艦娘可愛いです。   作:銀匙

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【その42】

 

 

「榛名、只今戻りました!」

「おかえり。緑茶で悪いんだけど淹れておいたよ」

「榛名、感激ですっ!いただいてもいいですか?」

「どうぞどうぞ」

 

「提督の淹れるお茶は、甘くて柔らかいですね」

「そう?沸騰したお湯を直接使わないようにしてるだけなんだけどね」

「紅茶とは作法が異なりますからね」

「えっと、紅茶はガンガンに沸騰させたお湯を高さを付けて一気に注ぐんだよね」

「はい。なるべく多くの空気を混ぜた方が良いと金剛お姉さまは仰ってます」

「そっか」

「・・・どうかされましたか?」

「あ、うん。榛名はどうして間宮さんが私を避けてるというか怯えてるか知ってる?」

「・・内緒にしてくださいね」

「うん」

「間宮さんは、受刑歴があるんです」

私はほぼ察した。

「男に冤罪を擦り付けられた、かな?」

「はい、それも面白半分に、です」

「は?」

「間宮さんは当時、鎮守府を回っては甘味等を提供する、まさに給糧艦として活躍されていたのです」

「うん」

「ですが、ある大きな会合に特別ゲストとして招かれた男性客が間宮さんにその場で全裸になるよう言いまして」

「・・」

「間宮さんは必死に断ったのですが、その男性客がそれなら牢に入れと笑いながら命じられました」

「・・」

「結果、間宮さんは給糧艦としての役職を剥奪され、半年の懲役に服し、その後本営付となりました」

「・・」

「長門さんが間宮さんに鎮守府への着任を打診した時も、敷地内に男性が居ると聞いてかなり揉めたそうです」

「・・」

「ですが、前の提督の時はほとんどお部屋から出られなかったので」

「当然食堂にも来ない」

「はい、ですから平和だったのです。あの、すみません。決して今の提督を責めてはいませんので」

「いや、うん。それならあの時間宮さんがああなったのは解る。申し訳ない事をしてしまったなあ」

「間宮さんは、提督とは過去1度もお話になった事がありません。だから余計に男性客との違いが見えないのかと」

「・・榛名」

「はい」

「封筒と便せんはあるかな?ちょっと可愛いのが良いんだけど」

「・・榛名のコレクションがありますから持ってきますね」

「うん。ありがとう」

 

 

「これなんかどうだろう。間宮さん嫌いかなあ?」

「良いと思います!」

榛名コレクションの中から私が取り出したのは、スズランの絵が描かれた便箋セットだった。

「花言葉としても、これが良いな。榛名、これ貰えるかな」

「はいっ」

私は机に向かうと、しばらく目を瞑って文章をまとめてから書きだした。

榛名は声を出さず、そっと見守ってくれていた。

 

 

「あ、えっと、榛名」

「はい!今でしたら食堂も営業を終了している時間帯ですから、渡してきますね」

「封筒を糊付けしてないから、榛名が間宮さんの目の前で開けて、便箋以外入ってない事を見せてやってくれないか」

「・・かしこまりました。榛名、行ってきます」

「あ、もう1つ。榛名も必要なら読んで良いから」

「・・はいっ」

 

 

-----

 

 

間宮は食堂の入り口で、営業中の札を準備中にかけかえた。

「ふう」

今日も一日、無事に終えられました。

ふと足音に振り向くと、榛名が小走りに近づいてきます。

なんでしょう?おむすびでも御所望なのでしょうか。

 

「どうしました、榛名さん」

「間宮さん」

「はい」

「・・あの、提督からお手紙です」

「!!!!!」

「違うんです間宮さん!提督は間宮さんを傷つけるつもりはありません!」

「あ・・で・・でも」

「見てください。提督は榛名に、あえて封をしないからと言ってこのまま渡されました」

「・・」

「そして榛名に、封筒から手紙を出して、便箋以外一切入ってない事を見せて欲しいと」

「・・」

「便箋以外入ってないですよね?」

「は、はい」

「では、お手紙をどうぞ」

間宮は榛名の顔を見て、便箋に目を落とし、再び榛名を見た。

「・・こっ、怖くて、開けないので、受け取らなくても同じです」

榛名は一瞬考えたが、にこっと笑った。

「間宮さん!」

「はい」

「榛名、お供します!」

「はい?」

「食堂で一緒に読みましょう!」

「で、でも、それは提督に失礼では」

「必要なら一緒に読んでも良いと提督は仰ってました」

「・・」

「さぁ行きましょう間宮さん!」

「・・はい」

 

食堂の一角のテーブルに並んで座った二人。

間宮は畳まれた便箋を手に、しばらく迷っていたが、榛名が手を重ねてくれたことで頷き、ゆっくりと開いた。

「・・・」

便箋にはこう書かれていた。

 

 間宮さんへ

 先日は貴方の事情も知らないまま足を運んだこと、本当にごめんなさい。

 そして同じ男として、あなたにお詫びしたい。

 私はこの鎮守府に居る皆と仲良く暮らしたいと思っていますが、

 同時に皆さんの意思も尊重したいと思います。

 私を見て辛い事を思い出すのは可哀想ですから、私は食堂に足を運びません。

 ただ、間宮さんの作ってくれるお食事はありがたく頂いてます。

 いつもありがとう。ごちそうさま。

 

便箋を持つ間宮の手が震え始めたのを見て、榛名は囁いた。

「提督は、このスズランの絵を見て、花言葉としても良いねと仰ってました」

「たしか、スズランは・・・」

「はい。幸福の再来です」

 

間宮は俯いた。

 

「すみません。ここで私が、食堂にお越しくださいと言えれば」

「大丈夫です。提督は解ってくださってます」

「・・提督には、ありがとうございます、と」

「はい」

「・・・男の人でも、心を持つ人は居るのですね」

「ええ、榛名の旦那様ですから!」

榛名は、間宮が少しだけ笑みを浮かべたのを見逃さなかった。

 

 

-----

 

 

「榛名!只今戻りましたっ」

「おかえり。難しい役を頼んでしまったね」

「榛名は大丈夫です!それに」

「それに?」

「間宮さんから伝言で、“ありがとうございます”だそうです」

「・・ねぇ榛名」

「?」

「今のこの世は、男を守りたいのかな。それとも、男女を分断したいのかなあ」

「榛名には解りません。解りませんけど」

「うん」

「私は!提督ととっても仲良くしたいです!」

「・・ははっ。そっか。とっても仲良くしたいんだ」

「はいっ」

「うん、私も榛名と仲良くなりたい。よし榛名、今夜は榛名のリクエストを聞いちゃうよ」

「はっ!?は、はは、榛名のいう事を何でも聞いてくださるんですか?」

「随分拡大解釈したね」

「徹夜はありでしょうか?」

「少しは寝かせてください」

「身籠っても良いのでしょうか?」

「それは構わないよ。結婚するつもりだし」

「はうっ!」

「言ったよね?今鎮守府に所属してる皆と結婚したいって。嘘じゃないからね?」

「あのっ、あのっ!」

「うん」

「・・・道具はありでしょうか?」

「ものによります」

 

榛名が疾風のように部屋から消え、一瞬で戻ってきたんだけど、目が血走ってるんだよね。

そういや金剛が妄想で鼻血出して倒れてるって言ってたっけ。

まぁ身体損壊とかにつながるような物じゃなきゃ良いんだけど・・・

 

 

 

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