艦娘可愛いです。   作:銀匙

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【その34】

 

 

そして夕方となり、今日もお仕事が終わる。

「えっと、これで終わりかな」

「ああ、提督に任せる部分は・・間違いない、終わりだ」

「よっしゃ、二人ともお疲れね・・・んーっ」

そう言いながら自席でぐいぐい背伸びをしていると、執務室のドアがノックされた。

見れば大淀が仕方ないなという目でドアを見ながら答えていた。

「どうぞ」

 

カチャッ!

 

「失礼します!てーとくさん、お迎えに上がりました♪」

入ってきた鹿島の目を見ると、どことなくどろんとしたサキュバス感が減ってる気がした。

その差に気づいたのか、大淀が首を傾げる。

「鹿島さん・・雰囲気変わりましたか?」

鹿島は屈託のない笑顔を大淀に向けた。

「はいっ!鹿島、てーとくさんに染められましたっ♪」

長門が両手で頭を抱えた。

「毒が回るのが早すぎる」

私は長門をジト目で見た。

「だからなんで私が悪いみたいになってるの」

「染められたと言ってたじゃないか。さぁ何をしたか吐け。多少は情状酌量をしてやらんこともないかもしれない」

「何その官僚の答弁みたいな言い回し」

「良いから吐け」

「えー・・心当たりがないんだけど」

「鹿島、何をされた?」

鹿島はゆっくりと長門を見て、にこりと笑った。

「えへへっ・・てーとくさんはですねぇ」

「ああ」

「鹿島に仲良くしたいって言ってくれたんです♪」

「を・・おぉ・・おぉぉおぉ」

私は長門が呻いたのでそっちに驚いた。

「えっそんな事もダメなの長門?ちょっと、本当にコミュニケーション取れなくなるんだけど」

長門は大きくゆっくりと首を振った。

「いや、これは提督は何も悪くない。悪くないんだが」

「だが?」

「何と言えばいいんだ・・えーと大淀、なんか良い説明は無いか?」

振られた大淀はしばらく考え込んでいたが、軽く頷いて教えてくれた。

「えっと、私もその違和感の正体に気づくのに時間がかかっていたのですが」

「うん」

「ご主人様は、私達が女なのに優しすぎるんです」

長門と鹿島が大きく頷いた。

「ええ・・しかも2人とも頷くのそこで?」

「はい。艦娘相手に限ってかどうかは解りませんが、私達が過去対峙した男性は違いました」

「というと?」

「最も多いのが忌避。言葉を交わさず視線も合わせない。これは誰に対しても、というケースも多いです」

「それは壊れてるんだと思うなあ・・」

「ありえます。大概会うのは保護区か救出現場なので」

「あー」

「次に多いのが傲慢。私達を奴隷か従者、もっといえば話す機械と見るパターンです」

「AIだから?」

「いえ、艦娘に、です」

「ほぅ」

見る間に瞳の温度が冷えていく提督に、大淀達はぶるりと震えた。

「あっ、あの、中断しましょうか?」

「・・いや、大淀達への感情ではないよ。続けて?」

ふっと提督の纏う空気が変わったので、大淀は胸をなでおろしながら続けた。

「最後はその、せ、性玩具としか見ていないパターンです」

「えっと?」

「その、保護区で仕事中の私達にいきなり抱き着いて事に及んだり、という」

「それもうキチガイじゃん」

「それでもまだ、搾精にご協力頂けるという意味では良い方です」

私は両手で頭を抱え、ひとしきり唸った後、ハッと顔を上げて長門を見た。

「長門」

「ん?なんだ?」

「着任の時、私を救出したんでしょ」

「ああ」

「そ、その、私は長門に性的暴行を?」

「いや、ほぼ無反応だったが」

「が?」

「とても小さな声で、助けてくれてありがとうと、一言だけ、な」

「大淀とかには?」

大淀は首を振った。

「私達に反応を示す事はありませんでしたよ」

私は胸をなでおろした。良かった。過去の自分が鬼畜じゃなくて。

いやあまり良い訳でもないけどさ。

私は俯いて1つ深呼吸を済ませると、3人に向き直った。

「皆、聞いて」

「「「はい」」」

「私は君達と仲良くしたい。甘々にイチャコラしたい。他の男がしないかもしれないけど知ったことじゃない」

「・・・」

「優しくしたい。優しくされたい。心を通い合わせたい。その上でしか見られない極上の世界があるから」

誰かがごくりとつばを飲み込む音が聞こえた。

「だから私はそういうものだと認識して。他の子にも伝えて。外の男達と一緒にしないでくれ」

3人がぴしりと敬礼してくれたので、私ははっと我に返った。

「あ、いや、別に良い事とか言ってないから」

長門が微笑んだ。

「良い事を言ってるぞ、提督」

大淀が満面の笑みを見せた。

「ますますお慕いします、ご主人様」

その二人の間を縫って、鹿島が目の前まで歩いてきた。

「だから、鹿島はてーとくさんと仲良しになりたいです♪」

「鹿島・・」

「まずは荒縄で全身縛って頂けばいいのでしょうか」

「違います」

「では、何も知らない鹿島に1つ1つ刻み込んでくださいね」

私は息を1つして席を立つと、鹿島の隣に立った。

「?」

微笑んだままちょこんと首を傾げる鹿島。

ほんと仕草は可愛いのになあ・・・いやまあ何もかも可愛いんだけど。

そう思いながら、私は鹿島の手を取り、きゅっと恋人つなぎをした。

「!?うふおぉぉおっ!?てってーとくしゃん!?」

「たとえば、こんなのだよ」

「・・・・AIニューロンDBに重篤なダメージが生じました。予見不可能な事象です。再起動プロセスに移行します」

無表情に紡がれる鹿島からの声を聞いて、私は鹿島を二度見して、そうっと長門達を見た。

へらりと苦笑を返す大淀、そして

「ほら見ろ提督、これでもまだ即効性の毒ではないと言い張るか?鹿島は優秀な軍事用AIだぞ?」

まさに長年追い続けた容疑者の決定的証拠を押さえた刑事のような顔の長門がそこに居たんだ。

「や、待て長門。ただ手をつないだだけだぞ?」

大淀がクイっとメガネを押し上げた。

「嘘です。指が絡まっていました」

「ただの恋人つなぎでしょうが」

「違います」

「何が」

「“ただの”ではありません」

「えっ」

「“エロ小説でも滅多に見ない、伝説の”です」

まさに人形のように目を瞑って棒立ちする鹿島さんをちらと見て、大淀を見て。

私はへらっと笑うしかなかったんだけど、気づいたんだ。

「てことは大淀さんエロ小説読むんだ」

「回答を拒否します」

「あ、ねぇ大淀さん」

「は、はい」

「今度二人の時間の時に、エロ小説朗読してほしいな」

「えっ・・エロ・・小説の?・・ろ、ろろ、ろろ朗読、ですか?」

「そう。私が目の前で聞いてるし、イチャイチャ系だったら再現しても良いよ」

「・・あふぅ」

大淀が白目をむいて崩れ落ちた。

目を瞑って棒立ちの鹿島さんはまだ再起動してくれなくて。

執務室には冷や汗をかく私と席で頬杖をつく長門が居てね。

「さて、判決を述べる前に被告に発言の機会を与えようじゃないか」

「一体何の罪でしょうか」

「軍事用AIを2つも機能停止に陥らせ、鎮守府の運用を止めるのは立派な公務執行妨害だぞ?」

「仕事終わったって言ってたじゃん」

「提督の仕事は、だ。我々はまだやらねばならない事があった」

「うっ」

「あーどうしよーかなー、大淀が働いてくれないと残業だなー」

「ぐっ」

「というわけで有罪の提督には」

「発言の機会は終わったんでしょうか」

「あったって変わらん」

「ひどすぎる」

「大真面目な話、艦隊戦の最中とかしてくれるなよ?大淀の支援は重要なんだ」

「肝に銘じるよ」

「ああ。では仕方ない。二人が再起動するまで提督の悪行でも振り返るか?」

「長門」

「なんだ」

「明日の昼休み、私が奢るから酒保で甘味でも買って食べようよ」

「ちゃんと大淀の分もあるんだろうな」

「もちろんだよ。3人で食べよ?」

「仕方ない。あー仕方ないなー」

にやりんと長門が笑った時、先に大淀が目を覚ました。

「・・はっ?わっ、私は何を」

「おかえり大淀。災難だったな」

「災難・・ですか?」

「最終記録は感情にフィルタをかけて確認しろよ」

「・・な、なるほど。これはとってもエッチいですね」

「だろう?」

「ふぃ、フィルタをかけてもまだイキそうです」

「まだ仕事があるし、今日の当番は鹿島だ。まだ目覚めぬがな」

「おかしいですね。再起動にしてもそんなに長くかかる筈は無いのですが」

大淀がけげんな表情で鹿島をじっと見ると、鹿島がぴくっと痙攣した。

「・・鹿島さん、起きてますね?」

その声でぱちりと目を開けた鹿島は、カリカリと頬を指でかいた。

「てーとくさんに指を絡めて頂いた瞬間をリプレイしてました」

「何回位ですか」

「3万回ほど」

「幸せですか?」

「それはもう」

私は大きく溜息をつき、鹿島に向き直った。

「あのさ鹿島さん、それくらいいつでもやってあげるから」

鹿島が軽く数cmは飛び上がりながら私を見た。

「いつでもでしゅかっ!?」

「だからあんまりビックリさせないで。壊れたかと思って心配したよ?」

「しんぱい・・して、頂けたんですか?」

「もちろんだよ。鹿島だって私の素敵な奥さんなんだから」

「素敵な・・奥さん・・古文書の神話にそんな単語があったような・・」

私は思わず大淀を見た。

大淀はメガネをクイクイしながら答えた。

「ご主人様にはインキュバスも真っ青ですね」

長門が頷いてるのを見て、私は溜息をついた。

どれだけこの世界は歪んでるのさ。

「はぁ、じゃあ帰ろうよ、鹿島」

「んはっ!?ハイかしこまりましたご主人様!」

「え、鹿島さんまでご主人様呼びにするの?」

「もしかして・・“てーとくさん”の方が萌えますか?」

「萌えます」

「では“てーとくさん”を続けます」

「よろしく。あぁ、えっと、手をつなぐとまた再起動しちゃう?」

「絶対シてください。こんなDBの10や20すぐ用意しますので」

私は大淀を見たんだけど、大淀はこくりと頷いた。

「お任せください。半導体調達部長のネタは豊富に持ってますので」

「そうじゃなくて、手とつなぐと壊れるの?AI」

「いえ、それ自体はもう学習したので大丈夫かと思いますが」

「が?」

「ご主人様はいつどんな形でAIに強烈なダメージを与えるか分からないので」

長門が大きく頷くのを横目に、私はがくりとうなだれた。

「てーとくさん♪かーえりーましょ?」

「あ、なんか鹿島が癒しに見えてきた」

「卑しいコト、ご所望ですか?」

「い・や・し」

「い♪」

「最後の“い”がいらないから」

「ああん」

「悪戯するなら手を繋がないよ?鹿島」

「一生かけて体で何でも償うのでお許しくださいてーとくさん」

「何でもといったな娘よげっへっへ・・って違うから。ほら帰るよ」

「はぁい♪」

「じゃ、長門、大淀、邪魔してごめんね。お先」

「ああ」

「お疲れさまでした、ご主人様」

 

 

 

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