そして、翌日の夕方。
「川内参上!日のあるうちに帰ってきたよ!」
「やぁおかえり。楽しかったかい?」
「うん!燃料とっても喜んでもらえたし、お泊り会も楽しかったよ提督!ありがとう!」
「じゃあまずは風呂に入って、その後食事をとりなさい」
「あっ、うん。何だろう。なんか嬉しくない気配がするというか」
「ソンナコトナイヨー」
「なんで目そらしたの?」
「ソンナコトナイヨー」
「ところで陽炎は?」
「労働に精を出してるよ」
「・・労働?」
「労働」
「労働・・ねぇ」
「夜勤もあるよ」
「提督」
「うん」
「私がしたいのは夜戦であって夜勤じゃないからね?」
「夜は良いんでしょ?」
「夜戦が出来る夜って意味で、深夜まで書類仕事なんて嫌なんだけど?」
「大丈夫。書類は私が書くから」
「えっ、じゃあほんとに何かするの?」
「まぁまぁとりあえずお風呂入ってご飯食べてきなさいって」
「えー・・」
そして、その夜。
「そこのリ級ぅぅぅ武器寄越せぇぇぇ!!!」
「ワ級見つけたぁぁあああ!!」
ドドーン!
海原で目を血走らせつつ、ヘ級とリ級から兵器を強奪する陽炎と川内の姿がそこにあった。
武装を奪われた深海棲艦達は一瞬呆然とした後、腕で肌を隠すようにすごすごと退却していった。
そして見つけ次第拿捕されるワ級はまるでツチノコ扱いである。
一方鎮守府では。
「なるほど。今回のワ級は弾薬とボーキサイト200ずつ持ってたんだ。確かにボーナスだわ」
次々と生成される資源の数を帳簿につけ続ける司令官の姿と、
「あの、ご主人様?建造されてからずっと荷役作業って変じゃないですか?」
「港湾荷役は海の仕事ですよ?あ、あとその弾薬から第4列に仕舞ってね」
「はい解ってます!・・あ、あれー・・なんかおかしいなあ・・」
と、ヘルメットをかぶり、弾薬をフォークリフトで倉庫へとせわしなく運ぶ漣の姿があった。
そう。せっかく例の球から建造されたのに、彼女はまだ海にすら浮かんでいない。
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そして夜が明ける頃、私が帳簿のページを見返しているとズボンの裾を引っ張られた。
「どうし・・あれっ?皆どうしたの?」
引かれた方を見ると妖精さん達が整列しており、一斉に敬礼している。
「うん、作業?終わり?寝る?深海棲艦は?バッテンって事はもういないってこと?なるほど」
身振り手振りで高度な意思疎通って難しいんだよね・・
私は海原を見た。
「じゃあ川内達にも終わりって言わないとね。うん、皆もお疲れ様ね」
「つ・・つか・・れた・・」
「なんで・・正面海域に・・リ級が・・」
「いやー大漁だったね。というか、ほんとなんであんなに敵艦居たんだろうね。とにかくお疲れ様」
30分ほど後、工廠の前で大の字になって横たわる川内と陽炎の姿がそこにあった。
なお漣は既にフォークリフトを手足のように扱えるまでに成長している。
「とりあえずお風呂入っておいでよ。朝食用意したから」
川内が視線だけ私によこしたが、非常に疑っている目である。
美少女のジト目ゾクゾクします。言わないけど。
「朝食後また出撃とか言わないよね?」
「言わないよ。敵さんも居なくなったみたいだし、今日一日ゆっくり寝てていいから」
「ほんとっ!?よし行くよ陽炎!」
「何でそんなに元気なのよ・・・あぁあぁ引っ張らないでぇぇぇ」
二人を見送っていると、傍にフォークリフトが停まった。
「ご主人様!全数搬入完了しました!」
「漣もご苦労!風呂入って食堂においで。ご飯にしよう」
「ありがとうございますご主人様!」
「あぁ、フォークリフトの充電は私がやっておくから行っといで」
「お願いします!じゃ!」
すげぇな漣、徹夜でフォークリフト操作してまだ走れるとは。
さて、倉庫まで乗ってくかね。ええと操縦どうやるんだっけ?
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「「「ごちそうさまでした」」」
「ごちそうさま」
全員揃って食堂で食事を終えた。
この鎮守府にはまだ調理師さんは居ないので皆で交代で調理している。
朝食は無論私が作った。他に誰もいなかったからね。
「あー疲れたぁ・・」
「うん、期待以上の成果だよ。皆ほんとお疲れ様。ゆっくり休んでね」
皆を見回していると、陽炎がコップの水を飲みながらじっと私を見ていた。
「どうかした?」
「・・んー、なんでこんなハイペースで資源集めやってるのかなって」
「あぁ、そうだね。皆は知る権利があるよね」
私が居住まいを正すと、3人も背筋を伸ばした。
「えっとね、私が着任してから3日位経ったんだけど、その間の公式補給量知ってる?」
川内が首を振った。
「知らないけど、そう言うって事は碌なもんじゃないんだね?」
「正解。燃料30、鋼材21、弾薬15、ボーキサイト3だ」
川内の額にしわが寄った。
「・・それ1回平均?まさか1日平均とか?」
「気持ちはわかるけど3日間累計で、なんだよ」
言葉を失う川内。
漣が不安げに陽炎を見ると、陽炎は肩をすくめた。
「桧山司令の言った通りよ。私達が集めた分とは別に置いてあるし」
私は頷いて続けた。
「こんなんじゃ陽炎一人で正面海域の巡視に限ったって満足にできないよ」
「そうね。昨夜みたいに多数と遭遇したら沈められてたかも」
「他には、これだ」
そういって私はポケットから例の球を取り出した。
「綺麗な球ね。これ何?」
「敵艦の中からたまに見つかるみたい。これを建造マシーンに入れると艦娘が来てくれる。漣はそうやって建造したんだ」
「へー!」
「これの良い所は資材が要らないこと。半面、誰が来るかは解らないんだ」
「ほー」
「だから誰が来てもいいように、そしてしっかり運用出来るように、備蓄しなきゃ話が始められない」
「・・・」
「今はまだ全員でかからないと資源備蓄出来ないけど、いずれは片手間にしたいんだ」
「軍の補給をあてにしないってこと?」
「もちろん貰えるものは貰うよ。でも足りないからといって皆を怪我したまま放っとくなんてことはしたくない」
「・・・」
「だからまず資源が必要。そしてその手段はヒミツにしておかなきゃいけない」
「上に、ってことね?」
「そう。あと、皆が良いなら近所には融通しても良いと思ってる」
「なんで?」
「普段助けておけば、困った時に助けてくれるから」
「あんまアテにしない方が良いと思うけどね・・」
「おや、思うところがありますか、陽炎さんや」
「助けたいけど燃料すらない、ってのが割と良くある話だから」
そういって陽炎は、コップの中の氷へと視線を落とした。
「肝に銘じておくよ。じゃ、そろそろこの子達をお迎えしようかな」
私はそう言って、球を眺めてからポケットに戻した。
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「ふむ、順調ではあるが、変わった攻略の仕方だな」
「ありがとうございます」
「褒めてない」
私が鎮守府運営を始めて半年ほど経ったある日、七條司令官が神通を引き連れて様子を見に来た。
なんでも隣接鎮守府同士で進捗状況をチェックしあうらしい。連座制かな。
「いったいどうして南西方面ばかり進撃してるんだ?」
「そっちにはワ級が沢山いまして」
「ワ級に特段の恨みでもあるのか?」
「非常に効率がいいんです」
「良く解らんな・・・うん?」
「なんでしょう?」
「資源がなぜこんなに残ってるんだ?」
「補給されますから」
「補給船が2回目から輸送してくる量は微々たるものだろう?出航させていてなぜ残る?」
「運がいいんですよ」
「艦娘は6隻のみなのか?」
「ええ、駆逐艦ばかりですね」
「なのにここまで攻略できたのか?」
「運がいいんですよ」
「何故目を逸らす」
「別に」
七條司令官は私の視線を追い、その先にあるものをじっと見つめた。
「そういえば、あの建物は何だ?」
「工廠付属の倉庫ですよ。特に用途はなくて、たまに仮置きとかしておく、何の変哲もない倉庫です」
七條司令官がジト目で私を見る。私は口笛を吹いたが音が鳴らなかった。
「・・・ちょっと中を見せろ」
「えっ何の変哲もないですよ?あっ七條司令官お待ちくださーい」
七條司令官は制止を振り切って大股で通路を突っ切ると、資源倉庫の扉をがらりと開けた。
「こっ・・これは・・」
そこには溢れんばかりに積まれた資材と、その間をせわしなく行きかう大量のフォークリフト、
そしてそれらを操る大勢のヘルメットを被った艦娘達と妖精達が作業に精を出す姿だった。