艦娘可愛いです。   作:銀匙

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【その8】

「貴君は何を考えてるんだ」

「・・・」

「別に責めてはいない。聞き取りした艦娘達は皆週4日の楽な勤務だと口を揃えているからな」

「・・・」

「そもそもなんだ週休3日制って。私より待遇良いじゃないか」

「・・・」

「それに深海棲艦を解体すると資源が手に入るなんて初めて聞いたぞ。どこで知った?」

私は軽く溜息をついてから口を開いた。

「・・・効率的な運営って、なんだと思いますか?」

「適切な軍事力で無駄なく攻略していくことだろう?」

「資源豊富で大勢の仲間がいて、失敗した時にすぐに代わりが見つかることですよ」

「・・うん?」

「能力の高い子が少数精鋭で次々海域を開放していくのは、うまくいっている時は良いんです」

「ああ」

「しかし戦闘で傷ついたり、ちょっとテンポがズレると途端にダメになるんです」

「・・・」

「その時すぐ誰かが代わってくれたら簡単に持ち直せるんですよ」

「・・・」

「それに、唸るほどある資源から必要な量を補給するのに罪悪感はわきません」

「・・・」

「しかし、燃料タンクの底を匙で掬ってかき集めてる様子を見てあと少し欲しいとは言いだしにくい」

「・・・」

「それがとどめの一撃、あと一歩の追跡、決定的な勝敗の明暗を分けるんです」

「・・・」

「なんですか本営の指導要領は。あまりにも計画や運用がカツカツすぎる」

「・・・」

「仰る通り補給船なんて名ばかりですよ。教わった量の補給なんて1度たりとも来ませんし」

「・・・」

「だから集めることにしたんですよ」

「・・・」

「妖精達に聞いて敵艦を拿捕なり絞ることで各種資源を得られると知りました」

「絞る?」

「それに、深海棲艦を解体してるとたまに得られる球を建造機に入れたら艦娘が出てくるんです」

「えっ」

「その時資源は必要ないんです。代わりに艦種も何も選べませんけどね」

「・・・」

「加工は必要ですが、軽巡型や重巡型の深海棲艦の兵装から取った弾薬は我々も使える」

「・・・」

「軽空母型や空母型を鹵獲し、敵航空機をスクラップにすればボーキサイトが得られる」

「・・・」

「資源を、艦娘達を、そうやって得てきたんですよ。コツコツコツコツ地道にね」

「・・・」

「艦娘が50人を超えた時に週休3日制にしました。それで回せますからね」

「・・・」

「資源採取、倉庫荷役、休み、もう1度繰り返したら次は休みが2日です」

「・・・」

「大掛かりな攻略をするときはローテーションを変えて全員で取りに行きます」

「取りに行く?」

「資源をですよ。我々にとって攻略とは海域の奪還より資源獲得なんです」

「・・・」

「そうして目に見える成果として資源を積み上げて今に至ります」

「・・・」

「結果的には敵艦の撃破と海域解放を行っている。命令通りですとも」

「・・・そうか」

「わずかばかりの補給船で補給された資源はきちんと管理してますしね」

「だから減らない、か」

「妖精達が加工時の参考用に少量使用しているようですがね」

「なるほど」

「きちんと管理して、きちんと報告してますよ。補給された分は」

七條司令官は倉庫の中の資源を顎でしゃくった。

「あっちを報告した所でロクな事にならない、そうだな?」

「ええ。安全性確認の為とか研究の為とか言って持ち去られ、誰かの私腹が肥えるだけです」

「だろうな」

「それなら最前線の皆で使ってしまった方がマシです」

「だから何度も燃料や鋼材を手土産に寄越したんだな」

「七條司令官の鎮守府だけではありませんよ。ここら近辺の鎮守府は全部です。皆困窮してますから」

「そう・・だな・・正直とても助かったよ」

「それで、私を告発されますか?」

七條司令官は苦虫をかみつぶしたような顔で私を見た。

私は肩をすくめて七條司令官を見返した。

どこを向いてもどうしようもないディストピアでやれることはやった。

そして限界も感じていた。

これ以上は共犯者が必要だ。同じ軍属で、解っていて黙っててくれる共犯者が。

ダメならその時は、懐に忍ばせた32口径で人生を終わらせよう。

死ぬまで拘束された生活なんて嫌だから。

 

私の背後では、いつの間にか手を止めた艦娘や妖精達がこちらを見ていた。

静まり返った空間を切り裂いて、七條司令官の重い溜息が木霊した。

 

「・・わかった。私は何も見なかった」

「はい。ここには何も入ってない倉庫しかありませんし、所属艦娘は駆逐艦が6隻いるだけです」

七條司令官がちらりと艦娘達を見回すと、制帽を目深に被った。

「これは独り言だがな」

「ええ」

「先日、うちの艦隊が敵艦隊から離脱する時、正体不明の爆撃機から支援攻撃があったそうだ」

「ほう」

「おかげで大破状態の旗艦を含めて全艦鎮守府に帰還出来たよ。ありがたいことにな」

「それは良かったですね。そろそろ夕食時です。食べて行きませんか?」

「頂こうか」

「では食堂へ」

 

 

-----

 

 

「おまえはどーして私を悩ませるんだー!」

「七條司令官殿、あんまり抱き着かれると私も悩ましいんですが」

「でも燃料くれるのすきー」

「解りました、解りましたから」

「男らってこと誤魔化すのらいへんだったんだぞ~!」

「その節はお世話になりました」

「でも鋼材くれたからゆるす~」

「許された」

「今日の報告書どう書けっていうんら~」

「ですから駆逐艦6隻で頑張ってるみたいですと」

「でも燃料くれるのすきー」

「あーもー・・・お部屋に帰りますよ~」

「ぐぅ」

「急に寝るなー重いだろうがー」

 

宴席を兼ねた夕食会としたのを痛烈に後悔しつつ、私は七條司令官に肩を貸した。

なお、神通はとうの昔に川内の部屋へと行ったらしい。

そんなに私と身長差が無いし、軽かったので助かった。

 

「陽炎すまん、客室まで先導して」

「はいはーい、ゆっくり歩くから落ち着いて歩いてね!」

「苦労かけてすまないねえ」

「それは言わない約束だよおとっつあん」

「よっ・・と・・」

 

陽炎も酒に付き合っていたが、そんなに酔っていないようだ。

時折七條司令官の腕を抱えなおしながら、3人でゆっくり歩く。

正確には七條司令官をほぼ引きずってるけど。

 

「・・なぁ陽炎」

「んー?」

「ほんと、着任の日から今日までありがとな」

「なぁに?改まっちゃって」

「普段は・・誰かしら居るからさ」

 

少し前を歩いていた陽炎がくるりと振り返った。

 

「居るから?」

「一度与えた印象は、変えない方が良いかなと思ってね」

「奇抜な発想でひょうきんで掴みどころのない男ってイメージ?」

「あー・・まぁそうなるかな」

「別に変えればいいじゃない。思い出したーとか言っちゃえばいいのよ」

「実際、色々思い出してはいるんだけどね」

「名前とか?」

「いや、名前とか交友関係はさっぱりでな・・」

「普段の考え方とか?」

「あぁ、そうだな」

「司令は、本来はもうちょっと静かな感じよね?」

「そうだな。ひょうきんではないと思う」

「別にそれはそれでいいと思うし・・」

「なんだい?」

「多分みんな分かってるわよ?雰囲気変わったの」

「そうか。司令官のプライベートなんて興味ないかと思ったんだが」

「私達に辛くあたる司令ならどうでも良いけど、貴方はそんなことないじゃない」

「そうか?川内や陽炎には苦労かけたと思ってるよ」

「最初の頃のこと?資源なかったんだからしょうがないじゃない」

「んー」

「補給する燃料もなくごめんごめん言われるよりずっと良いわ」

「妖精さんが方法を教えてくれたからなあ」

「聞いたのは司令じゃない」

「他の人は聞かないの?」

「聞かない、じゃなくて、聞けない、よ。普通は聞いてくれないわ」

「そっか。じゃあ七條司令官は苦労してきたんだな」

「多分ね。あ、用意してた客室はここよ」

 

部屋に入ると、七條司令官の靴は陽炎が脱がせてくれた。

二人がかりで七條司令官をベッドに横たえる。

私は額の汗をぬぐった。

 

「やー、緊張するなあ」

「何が?」

「女の人に触ること」

 

陽炎がこてんと首を傾げた。

 

「・・・なんで?」

「柔らかいし、良い匂いするし、色々当たるから」

「・・・・・」

 

陽炎は怪訝な表情をしていたが、ふいにニタリと笑って腕に抱き着いてきた。

 

「えいっ!」

「おいおい何してんだ」

「あててんのよっ!」

「意味わかってるのか?」

「解んないけど抱き着けば当たるかなーって」

「ええい離せ離さんか!」

「司令顔真っ赤よー、当たってたんだー!」

「あーもう!あーもー!」

「あはははっ!」

 

陽炎ってちっこいのに、どうして既に女の子なんだよもー!

おっきする前に離せよー!

 

「あんまりくっついてるとちゅーするぞ!ちゅー!良いのか?!」

 

私は腰を屈め、陽炎に顔を寄せながらわざとしかめっ面をしてそう言った。

当然、すぐに飛びのいて離れると思ったのに。

 

ちゅっ

 

「しちゃったわねっ」

 

赤面する私と、ニッと笑う陽炎の笑顔が両極端で。

私は二の句が継げなかったんだ。

 

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