと日向?」
「詳しくは移動の合間に話す。今は時間が惜しい」
「あーもう!ほんとに説明してよね!それと覚えてなさいよ長門!貸し一つだからねーっ!」
訳が分からないまま出航していく伊勢を含めた艦隊を見送ると、岸壁の長門、金剛、大淀は深いため息をついた。
金剛がゴキゴキと肩を鳴らす。
「あー緊張シマシタ・・紅茶が飲みたいネー」
大淀が頷いた。
「あんなに爛々と目を輝かせた鳳翔さんは久しぶりに見ましたね」
長門は二人を見た。
「ああ。今だから言うが、先の大戦さえ鳳翔は一切やる気ではなかったからな」
大淀が驚いて長門に返した。
「そうなのですか?」
「ああ。鳳翔は既にこの国を命がけで守る大義を見失っていた。深い所まで知り過ぎていたからな」
「あ」
「それでも罪のない国民が深海棲艦になぶり殺しにされるのは嫌だと、それだけで動いていた」
「そしてあの戦い、ですね」
「ああ。余りにも無茶な進撃命令、激戦につぐ激戦」
「ゆえの当然の大破、そして復帰不能な傷を負われた」
金剛は肩をすくめた。
「妖精が嘆いてましたネ。あの故障が治らないのは鳳翔がどこかで出航を拒否している、と」
「そうだったのですか・・」
「無理も無いネ。無茶苦茶言ってるのは本営や雲の上のクズ共デース」
「金剛さん、いきなり言わないでくださいね。ミュートにするのが遅れると大変なので」
「Sorry大淀。それにしても、鳳翔がかつてないほどやる気を見せたのは何故でしょウ?」
大淀はおずおずと長門に言った。
「あの、長門さんはお分かりではないのでしょうか」
「さっぱり げんいんが わからないなっ!」
「えっでも」
「いやだ!」
「へっ?」
「私に言わせるな。気づかせるな。これ以上何も抱えたくないんだ」
「それはつまり、て」
「その単語を言うな。今一番聞きたくない」
「えっでも提」
「あーあーあーあーあーさっさと執務に戻りたくなってきたなああああ!」
長門が走っていってしまったのを大淀が呆然と見送っていると、ぽんと肩を叩かれた。
「長門、あれは本気で苦労してますネー」
「今朝一番でプランを渡したのがいけなかったのでしょうか・・」
「どのプランの事ネー?」
「皆様と提督の男女の営みについて全体統制を図るプランです」
「アー・・あれデスか・・」
金剛はカリカリと頬を掻いた。
膨大過ぎて最初百科事典かレンガブロックが積みあがってるのかと思いましたネ。
「提督はお一人です。当然バイタルサイクルがあります。皆様に月のモノがあるように」
「ハイ・・」
「過負荷は必ず心身に不調をきたし、苦痛に転じます。是が非でも避けねばなりません」
「ソウ、ですね」
「ですから提督が快楽を感じる範囲で我々と接して頂けるようにする為の、ただのルールです」
「狙いは理解出来マース・・それで、読んだのデスが、えと、一般的な確認ですヨ?大淀」
「はい」
「あくまで例えば、仮に、の話デース」
「はい」
「戦艦娘が提督と5Pとかは」
「負荷的にNGですからレベル6のペナルティ、つまり強制離婚ですね」
「ふ、不慣れな妹の為に先に手本として実践するのは」
「性交渉回数にカウントされます」
「あくまで、あくまで仮の話ですが、手や口で先っちょだけちょっとご奉仕するのは」
「1射精毎に性交渉回数にカウントされます」
「きっ、キビシくないデスか?」
「ルールです」
「ちょ、長女が妹の為に手ほどきとして実践するくらいは認めてくれても」
「ルールです」
「じゃあせめて一緒に入浴くらいは」
「入浴だけで浴槽内でも触れ合わず我慢できるのであれば」
「そんなの生殺しデース!」
「あ、もちろん1射精カウントには誘導された暴発も含まれますよ」
「廊下で会った時に暴発されたら私のカウントが増えるんですカー?」
「場合によっては。特に扇情を意図する視線誘導などは審議対象です」
「厳しすぎマース!新作の水着を見てもらうのもOutなのですカー?!」
「可能ですよ。射精されたらカウントされるだけで」
「ノー!えーとえーと、じゃあ」
金剛の必死の問い詰めに応じながら大淀は内心安堵していた。
やはり皆さんより多く独占し、少しでも淫靡な世界に誘おうとなさいますね。
全所属艦娘の行動シミュレーションを最高精度かつ25年分、ひたすら最優先処理させて弾き出したルール。
AI演算センターが本当に全焼するとは思いませんでしたが、些細なコラテラル・ダメージです。
ただ、ルールはとても厳しいもので、私も正直間違いを疑いました。
しかし金剛さんでこれでは他の方なら提督が壊れても歯止めが利かなくなるでしょう。
ですが、この大淀がそうはさせません。
裁判官もお任せ頂ける、センシティブやグレーゾーン案件まで対応可能なAIは伊達ではありません。
いざとなれば応援を呼びましょう。
信用出来る経験豊富なAI個体は幾つか目星をつけてありますし。
・・・・。
ち、ちょっとだけ回復期間係数を長めに再計算させたのは、あくまでも提督の体調を気遣ってるからですよ?
決して溜まってしまったらいつでも好きなだけ大淀を使ってくださいという点を強調したいわけでは無くて。
たっ、たまたま、たま、たま・・たまって・・えへへ。
その間も涙目の金剛対冷酷な答えを返す大淀のやり取りは続いていた。
「あの時さっさとヤってしまえば良かったデース!」
「金剛さん、ルールとは別にコードに抵触しましたよ?36点以上で刑務所行き、現在8点です」
「ガッデム!」
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夕方の気配の中、ふいに目が覚めた私。
「あれ、知ってる天井だ」
居酒屋鳳翔の奥座敷、つい最近見た天井だよね。うん知ってる。
毛布ごと半身を起こすと周囲には誰も居なかったのだけど、テーブルの上にメモが1枚。
「雑用を済ませてきます。裏口から出てくださいね 鳳翔」
雑用・・食材の仕入れでも行ったのかな?
まぁいいや、裏口はっと・・
あっさり見つけ、ガチャリとドアを開ける。
外に出てぎゅうっと背伸びをすると、くぅと腹が鳴った。
あ、そうか。お昼食べ損ねたんだっけ。
それでいてチューチューさわさわまでしちゃったからなあ・・・
私はゆっくりと自室へと向かう道中、考えを巡らせていた。
確かに鳳翔さんは美人だし、加賀さんも、金剛も、皆美人。
奥さんにしたい気持ちは変わらないし、えちちな事をしたい。
でもこの体が保つのかなあ。どう考えても体力つけて来たとは思えない細さだし。
思い返せば一瞬で加賀さんにマウント取られたし。
だとすると、怖いのは打ち止め。いわゆる赤玉放出ってやつ。
今朝の鳳翔さんは帰らないでという引き留めに過ぎなかったけど、抗うのに苦労した。
もしえちちな場面でもっともっととおねだりされて、打ち止めしそうだから勘弁と言えるか?
おっきしたまま今日はこの辺でと言えるか?
快楽に流され絆されあっという間に赤い玉が出る未来しか見えない。
我ながら情けないけど、多分無理。
どうしよう。