そして。
「古鷹型重巡洋艦!2番艦!加古っ!入れても良いでしゅかっっ!」
どうしよう。絶対テンパってる。
私はそーっとドアの前に立った。まだ開けない。
まあこの間もテンパったまま部屋に入れたし、大丈夫ではあったんだけどね。
「え、えと、加古?」
「はいっ!まごうことなき加古でござるっ!」
「なんか大丈夫?いつもと雰囲気全然違うんだけど」
「・・き、緊張しちゃって」
カチャ。
「一緒だね、加古。こんばんは」
「あっはい、こんばんは」
「どうぞ」
「おじゃまします」
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私が先に部屋に入ると、加古がそうっと部屋に続いて入ってくる。
極めて自然に鍵をかけながら、だけど。
この辺がやっぱり貞操逆転だよね。
まぁ男の部屋に女の子がおせっせのためにわざわざやってくる時点でお察しか。
「緑茶入れるね。そこにかけて待ってて」
「はいっ!」
私はポットから茶葉を入れた急須にお湯を注ぎながら言った。
「ねぇ加古」
「はい!」
「今更だけど、私で大丈夫?」
「へ?」
「いやほら、加古にとっては今の私って体だけ元の提督で中身別に見えてんのかなって」
「うん。そう思ってるよ」
「気持ち悪いとか無い?」
「なんで?」
「見方によっては悪霊が憑依してるとか、気が触れたとかとも取れるかなってさ」
「ないよ?」
「ないか」
「むしろ前の方が、壊れてた気がした」
「そうなのかい?」
「えと、昔の話って誰かから聞いてる?」
「何百件も強制猥褻の被害を受けて、何十回と誘拐された話?」
「うん」
「件数だけね」
「実はさ、提督は着任当日にも誘拐と強制猥褻の被害に遭ったんだよ」
私はなんとなく、聞きながらは止めた方が良いかなと思って、急須のお茶をきっちり注いだ。
「そっか。ほら、お茶どうぞ」
「ありがと。その救出にあたったのは長門だったらしいんだけどさ」
「うん」
「現場は壮絶だったってずいぶん経ってから聞いたんだ。だからさ、そんなことを繰り返されてきたら壊れるよって納得したの」
「壮絶?」
「多分だけど、マワされてたって、さ」
「そっか」
「鎮守府に入ればほとんどの一般市民とは隔絶されるから、その直前を狙われたんだろうって」
「・・んー」
私は溜息をついた。
私の記憶する世界の常識で考えると、女による男の誘拐と輪姦なんてイメージすら出来ない。
ただ、男女を逆に考えれば、今の加古の説明だけでも空恐ろしい光景が容易に想像できる。
世間から逃げようとした、うら若き容姿の整った線の細い女性が、凄惨な現場、ね。
そりゃ壊れるわ。
「だから私達艦娘も、女だから見ないというか、意識の外に置いてたんじゃないかな」
「そう、かも、しれないね」
「あ、えと、今の提督はさ、その、前の提督とどういうつながりなの?」
「それが全く無いんだよ。前の提督が死にたいと願って、別人の私がすぽんと代わった、みたいな」
「じゃあ、前の提督は?」
「先に亡くなったお母さんの元へ行ったみたい。お迎えが来る前にちょっとだけ話せたよ」
「え、どうやって?」
「夢の中だと思うんだけど、向かいあって話したよ。短い時間だったけど」
「そっか・・お母さんに会えてるといいね」
「そうだね」
しんみりした雰囲気の中で、温かいお茶を啜ったのだけど。
「それでですよ加古さん」
「うん」
「私とえちちなことしたい?」
「もちろん、とことん、どんとこい」
「えっ」
「提督が良いって言ってくれる限り、何十回でも時間一杯までいいよ?」
「堪忍してつかぁさい」
これは 気合を 入れないと やられる!
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私は傍らで眠る加古の頬をつついた。
「ね、ねえ加古さん?」
「zzZZzz」
ええっと、どうしよう。
裸で抱き合って、キスから始めて、一生懸命前戯を尽くしていたんです。
気持ちよさに馴染んでもらって、ついでに何回かイっといてもらおうと思って。
そしたら、シ過ぎてしまったらしく、加古さんが気を失ってビクビクビクビク何度も痙攣して。
そのまますやすや眠ってしまったんです。
何が残ったかって?臨戦態勢の息子を抱えた私ですよ。
もうどうしたらいいの。
間抜けもいい所です。
「あ、あのぅ、加古さん?もしもーし・・だめか」
しょうがないから、すやすや眠る加古さんの布団に潜り込んで寝る事にしました。
え?ナニもせず並んで寝たのかって?
んなわけないでしょ。散々えちちな悪戯しましたよ。もしかしたら起きてくれるかなって。
色々柔らかかったですが!かえって生殺しでした!
初めてが寝てる間に完了ってのはいくらなんでもナシだよね。
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「今日ほど寝つきの良い自分を恨んだ事はないっ!でも気持ち良かったですっ!」
「そっか。おはよ、加古」
と、いうわけで。
つやっつやな加古と完全不完全燃焼の私が朝日に包まれてます。
「加古は今日はどんなご予定?」
「朝イチで出陣だよ?今なら泊地棲姫くらいイッパツだね!負ける気がしないよっ!」
「あ、そうなんだ」
時間あるならこれから・・とか思ったんだけどね。仕方ないね。
「提督、朝ごはん持ってきたら一緒に食べても良い?」
「もちろん良いよ」
「持ってきます!」
さっと身支度を済ませた加古が元気よく部屋を出ていくのを、どこかじっとりした目で見送った。
はー・・
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「提督、どうした。疲れたのか?」
「むしろ逆なんだよ、長門」
「は?」
私は加古と一緒に執務室へ行き、長門から出航命令を受けて加古は勇ましく出て行った。
その後のやりとりである。
首を傾げる長門に、私は肩をすくめた。
「いや、昨夜は初めてだったけど割と出だしは順調だったんだ。しっかり話もしたしね」
「ほう。いきなり絡み合ったわけではないのか」
「そんなAVみたいな展開無理です」
「んっん゛っっ!そっ、そうか、そういうのはAVの世界だけか」
「長門がハードなAVに感化されてるのは後でお説教として」
「説教される覚えはない!私はいたって正常だ!」
貞操逆転世界だなあ・・開き直るの女の子なんだ。
「でまぁ、そういう雰囲気になったわけですよ」
「うむ」
「ですけどね、いささか私のサービス精神が溢れすぎたみたいでさ」
「?」
「・・その」
「うむ」
「前戯だけで加古がイき過ぎて寝ちゃって、さ・・」
長門が両目をパチクリさせたあと、吹き出した。
「ふっ・・フフッ・・あははははははっ!」
「笑う事ないでしょ!」
「これが笑わずにいられるか!あはっ・・あはっ・・あはははははっ」
「もー」
ひとしきり笑い、笑いすぎた涙を吹いた長門は言った。
「すっ、すまん。・・・んふっ・・あぁえっと、これも言ってなかったのだがな」
「なにさ」
「休憩日はケアタイムと呼ぶが、大淀が付き添うぞ」
「ケア?」
「その、使いすぎて擦れて痛くなったとかの時に治療行為が出来るからな、大淀は」
「本当に優秀だね」
「彼女は国内1位のAIだったからな。法律にも医学にも精通している」
「精通してるんだ」
「提督はイタせなかったのにな。ふふっ」
「あーもー仕事するよ仕事!」
「ふふっ。ああ、解った」
こうして散々長門にからかわれながら1日を過ごしたんだ。