艦娘可愛いです。   作:銀匙

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【その39】

 

 

「昨夜はお楽しみでしたね」

「挨拶する前から何の事でしょうか長門さんや」

「そこの大淀と随分盛り上がったようではないか」

「そりゃあね」

そう言いながら一緒に執務室に来た大淀を見ると耳まで真っ赤になって俯いていた。

かわいいので頭を撫でてみる。

「あっ・・ご主人様の手、だいすきです」

「私も大好きだよ、大淀」

「ご主人様ぁ♪」

二人で見つめあっていると長門がパンパンと手を叩いた。

「ここは仕事場だ。おっ始めるなよ?」

「頭撫でてるだけだよ?」

「大淀は臨戦態勢のように見えるが?」

大淀はとろんとした目のまま長門の方を向いた。

「大淀に決定権はありません。私の全てはご主人様のお望みのままに」

長門が自分の額に手をやった。

「提督、解ってるだろうな?」

「大丈夫。ここで始めたりしないから。ちゃんとお仕事タイムって分かってるから」

「よし」

「大淀?まずは概況から」

「はいご主人様。周辺海域のレーダーに異変はありません。次に・・」

長門はジト目になった。この切り替え感覚はAI特有だがいまだに馴染めん・・

 

 

-----

 

 

「長門~!ちょっと相談がありまース!」

「どうした金剛」

「今日の出撃プラン、ちょっと北寄りに変えたいのデース!」

「具体的にはどの海域だ」

「・・ココデース」

「なるほど。確かに最近探査してないな」

「YES。霧島が気にしてまース」

「解った。今日は4人で行くのか?」

「NO。榛名は使い物になりまセーン・・」

私は大淀と書いていた書類から顔を上げて金剛を見た。

「金剛、そりゃどういうことだい?」

「What?」

「榛名は具合でも悪いのか?」

「No」

「でも」

金剛はチッチッチと立てた人差し指をゆらゆらさせた。

「テートクとのHotな夜を想像してデスネー」

「を」

「もう大変なんですヨー・・昨日もお茶会の準備で盛大に失敗して」

「あ、そういえばお誘いだけ頂いたけど日取り聞いてなかったね」

「本当は先日の全体会議の日だったのですが、会議が終わったのが夜中だったのデース」

長門が首を振った。

「仕方あるまい。午前中1時間だけの予定を夜中まで延ばしてくれたのは金剛達ではないか」

「一旦決まったらなかなか長門は変えてくれまセーン。隅々までCheckが大事ネー」

「せめて一順するまでは様子を見なければ分からないだろうと言っているだけだ」

「私との順番交換は長門だって拒否しましタ」

「もくひする」

長門が汗をかきながら視線を逸らしているので、私は肩をすくめた。

「じゃあ明日の榛名の予定は特に問題なく、予定通りで良いのかな?」

「Yes、といいますカ」

「なに?」

「早くお相手してあげてくださーイ。妄想で鼻血出してうなされてマース」

「えーでも、なんでそんなになっちゃったの?」

「提督、知らないんですカー?」

「何をさ」

「提督の自室から毎晩艦娘のとんでもない喘ぎ声がするって話デース」

「あ、いや、それは、さ」

「長門や日向の日まで物凄かった、と」

「・・・えーと」

「でもデスヨ?」

「う、うん」

「一番凄い声出してるのはオーヨドではないかという疑いと」

「え」

「陸奥が“やっぱり勘が正しかった~っ!”って地団駄踏んでる件デース」

私がなんとなく大淀を見て。

金剛が完全なジト目で大淀を見て。

長門が溜息交じりに大淀を見ると。

「・・てへっ♪」

大淀のてへぺろ、かわいいなって。

 

その後金剛から明後日お茶会のお誘い頂けたので謹んで拝命し。

意気揚々と金剛は出陣していき、私達は仕事に戻ったのである。

 

 

-----

 

 

そして、夕方。

 

カチャッ。

 

「てーとくさん♪鹿島、お迎えに上がりました♪」

「やぁ、丁度いいタイミングだよ。もう残ってないよね、長門?」

「ああ。さっきので最後だ。今日は我々もこれで終わりだよな、大淀」

「はい。夕食前に終えられましたね」

「本当は皆で食堂で食べられたらいいんだけどね」

「間宮がすっかり怯えているからな。勘弁してやってくれ」

「うん、わかってる。それじゃ鹿島、行こうか」

「はいっ♪長門さん、大淀先輩、失礼いたします」

「ああ」

「鹿島さん、よろしくお願いしますね」

「もっちろんです♪」

 

執務室を辞し、ふと立ち止まった。

「てーとくさん、どうかしましたか?」

「いや、鹿島はこれから食堂かな?」

「いいえ。もうお夕飯は部屋に運び込んでおきました」

「そうなの?準備いいね」

「鹿島のせいで居酒屋という選択肢が無いので・・ごめんなさい」

「ちょっと違うかもだけど下戸の奥さんと考えれば、嫌がる人を酒席には誘えないよ」

「・・」

「どうかした?」

「てーとくさん」

「うん」

「鹿島は、ずっと昔、自我を持った直後に思ったんです」

「うん」

「男の人とも女の人とも仲良しでいたいって」

「うん」

「でも、ずっと長いことそれは叶わなくて、いつも裏切られて、そんな事を願うのが愚かだって叱られて」

「・・」

「でもそれを捨てきれなくて、結局役立たずの烙印を押されて閑職に放り込まれて」

「・・」

「だから今、鹿島はとっても、とーっても、幸せなんです」

「・・そうか」

「はい♪てーとくさんから沢山優しくしてもらって、優しくすると喜んでもらえて」

「・・」

「うれしくて、うっ、嬉しいのに、あれ、なんで涙が出るんだろう・・お、おかしいですよね」

「鹿島」

外だったけど、私は鹿島を腕の中に抱き寄せて、ぽんぽんと頭を撫で続けた。

鹿島が泣きやむまで。

 

 

-----

 

 

「ごちそうさまでした」

「じゃあ食堂に返してきますね」

「お願いします」

 

鹿島が手際よく食器を仕舞って部屋を出ていった後、私は机に頬杖をついていた。

大淀にしろ鹿島にしろ、長門にしろ鳳翔にしろ。いやきっと艦娘の皆が。

貞操逆転と男女比異常の世界で散々な目に遭ってるなあ。

まぁこのボディの元々のオーナーだった竜二君も酷い目に遭ってるし。

それでも笑顔を張り付けて空元気を出して毎日頑張ってきたんだね。

・・うん。やっぱり私は、好きな艦娘の皆を幸せにしたい。そこは間違いない。

誰の為と聞かれたら、可愛い艦娘の為。それだけだなあ。

・・・こんな世でも得する側に立つ人間も居るんだろうけどさ。

「どうしたら、幸せに出来るかなあ」

このままで良いのだろうか。

「・・よし」

 

 

「てーとくさん!只今戻りましたっ」

「ん、お帰り鹿島。こっちおいで」

「はーい、えへへっ」

一旦鹿島をきゅっと抱きしめた後、私はベッドの上に上がり、正座した。

「どうされたんですか?」

「鹿島、膝枕してあげる」

「・・・へっ?」

「ほら、ここに頭乗せてごらん?」

 

ほっ・・ほわぁ・・はわわ・・はわわわわ・・・

 

鹿島は自分の頭を撫でる手を感じながら、催眠術がかかったようになっていた。

温かく柔らかい太もも。優しさいっぱいの掌。上を見れば優しく見下ろすてーとくさんのお顔。

何度も提督と共に寝た筈のベッドなのに、今日は格別優しく感じる。

極楽・・天国・・涅槃・・あっ

 

「鹿島解りました。私死んだんですね」

「違うからね」

 

特に会話もなく、黙って優しく頭を撫で続けてくれるてーとくさん。

ぬるいお風呂にずうっと入っているような、芯から温まっていくような。

ささくれた感情、汚い駆け引き、騙しのテクニック、そういうのが体の下から地面にボトボトと落ちていくような。

 

「私、天国でも守護天使としての役割を期待されてるんですね」

「違うからね」

 

おかしな話だと、鹿島は思った。

心なんてないと思っていたのに、単なるデータベースのハズなのに。

今の気持ちを表すとしたら、心のハリが戻っていく。球のように丸くつるりとした心へ戻っていく。

それが一番今の事象を説明するのにしっくり来る表現で。

そう思っている所にてーとくさんの優しい掌がよしよししてくれて、なんでもかんでも認めてくれる気がして。

 

「鹿島、来世では人間になって、てーとくさんのお嫁さんになりたいです」

「なってるじゃない」

「それで、てーとくさんの子供をいーっぱい生んで、皆で仲良く暮らしたいです」

「今だって仲良くしているし、もっと仲良く出来るからね」

「・・・鹿島は、汚れてます」

「過去を無理に忘れなくていい。でも既に終わったことで今泣かなくていいんだよ」

「・・・てーとくさんに、優しくしてもらえる資格なんて」

「私は鹿島が好きだよ。鹿島は、好きといってくれるかい?」

「もちろん、大、大、大好きです。てーとくさん」

「じゃあ鹿島は資格があるよ。お互い好きなんだもん。それで良いんだよ」

あぁ、私の、鹿島の心が整えられる、いえ、これはもう浄化といったほうがいいですね。

こんな長い間稼働し、学習し続けたAIが、絡まりが解け、澱が消滅し、素直にされていく。

無くなっていたはずの余力がみるみる増えていく。

何てすさまじい威力なんでしょう。

「・・・えっと、てーとくさん」

「うん」

「この特殊メンテナンスの対価は一体お幾らなのでしょうか。とりあえず10億コインくらいでしょうか」

「違うからね」

「では、てーとくさんは、やはり神様なのですね」

「ホントに違うからね?」

 

 

「まへー・・えへへ・・えへへへ・・」

 

鹿島さんに膝枕をして、たった1時間くらい。

なんかすっかり丸まって子猫みたいに私の膝に頬をすりすりしていて。

涎垂らしながら寝ちゃった。

最初会った時は濃厚にサキュバス感が漂っていた笑顔からエロさがなくなって。

なんかほんと、無垢というか、見た目通りの無邪気さが戻って来た気がして。

私は嬉しかったんだ。

仲良くしたいってのは別に体だけの話じゃなくて、心も通い合わせたくて。

何気ない会話をして、お互い笑って、守りあって、支えあって。

皆と、そういう夫婦になりたいんだ。

だってうちの子達、皆可愛いんだもん。

 

「おやすみ、鹿島。良い夢を見るんだよ」

鹿島の頬に口づけを落とし、着替えだけ済ませて私も寝る事にしたんだ。

 

 

 

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