私は建物の角を曲がり、執務室のある棟を見上げた。
また長門にうっとうしがられるだろうし、迷惑をかけてしまうけど。
あ、そういや長門言ってたな。大淀さんに相談するって。
なんか良い知恵持ってるかもしれないな。
というか持ってて欲しいなあ。
「大淀さん、いないかな・・・」
「お呼びでしょうか?」
「うわああああ!」
「えっ!?あっ、すっすみません提督」
「お、大淀さん!?びっくりしたー」
「私が居ないか、と聞こえたものですから」
「どこに居たの?」
「ほんのすぐそこを歩いていましたので」
「あーびっくりした。偶然だったんだね」
「(偶然と言いますか治安維持と言いますか)」
「え、なんか言った?」
「いえ何も。それよりお探しでしたか?」
「あーえっと・・」
私が周囲をきょろきょろしたからか、大淀は小首を傾げ、ポンと手を打った。
「誰かに聞かれたくないお話なのですね?」
「うん」
「でしたら私の部屋が近いですから、どうぞ」
「えっ良いの?」
「構いませんよ」
「・・うん、お願いするよ」
「ご案内します」
大淀さんは真面目可愛いなあ。委員長って感じ。
何であんなとこにスリット入ってる制服なんだろう。
いやとっても眼福なんですけど、スリットに手を入れたいとか考えちゃうんだよね。
我ながらサルみたいで嫌だ。落ち込むなあ。
「如何なさいましたか?」
「あ、うん、なんでもないよ。ちょっと自分が情けなくなっただけ」
「?」
「ほんと気にしないで」
「あ、えっと、こちらが私の部屋になります。どうぞ」
「お邪魔します」
その時になって、私は大淀がAIだという事を思い出した。
AIの、部屋?
・・全く想像がつかん。
補修部品とかパーツがいっぱい置いてあるのかな?
「へっ!?」
「ど、どうされました提督?」
「いや、ごめん。物凄く普通というか、女の子の部屋だなあって」
「・・・あ、なるほど。パーツとか置いてあると思いましたか?」
「・・ごめんね」
「いえいえ、良いんです。でも私はAIであることを極力隠蔽する設計なので」
「だから部屋は普通なんだね・・まさか偽装だったりするの?」
「いえ、普通の支給品ですよ。偽装するとバレた時に発覚してしまうので」
「じゃあ修理とかメンテナンスはどうするの?」
「基本的にドックで行います。艦娘でもあるので」
「あ、艦娘ではあるんだ」
「はい。正確には、特殊兵装なんです」
「・・つまり連装砲ちゃんとかそういう」
大淀は視線をそらし、ぽりぽりと首筋を掻いた。
「えっとまぁ、そういう感じです」
「良く分かったよ。で、ヒミツだよね。解ってる」
「長門さん、金剛さん、日向さんはご存じですよ」
「そうなんだ・・」
数秒の沈黙を察した大淀が、ささっとテーブルに案内してくれる。
下にピンクの柔らかいラグが敷かれた、可愛らしい木のテーブルだった。
「お茶淹れますね。お湯を沸かしてきますのでお待ちください」
「ありがとう」
私はテーブルの木目を何気なく追いながら、どこから話したものかと思案していた。
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「どうぞ、玄米茶を淹れてみました」
「あ、嬉しい。ありがとう」
「いえいえ」
テーブルを挟んで向かい合う位置に座った大淀から、香ばしい香りがする湯呑を受け取る。
一口すすると頭がすっきりしてきた。
「ええとね、大淀」
「はい」
「長門から、その、私に関して昨日か今朝、相談されていないかな」
大淀はくすっと笑うと
「はい、ええと、ほぼ毎日沢山相談されています」
「え」
「あのバカどうしてくれようとか、またからかわれたとか、砂糖を吐きそうな内容ばかりですので、その都度早くご結婚願いますとお答えしてます」
「そ、そう・・」
「でも、提督もお悩みというと・・」
大淀が少し身を乗り出してきて小声で囁いた。
「性欲の件、ですよね?」
「うん、そうなんだけど、それだけじゃなくてね」
「お聞かせください」
私は情けないとは思ったのだけど、もう長門みたいに苦労させたくなかったから全部話したんだ。
男は逮捕されないって言ってたけど、こんな可愛い子にどエロい感情を暴露するのは勇気がいったよ。
「それはお辛かったのでは?」
「正直そうなる。ついさっきで言えばさ」
「はい」
「大淀のスカートってスリットあるでしょ?」
「・・これですか?」
「あーいやいや摘まんで見せないで大丈夫大丈夫だから」
「はあ」
「そのスリットにね、手を入れたくて仕方なくて」
「手、ですか?」
「それでその、お尻を撫でまわして大淀があんあん言ってるのを想像しちゃって」
「・・」
「「提督のエッチ」「そういう生き物なのさ」みたいなアホな会話を想像してさ」
「・・」
「もうほんとサルみたいだよね。でもさ、そんな調子で皆とえちちな事をしてたら」
「・・」
「あっという間に肉体の方が限界を迎えると思うんだ」
「いわゆる赤玉放出ですね?」
「うん」
「ちなみにですが、赤玉という物体そのものは存在していないんです」
「えっ」
「ただ、泌尿器学的には前立腺の炎症によって引き起こされる出血により、EDになるケースが類例かとは思います」
「そうか。使いすぎで出血しても無視してると炎症が悪化してEDになると」
「はい。それが赤玉と呼ばれる物の正体かと思います」
「なるほど・・とすると事態はより深刻でさ」
「どういうことでしょう」
「要は奥さんに、今日は炎症で痛いから無し、あるいは行為の途中でダメって言わなきゃいけないんだけど」
「はい」
「絶対誘惑に負けると思うんだよ。皆魅力的で私が意志薄弱だから」
「・・」
「寂しそうにする奥さんに強く言えないと思うんだよ」
「・・提督は、本当にお優しいのですね」
「ううん。図々しくスケベなだけだよ」
「いいえ。っと、ここで堂々巡りしても仕方ないですね」
「あ、うん。だからどうしたものかって、赤玉が出る前に誰かに相談したくて」
「それで私を頼って頂けたのですね」
「うん。長門もこの件は大淀に相談するって言ってたし」
「(超ナイスです長門さん。コード抵触カウントを0に戻しておきますね)」
「何かいった?」
「ナニもイってませんよ?」
「それで、どうしたら良いと思う?」
「万事、この大淀にお任せください。ご提案を用意しています」
「提案?」
「披露させて頂いてもよろしいですか?」
「もちろん」
「解りました。では始めます」
私は大淀の、淀みないプレゼンに聞き入ってしまった。
本当に彼女の提案は様々な医学的洞察が含まれていて。
それでいて奥さん達の行動まで予測したルールを示してくれて。
「こちらのルールを鎮守府内に徹底させれば、提督は奥様方との生活を安心してお楽しみ頂けると思います」
そう、言いきってくれたんで、私は涙ぐんでしまったよ。
「ありがとう大淀。本当にありがとう。凄く安心できる提案だよ」
でも大淀は、そこまで言って急にもじもじし始めたんだ。
「た、ただですね。まだこのプランは未確定部分があるんです」
「うん」
「その確定にはどうしても提督にお力添えを頂かねばならなくて、本当に心苦しいのですが」
「気にしないで。私の為にこんなに考えてくれたんだから」
「(考えたのはAI演算センターのサーバ群なんですけどね)」
「何か言った?」
「いいえ。そ、それでその」
「うん。何を協力すれば良いの?何でもやるよ」
「連続射精です」
「れんぞくしゃせい」
大淀は何を言ってるんだろう?