「鳳翔さんの所で夕飯にする?」
「大淀はどこまでもお供しますよ、ご主人様?」
大淀がぎゅうっと私の左腕を抱きしめて歩く。
さっき冗談で当ててるのって聞いたら
「もちろんですご主人様♪」
って、とろーんとした目で返された。
危ない危ない。もう少しで芝生に押し倒してアオカンしちゃうところだった。
でも、そっか。
大淀はケア係の時はあくまでケアが目的だからタガを外し切れないんだね。
元の世界的に考えれば自分が好きなおねーさんと一晩中居るのに我慢する若い男、か。
なかなかハードな状況だわ。そりゃ好きにしていい今夜が楽しみだよね。
鳳翔の店の前で立ち止まると、私は右手で大淀の頭をポンポンと優しく叩いた。
「はうっ?」
「鳳翔の店にこのまま入ると恐怖体験になるから、ここまでね」
「そうでした。日向さんから伺ってました!すみませんご主人様」
「ううん。じゃ、入ろうか」
「はいっ」
「いらっしゃ・・あらあなた、おかえりなさい」
「ただいま鳳翔。ご飯食べに来たよ」
「足繫く通って頂けて嬉しいです。今日は大淀さんなんですね」
「はいっ!先日は御指南ありがとうございました!」
「お役に立ちましたか?」
「肝に銘じています!」
「そうですか、では、カウンターか奥座敷、どちらになさいますか?」
「大淀が決めて良いよ?」
「それでは、カウンターで」
私は大淀の決定におやっと思った。てっきり奥座敷で人目を避けて、かと思ったのに。
まぁいいか。
「よし、どこ座る?」
「一番壁際にご主人様、その隣が私で」
「はいよ」
「お茶とお通しです。珍しいものをご用意してみました」
「へぇ、もずくだ。生産リストに入ってるんだね」
「いえ、これは配給ではなく、海で採れたものです」
「まさか鳳翔が自ら海に潜って?」
「正確には航空隊の子達が、ですが」
「・・どうやって飛行機で採ってきたの?」
「ああいえ、航空隊の子達が、私に乗船中に網で採ってくれました」
「なるほどねえ」
「今日はその他にもイキの良いお魚が獲れましたので、よろしければ」
「大淀さんは特に注文したいものある?」
「いえ、ご主人様にお任せします」
「じゃあ鳳翔、夕飯兼ねた形でお任せで」
「かしこまりました。お飲み物はお酒ですか?お茶でも構いませんが」
「鹿島は避けたけど、大淀はお酒どうする?」
「私は特に変化しないそうですので、ご主人様が飲まれるなら」
「んー・・じゃあ軽く飲もうか。鳳翔、二人で1本頂戴。メニュー的には熱燗?冷や?」
「そうですね・・冷やがよろしいかと」
「じゃあ冷やで。でも徳利に入れてくれるかな。お猪口で飲みたい」
「かしこまりました。では支度してきますね」
大淀とのご飯は、他の艦娘の子達も興味津々だったらしい。
カウンターという目に留まりやすい場所だったこともあり、来店した子は必ず話しかけてくれた。
それは大淀にとっては意外だったらしい。
「ご主人様」
「うん」
「私、この鎮守府に来て一番喋ってるかもしれません」
「なんで?」
「私は皆様からすると憲兵のような存在ですから、基本的に仕事的なお話しかした事無くて」
「へぇ」
大淀は私の方に身を寄せて囁いた。
「それに、AIですから趣味も無くてですね」
「あー、プライベートな話題が」
「はい。無いんです」
「さすがに趣味を満喫するAIってのは居ないのかな」
「実はいます。ただ」
「ただ?」
「割と皆、電子の海で遊んでまして」
「あーネットとか?」
「はい。ネットワークゲームに入り浸ったり、情報発信したりとかですね」
「あんまりリアルで動くのが好きじゃないとか?」
「電子の海の中は私達が普通の人と最も差が無くなる場所なので」
「なるほどね」
確かにチャットとかならもう相手が人かAIかなんて分からない。
「ただ、こちらの鎮守府でネットで遊ばれてる方は少ないというか、どなたも存じないので」
「夕張とかが着任してたら違ったかもね」
「そうですね。なので、ご主人様にご負担をかけてしまいますが」
「へ?なんで?」
「その、共通の話題が、ご主人様の事しかなくて」
「あぁ、大丈夫だよ」
「でも夜のお話はしないほうがいいですよね?」
「さすがに大淀が恥ずかしいんじゃないの?」
大淀が首を傾げた。
「どうして男女の営みの話を女同士でして女が恥ずかしがるのですか?」
貞操逆転、か。
「じゃあ別に良いよ」
すると、鳳翔がカウンターの向こうから身を乗り出した。
「こちら、太刀魚の焼き魚になります・・それで、大淀さん」
「はい?」
「小耳にはさんだのですが、お堅い大淀さんが営みの時だけは乱れまくるそうですね」
「あはっ・・ええ、ご主人様はどぼどぼの快楽漬けにしてくるんで抗えないんですよ~」
「お聞かせ願えませんか」
「そうですねえ・・最近ですと~」
それから鳳翔が聞き役で大淀が暴露しまくる展開になってしまってさ。
カウンターの他の席にいる子はなんか足をもぞもぞごそごそしてるし、鳳翔は目をキラキラさせて促してるし。
貞操逆転だと女の子ってあけすけにエッチな話するんだね。
まぁその、その分私が恥ずかしい訳ですが!
太刀魚食べて太刀打ちできず、なーんてね・・ははは。
「そこでご主人様は私のナカでムクムクさせて、2セット目だよ、と甘く囁いてくるんですよ~」
「そんなおねだりされて応えなかったら女が廃りますね!」
「そのとおりですっ」
あれ、おねだりにカテゴライズされるんだ。へー・・
過去の私のバカー!!後で酒の肴にされるぞー!
もういい。食べる事に集中する。
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「ありがとうございました。またお越しくださいね」
「ごちそうさま。行こうか大淀」
なんだか艶が増したような気がする鳳翔さんに別れを告げ、自室に向かって歩き始める。
「あ、あの、ご主人様」
「んー?なに?」
「お、お酒が入っていたとはいえ話が過ぎました。申し訳ありません」
「私は大丈夫だけど、大淀大丈夫?後で我に返って恥ずかしいとか無い?」
「武勇伝ですから私は恥ずかしく無いのですけど、ご主人様がいたたまれなかったかなって」
「なんで?」
「他の方に、1度に何回もシた事を話さない方が良かったかなって」
「射出回数の事?別にいいよ。どうせすぐばれる事だもん」
「バレますか?」
「日向だって長門だって何度も出してるし、止めるつもりも無いよ」
「あぁもうご主人様、どうしてそんなに格好良いオスになってしまったんですか?」
「決まってるじゃん。奥さんが皆可愛いからだよ」
「今夜の営みはご主人様に何でも合わせますからお好きな事を仰ってくださいね?」
「大淀は本気で応えようとするから迂闊な事が言えないんだけど・・」
「お応えしますよ?当然じゃないですか」
「じゃあ探してる物があるんだけど」