と、いうわけで自室に取って返し、例のカードを手にやってまいりました酒保!
「妖精さんにも金平糖買ってあげるからねー」
肩に妖精さんを乗せたまま店内へと入ったのである。
「らっしゃー・・失礼しました提督!ようこそおいでくださいましたっ!」
「いや普通で良いよ。それよりこの前は疲れさせちゃったみたいでごめんね」
「いっいいえ!大丈夫ですよ!」
「えっと、いくつか聞きたいのだけど」
「はい!」
「まず、保存用食料ってある?」
「こちらに。長期航海時の非常用携帯食ですが」
「幾つか買っておくか。日持ちする食品は?」
「缶詰ならこちらに幾つか」
「うん、これいいね。乾飯とかある?」
「さすがにありません。生米で持ち込んで艤装で炊きますので」
「バランス栄養食とかも?」
「何ですかそれ?」
「あ、いや、知らないなら良いよ」
「?」
「後は日持ちしなくていいんだけど、お弁当とかおにぎりとかある?」
「おむすびでしたら携行食料がありますよ」
「あ、助かった。それ2つ。あと金平糖は」
「こちらに」
「甘い物美味しいよね。明石は何が好き?」
「一口羊羹ですね」
「ふうん。じゃあ10本頂戴。全部このカードで支払いたいんだけど」
「確認しますね・・あ、はい。このクレジットなら使えます。暗証番号をどうぞ」
「入れたよ」
「確かに。それではお品物袋に入れますね」
「あ、羊羹2本は入れなくていいよ」
「すぐお召し上がりになるのですか?どうぞ」
明石は提督に2本を差し出した。
提督は一旦受け取ると、にこりと笑って手渡した。
「これはね、明石にご褒美」
「へっ?」
「いつも一人で大変だね、お疲れ様。甘いもの食べて元気出して」
「・・・ありがとう、ございます」
「じゃ!」
「ありがとう・・ごじゃい・・まひた・・」
閉まったドアから手元に視線を戻すと、掌には一口羊羹が2本。
うちの商品だけど、男の人に、奢ってもらっちゃった・・
「で、でへへ、でへへへへへへへ」
絶対食べられない!これ家宝にしよう!
ん?男性提督が握った一口羊羹・・・1本5000コインでも売れそうな予感がする!
それそのものを握ったかどうかなんて誰にも分かんないしね!
男性提督が握った(のと同じブランドの)羊羹ってことで!
さっそく明石会オンラインで提案しなきゃ!
一方、自室に帰って来た私は、目がキラキラしてる妖精さんに金平糖の袋を開けて横倒しに置いた。
私はおむすびの包みを開けた。水筒入りのお茶まで付属してるのが心憎い。
「いただきます」
シンプルな海苔巻きおむすびだけど、おっきいし塩加減が良いなあ。
やっぱり日本人はコメだよね!
一生懸命金平糖を頬張る妖精さんを指の腹で撫で、私は2口目にかぶりついた。
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予定ではほんの1時間、11:00には終わる筈だった全体会議は余裕で15:00を回っていた。
そしてまだ進捗は道半ばであった。
金剛が吠えた。
「NO!加賀の後ではテートクが散々吸い尽くされてグッタリに決まってマース!」
加賀が金剛を睨む。
「さすがに頭に来ました」
小さく首を振りながら長門がため息をついた。
「休憩のためのケアタイムは設けると言っているだろう。ただの順番だ。文句を言うな」
金剛が長門を睨んだ。
「なら長門が加賀の後になればいいデース!」
長門が即答した。
「断る。加賀はムッツリでねちっこいから提督が精神的に萎えているだろう」
「本当に頭に来ました」
更にしばらく後、そろそろ太陽が水平線に沈もうという頃。
「あ、ええと、誰か代って頂けませんか?榛名一生のお願いです」
「それなら私が代わるわ!」
「・・あっ、足柄さんは結構です。榛名が大丈夫じゃないです」
「遠慮しないでいいのよ?」
「足柄さんの前は陸奥さんで、その前が鳳翔さんですから」
「だから良いって言ってるのよ?さあ代わりなさいよ」
「多分提督が最も干からびてるので、榛名、お断りします!」
「ねぇ長門」
「なんだ」
「これ、当然一定期間ごとに順番決めなおすんでしょうね?固定なんて言ったら暴れるわよ?」
「やめてくれ。わ、解った。必ず検討すると約束する」
「変えると、約束、しなさい」
「かっ・・」
「そこで視線逸らして汗だくになってんじゃないわよ。さあ言いなさい」
「な、なぁ、大淀と加古を説得してくれないか?」
「嫌」
更に更にしばらく後。
「も、もうこれで良いな?諦めるなり納得するなりしたな?とりあえず、とりあえず一旦始めないか?」
「・・・」
「なんで敵攻略作戦の時は二つ返事で行ってくれるのに皆この件だけ頑ななんだ」
「それはそうでしょ、長門」
「なぜだ陸奥。ルールとペナルティの説明と順番決めだけだったのに、もう10時間を超えてるんだぞ?」
「だって長門だってあれこれ嫌だって言ってたじゃない」
「ぐ」
「それになーんか、どっか、誰かが得してそうな気がするのよねえ」
「それはどこだ」
「解んないわよ、ただのカンだから」
「やめてくれ。対案を出すなら討議するが、これはAI演算センター全焼と引き換えに手に入れた最高峰の英知だぞ」
「それは聞いたけどプロンプトとか・・まぁ良いわ。本当にカンだから」
一部の者が首を傾げるなか、大淀は夜の闇を味方に静かに気配を消していた。
陸奥さんの「ただのカン」的中率は89%を超えます。あらゆるフェイクを超えて真理を突いてきます。
作戦遂行時には絶対に聞き逃してはいけない「ただのカン」ですが、これほど周到に準備してもダメとは恐ろしい。
ここが今日最大の難所でしょう。ですが、そのために朝から議論を過熱させてきたのです。
大淀はちらと長門を見た。
長門は疲れ切った表情で一同を見回した。
「もう良いな?では、鳳翔、日向、伊勢の3人と、鎮守府警備任務中の那智には、わ、私長門と、金剛、大淀で説明する・・・い、以上解散」
長門さん赤疲労到達で強制終了。勝ちました。
大淀は無表情のまま席を立った。
一方その時、食堂の外では。
「やーまさか、夕食までナシとは思わなかったよ。ねぇ妖精さん?」
私はそうっと物陰から見て、封鎖中の札が出たままの食堂と、真っ暗な執務室を見て肩をすくめた。
おむすび2セット買っといて良かった~
「じゃあ妖精さんには一口羊羹切り分けてあげよっか。あ、嬉しい?そんなに?はいはい解ったから」
私は大はしゃぎの妖精さんをなだめつつ、自室へと戻ったのである。
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翌朝。
自室で髭を剃り、シャワーを軽く浴びてから服に着替えていると、長門がやって来た。
「マルロクマルマル、朝だぞ提督」
「おはよう長門。あれ?少しやつれた?」
「誰のせいだと・・いや、今度は提督のせいではないか」
「良く分からないけど、朝食はここで良いよ」
「そっ、そうか!協力してくれるか!すぐ頼んでおくぞ提督!」
「ほんとどうしたの長門?」