艦娘可愛いです。   作:銀匙

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【その33】

 

 

日向の差配は程良い頃合いに次の料理が届き、酒もチェイサーとしてのソフトドリンク類も切らさない。

おかげで私はすっかり良い気分に酔っていた。

「日向は長門とはまた違った安心感があるよね」

「なんだ、藪から棒に。まぁ、それで、君はどんな違いを見出したんだ?」

「的確な事を、手短に。そんな気がする」

「昔から多くを一度に話すのが苦手でな」

「必要なことはちゃんと伝わってるし、良いと思うよ」

「そうか」

「あとは格好いい」

日向は飲みかけた酒でむせこんだ。

「かっ!?げほっげほっ!!!」

「変なタイミングだった?ごめんごめん」

「けほっ!その、君は時折本当に変な事を言うな」

「変な事かい?」

日向は2、3度咳き込むと、とんとんと胸の辺りを叩きながら言った。

「悪意無く、まっすぐ来るからな君は」

「褒めてるのに悪意は無いよ」

日向はにやりと笑うと、ずずいと顔を寄せてきた。

「それで?どこが格好良いのだ?」

「まず白装束がキマッてて似合ってる」

「ふむ」

「落ち着いた佇まいが居るだけでカッコイイ」

「ふ、ふうん」

「ショートカットが可愛い」

「かわっ!?」

「声を聞くと落ち着く」

「そっ、そうか?」

「強いのにお肌つやつやで美人さん」

「えっ!?」

「カッコイイよねー」

日向は急に距離を取ると、両手をぱたぱたさせて自分の顔を扇ぎ始めた。

「き、きっ、君という奴は・・」

「なんでそんなに真っ赤になってるの?」

「すっ、少しは装備とかを褒めてくるのかと思えば」

「瑞雲ちゃん?」

「ちゃんは要らない」

「それはそれ。日向は日向」

「・・なるほど、長門が堕ちる訳だ」

「ん?ほら、注いであげる~」

「人の気も知らず、のんきなものだ。ま、まぁ、悪くない」

その時、すすっと鳳翔が座敷に半身を入れてきた。

「お待たせしました。だし入り卵焼きと肉じゃがです」

「日向は可愛いし、鳳翔さんのご飯は美味しいし、今晩も楽しいなあ」

鳳翔と日向は一瞬顔を見合わせると、二人とも急に優しい顔つきになって私を見た。

「ふふっ。あなた、食後のデザートは果物と水ようかん、どちらが良いですか?」

「水ようかんと渋いお茶でお願いします」

「後でお持ちしますからね」

「うん・・それで、日向はなんでそんなニッコニコなの?」

「いや。君が楽しんでくれるなら、私も嬉しい」

「楽しいよ~」

「そうか」

日向は軽くお猪口の酒を揺らし、くいと一気に飲み干した。

「ほら日向、卵焼き美味しいよ?あーん」

「んなっ!?じっ自分で食べられ・・解ったそんな悲しそうな顔をするな食べる食べるから!」

「あーん」

「う、うむ・・」

「おいしい?」

「・・よ、良く分からないな」

「じゃあ今度は肉じゃが~♪あーん♪」

「だから自分で食べられると・・まったく、仕方ないな」

何度もあーんを迫る私を、日向は困り顔をしながらちゃんと相手してくれるんだ。

 

ところで、酔うとおっきしなくなるって言うじゃない?

あれ嘘です。少なくとも私と日向の今宵には適用されなかったよ。

でも眠くなるのはすごく早かったです。

 

 

-----

 

 

「寝ている、な」

日向はわずかに顔を横に向け、隣で眠る提督の寝顔を見た。

先程までのひとときが嘘のように、提督は大人しく寝ている。

日向は視線を上に向け、天井を見た。

先程も見ていたはずだが、彫刻も何も見えていなかった。

提督は酔っていたからなのか、普段からかは解らないが、とても慎重だった。

どうやって察しているのかは分からないが、私の痛みが落ち着くまで待ってくれた。

だから底なしにも思えるほどの快楽の沼に二人で溺れることが出来た。

「んー」

提督がぐいぐいと体を摺り寄せてきた。寝ぼけているのか無意識かは知らない。

それでも。

「可愛いのは君の方じゃないか」

日向はそっと提督の頭を撫で、そのまま目を瞑った。

後数時間で出陣だし、眠っておかねばならない。

それでも。

「提督と共にする晩酌は、その後の夜も含めて、楽しかったな」

目を瞑ったまま、日向はふふっと笑った。

 

 

-----

 

 

朝食を食べ終え、食器類を食堂に返してくれた日向を出迎える。

「おかえり。日向の今日の予定は?」

「たっ、ただいま。今日は西の方を中心に回ってくる」

「敵は減ったの?」

「最近は減ったどころかまず見かけないな。鳳翔がすっかり駆逐してしまったようだ」

「凄いねほんと」

「おかげで折角開発したVLSの出番が無くてな」

「VLS?」

「ああいや、なんでもない。君もそろそろ執務室に入る時間だろう?」

「執務室まで一緒に行こうよ」

「あ、ああ・・・その・・」

「手を繋いでいこ?」

私は日向と手をつないだ。日向の手って柔らかいんだよ。

日向はつないだ手をじっと見てるんだけど、ゆっくり顔が赤くなっていった。

「ほ、ほんとに、ほんとに、君ってやつは」

「嫌かい?」

「嫌なら振りほどける。嬉しいから解けなくて困ってる」

「なんで困るの?」

「これから出陣だと言ってるじゃないか。こんな頬を染めて戦闘に出られるか」

「チューする?抱き合う?」

「悪化する選択肢しかないのはわざとか?」

私はパッと手を離した。

「じゃ、キリっとして行こう!不注意で怪我されたら嫌だしね!」

日向はじっと自分の手を見つめ、溜息をつきながら手をおろした。

「この悔しさは敵にぶつければいいな」

「何か言ったかい?」

「いや、なにも。さぁ行こう」

「よっしゃ!」

 

何気なく見た日向の横顔は、朝日に照らされているからかキラキラ輝いていたんだ。

ほんと、うちの嫁さん最高です!

 

 

-----

 

 

「おはようございます!」

「おはよう大淀」

「おはよう」

「ああ、おはよう。皆揃ったな」

 

私と日向が執務室に入ると、長門と大淀が出迎えてくれる。

これが段々日常になっていくようで嬉しい。

 

「さて、日向はこのまま出陣だな」

「あぁ。西の方を掃除してくる」

「鳳翔が片付けた分、見知らぬ勢力が乱入するかもしれん。気をつけろよ」

「ああ。他に情報はあるか?」

長門が大淀を見ると、大淀は首を振った。

「いえ、ただし潜水艦までは察知できませんのでお気を付けください」

「解ってる。では加賀と伊勢を連れて行くぞ」

「そう、だな。それでいい。武運を祈る」

長門と日向の敬礼は、どちらも格好良いね。

 

「いってらっしゃい」

執務室で日向を見送ると、私は長門に尋ねた。

「編成って長門達がやるんじゃないの?」

長門は首を振った。

「本来は海域や体調等を考慮し、当日判断するのが良い。だから今はそうしている」

「ふんふん」

「以前は提督に承認を貰う書類を作る都合上、それらを予測して書いていただけだ」

「なるほどね」

「というわけで今は私が今書いたこの書類に」

「私がサインすれば問題なし、だね」

「ああ。そこだ」

「解ってる」

 

 

 

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