「あっ金剛お姉さま、比叡お姉さま、おはようございます。どうしたんですか?」
ドアがノックされた時、私は丁度洗面所で顔を洗っていたので、榛名に応対してもらった。
榛名の声からすると金剛と比叡のようだ。何かあったかな?
「やぁ金剛、比叡、おはよう。なにかあった?」
私が声をかけると、金剛も比叡も真っ赤になって視線を合わせようとしない。
私と榛名が首を傾げていると、おずおずと比叡が口を開いた。
「え、えっとですね司令」
「うん」
「ず、ずず、随分榛名との一晩はフィーバーされてましたよね」
「へ?」
金剛が自分の両手の人差し指をつんつんとあわせながら、つぶやくように言った。
「は、榛名の声が、過去最高に寮まで届いたのデース・・」
「よ、よよ、喜んでるのは解ったんですけど、それでもちょっと心配で・・」
私はポリポリと頬を掻いた。
昨夜は前戯からド変態目隠し絵筆プレイだったし、榛名絶叫してたもんね・・・
ドンマイと言いかけて榛名を見て、私は目が点になった。
「ちょ!?榛名何やってるの!?」
「提督っ!手を放してください!はっ榛名!恥ずかしすぎて生きていけません!」
「ちょ待って!短刀なんてどっから出したの!金剛!比叡!ボーっとしてないで止めるの手伝って!」
「はっ榛名No!ダメー!」
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「うー・・恥ずかしいですぅ」
「でも榛名さんや」
「はぃ・・」
「とっても可愛かったよ?さらに惚れちゃった」
「・・・・うそ」
「うそなもんか。素直に気持ち良いって言ってくれるのが一番嬉しいんだよ?」
「はっ・・榛名が気持ち良くなるのが、嬉しいのですか?」
「当たり前だよ。大好きな奥さんが喜んでくれるんだもん」
「榛名っ!とってもヤル気が出ました!今なら離島棲姫の服をひん剥いてこれそうです!」
「それはただの変態だからちゃんと仕事してきてね?」
「かしこまりましたっ!」
私はルンルンと上機嫌になった榛名からこっそり離れ、金剛に近寄って耳打ちした。
「ね、ねえ、そんなに大声量だった?」
「榛名の声は良く通るのデース」
「うん」
「声量自体は他と同じかもしれませんが・・その」
「うん」
「な、内容が、ハッキリ聞き取れましテ」
「お゛う」
「小筆が気持ち良すぎますとか、ローターで飛んじゃいますとか、その、あまりにも具体的でですね・・」
「あー」
「挙句の果てに何度も何度も榛名イッちゃいますと聞こえてくるので、ついつい数えてしまいましタ」
「・・・」
「提督」
「はい」
「榛名は初めてだったのに一晩で27回もイかせるのはさすがにヤりすぎですヨ?」
「ごめん。止まらなかった」
比叡がぶるりと震えた。
「まっ、まさか私の時も道具攻めをなさるおつもりですか?」
「あれは榛名が持ってきたから使っ」
「榛名が?」
「持ってきた?」
「「道具を!?」」
しまったと私は手で口を押さえたが時すでにお寿司。
金剛と比叡から質問攻めにされた榛名は
「やっぱり!私!死にます!止めないでください!」
と、短刀を再び振り回すことになったのである。
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「昨夜もお楽しみだったよう」
「ストップだ長門。それ以上いけない」
「なんだというのだ」
「榛名が恥辱で死んでしまうから」
「攻めまくったのは提督だろうが、ちゃんと責任取ってやれ」
「もちろん結婚しますよ?」
「そうではなく、甲斐性を見せろ」
「具体的には?」
「そっ、その、なんだ。積極的に奥さんに話が行かないように庇うとかだな」
「その話はあとでじっくりしようか。だが今は先に榛名の用事だ」
「うん?榛名は今日は出撃だろう?何か問題でもあるのか?」
「榛名!今日は一杯敵をシバき回したいです!」
「えぇ・・」
「ですから!ホネのある海域をお願いしますっ」
「じゃあ中部でも行ってみるか?丁度ピーコックの辺りを大人しくさせておこうかという声があってな」
「お任せくださいっ!足柄さんと鳳翔さんに来ていただきますねっ」
「過剰戦力じゃないか?」
「徹底的にシバき回したいんで!」
「わ、わ、解った解った。任せるから行ってこい」
「勝利を!提督に!!行ってまいります!」
鼻息荒く執務室を出ていく榛名を見送った後、私は長門の方を向いた。
「さて長門さん」
「なんだ」
「甲斐性の具体例を教えてください」
「具体例だと?」
「いやほら、榛名に話が行かないようにったってですよ?」
「ああ」
「例えばこれから私が執務室で長門とイタしても話題にはなる訳ですが」
「やめろ私だって奥さんなんだぞ」
「だから、誰の目をどうしたらいいのかって話です」
「まぁ正直な話、今回の件で盛り上がってるのは金剛と比叡だからな」
「今朝突撃されたよ」
「霧島の時も同じような反応をするだろうよ」
「仲良いよね」
「だから何とかしろ」
「どうすりゃいいのさ。金剛と比叡と言えばお茶会かな?」
「そういえば今日じゃないか。肝心の榛名は欠席だがな」
「・・ねぇ長門さん」
「やめろ。私も思い至ったがさすがにその可能性はゼロだろう」
「ほんとに?榛名が間に合わないと思う?」
「さすがに中部に行って帰ってきて15時は間に合うまい?」
「だといいね」
「人を不安にさせるな。ほら仕事を始めるぞ」
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その後は特に何事もなく順調に時は進み。
「そろそろ14時半だね。15時で一旦抜けるけど、私の書ける書類残ってる?」
「あるにはあるが、結果報告待ちだから夕方か明日でも良い」
「・・そういや大淀さん」
「はい、なんでしょうかご主人様」
「出撃していった榛名達から連絡あった?」
「それが、途中で1度だけ足柄さんからありまして」
「えっなにその不穏な空気。誰か怪我したの?」
「いえ、そうではなくてですね」
「う、うん」
「榛名さんが一人で全部やってしまうからつまらないと」
「へ?」
「なので海域全部掃除してくるわと仰って通信が切れまして・・」
「・・・ねぇ長門」
「ああ」
「ちなみにさ、普通、普通はだよ?帰ってくるとしたら何時くらい?」
「早くても日は没するだろうな。羅針盤の通りに進めばの話だが」
「じゃあ最初からローラー作戦の場合は」
「先日の鳳翔のようなハッスルぶりなら・・エリア自体は狭いからな・・」
3人でなんとなく部屋の柱時計を見つめた時。
コンコンコンコン!
カチャッ!
「第1艦隊旗艦榛名!無事作戦終了した事をご報告に上がりましたっ!」
「「「やっぱり」」」
「????」
「あ、いや、こっちの話だよ。えと、負傷した子は居る?」
「すみません。榛名だけかすり傷を負ってしまいました」
長門が頷いた。
「そうか。まぁ放置しても意味はない。入渠してくるがいい」
「あ、あの、報告書はこちらに」
大淀が受け取る。
「確かに頂きました」
私は長門の方を向いた。
「えっと、ちょっと早いけど、出て良いかな?」
「ん?どうした」
「榛名に付き添ってから行こうと思って」
「時間がかかるようならバケツを使って構わんぞ」
「ありがと長門。よし榛名、行こうか」
「えっ?はっ、榛名はだいじょ!!!?!?!??」
私は多分、所属艦娘の初めての負傷という事態に気が立ってたんだと思う。
羽根のように軽い榛名をひょいと抱え上げる、いわゆるお姫様抱っこの姿勢を取り。
一目散に工廠へと走ったんだ。
工廠に着くまで榛名は一言も声をあげなかったし、私も妖精さん達にバケツの利用許可を含めて頼んだだけ。
でも榛名を調べた妖精さんが苦笑しながら5分もかからないからバケツなんざ要らんって言うのに頷いただけなんだ。
それでも直るまでの間、多分私は檻の中のクマみたいに見えたんじゃないかな。工廠のすぐ外でうろうろしてたから。
「あの、榛名、も、戻りました」
「おかえり榛名。まだ痛む所とかはないかい?」
「ええ。提督は優しいのですね。榛名にまで気を遣ってくれて」
「奥さんが怪我したら心配するのが旦那ってもんだよ。良かった」
「・・それに」
「?」
「提督の一生懸命走るお姿を至近距離から拝見出来て、榛名・・どうしようもなく幸せです」
「えっ!?あ、あーいやー」
「たくましい腕で全身抱きしめられて、すっ凄くイケナイことなのですけど、榛名、濡れちゃいました」
「ええっ」
「あの・・これからお茶会・・ですよね」
「そうだよ。招待してもらえたし。一緒に行こうよ」
「榛名と・・手を繋いでもらえますか?」
「もちろん」
だから二人で手を繋いで行ったよ。
これ以上何もあって欲しくないから普通のつなぎ方をしたんだけど。
「♪」
榛名の方から、じわじわと指を絡めてきたんだ。