「おはようございます・・」
「おはよう大淀・・どしたの?なんか凄いやつれてるけど」
「いえ、あの、何と言いますか」
そう言うと大淀は、ちらと傍らに眠る那智の寝顔を見た。
私は首を傾げた。
「あ、もしかして昨晩うるさかった?」
「は?」
「那智と二人で0時回るまで飲んで、その後部屋までなんか歌いながら帰って来た記憶が」
「いえ、それは良いんです」
「・・」
ってことは・・あ。
「もっ、もしかして、朝のおせっせタイムに・・」
大淀はこくりと頷いた。
「一番良いとこと思われる時に丁度総員起こしの時間が重なりまして・・」
「あちゃー」
「・・その、ドアの前で一生懸命我慢するの辛かったです」
「ん?声が気まずい方じゃなくて?」
「は?別に那智さんの喘ぎ声など問題ありませんが?」
「え?しかも私の声?」
「そうですよ。ねちっこくいやらしい声でええのんかええのんかと言葉攻めしてらして」
「そんなこと言ってたっけ?」
「私はきっちり服着て起こしに来てるんで、交~ぜてとか言えないじゃないですか」
「二人同時は確実にアウトな自信がある」
「ですから一生懸命寂しいのを我慢して、我慢して・・部屋に戻ったんです」
「あ、あー」
「確かに思う通りになさってくださいと申し上げましたけど」
「うん」
「その、なんだかご主人様と出来ないのが、すごく寂しかったです」
「大淀」
「はぃ・・起こしに来たのだから仕方ないって事は解っているのですが」
「おいで。ぎゅっとするくらい、いいでしょ?」
ベッドの上で半身を起こした私に、大淀はそっと抱き着いた。
「じゃあ、頑張って我慢した大淀は今夜一杯優しくしてあげるからね」
「・・本当ですか?ご主人様」
「本当だとも」
「えへっ♪ご主人様、だーいすき♪」
那智は必死に寝たふりをしつつ、口から砂糖を吐きそうになるのをこらえていた。
おいおい、提督と大淀は毎朝こんなベタ甘な時間を過ごしているのか?
ピロートークどころじゃないぞ・・・
ま、まさか鹿島まで一緒なんてことはないだろうな・・
実際はそのまさか以上なのだが、那智がこの時知る術はなかったのである。
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「そっか、じゃあ那智は朝から出陣なんだね」
「ああ。まぁ近海哨戒だからリスクは少ないさ」
「油断大敵。気を付けてね」
「解ってる」
「じゃあ一緒に執務室行こうか。大淀支度できた?」
「問題ありません」
「よし。鹿島、行ってくるよ」
「行ってらっしゃいませ!」
その後執務室では那智はいつも通り凛々しくキリリと受け答えをしていたのだけど。
「行ってらっしゃい」
そう言った私の方に一瞬だけ視線をよこし、ぱちりとウインクしてきたんだ。
格好良いなあもう。なんだろう。妙高型って皆、宝塚系なの?
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そして昼時が過ぎ、夕方になり、とっぷりと日が暮れて。
「お、終わりで良い?これで終わりだよね長門?」
「ああ。これで終わり、だな」
「よっしゃあ・・おわったぁ~」
「大淀もさすがに疲れただろう?」
「多少疲れましたが、焼却処理の全数完了を確認しましたので安堵の方が大きいです」
「あぁ、まだそっちもあったか。すると今日は並行処理か」
「はい。昼過ぎまででしたが」
「さすがだな。鳳翔に知らせるのか?」
「はい。といっても速報は済んでいますが」
「では提督と鳳翔の店に行ってきたらいい。後は片付けだけだから私がしておこう」
「えっ良いんですか?」
「ああ。お疲れ様。提督もな」
「じゃ、お言葉に甘えまして。ありがとうね長門。また明日」
「ああ、また明日」
執務室のある棟を出ると、私は自然と背伸びをしていた。
「んー、ずっと机に向かっていると腰に来るねえ」
「腰痛にはお風呂と適度な運動がいいそうですよ?」
「じゃあ今夜は大淀相手に適度な運動しちゃおっかな」
「最大3セットしか出来ませんが?」
「射出15回を“しか”って言わないでください。というかそれは完全にオーバーワークです」
「ここまでくるとご主人様の上限が知りたくはありますよね」
「赤玉案件なのですがそれは」
「確かに出血すると1週間程度経過観察だそうですので、なかなかハードな事態ですよね」
「出ちゃった出血ならともかく、上限知りたくて、じゃあ情状酌量はなさそうだよ?」
「とりあえず鳳翔さんのお店に行きましょうか」
「そうだね」
「いらっしゃ・・あらあなた、おかえりなさい。大淀さんもご苦労様でした」
「今日はしっかり夕食って感じで、酒抜きでお願いしたいんだ」
「お体の具合が悪いのですか?」
「体調は大丈夫。書類仕事が多くて疲れたから負債を溜めたくないだけだよ」
「なるほど。かしこまりました。では美味しい晩御飯に致しますね」
「わーい」
「ふふ。あ、大淀さん、追加報告事項はありますか?」
「OO大臣の弟に関するネタが増えたくらいです」
「大陸とつながりでもありましたか?」
「ご明察です。カネの流れを含む決定的な証拠を押さえました」
「どうせあの大臣が死んだのですから立候補してくるでしょう。記録しておいて損はありませんね」
「はい。後は対象者全員の焼却を確認いたしました」
「一人くらい葬式待ちとか出るかと思いましたが」
「その辺は書類の手違いという事で、優先して燃やしておきました」
「なるほど、焼却ロボットへの指示書が間違っていたと」
「はい。なぜか偶然にも」
「最近めきめきと実力をつけていますね。何かありましたか?」
「力を付けたといいますか、ご主人様にAIDBを整理して頂きまして」
「・・そのような事が今のあなたに対して可能なのですか?」
「通常は絶対不可能と言われますが、ご主人様はたった1時間少々でこなされました」
「ほう」
「ですのでリソースが整理され、より簡単に使えるようになっています」
「大変良い事ですね」
「はい。ご主人様は私達にとって神です」
「鹿島さんも施されたのですか?」
「はい。鹿島の方が先でした」
「なるほど。医療系もですか?」
「全般、です」
「・・あなた」
その時鳳翔が心配そうな目で見てきたので、私は首を傾げた。
「なんだい?」
「その、大淀と鹿島にどんなことをなさったのですか?」
「鳳翔さんにしたのと同じ、膝枕だけど?」
「・・・・ひざまくら、だけ、ですか?」
「後は頭を撫でてあげた、かな」
「・・それは外部の人に言ってはなりませんよ、あなた」
「話す機会がないけど、その時は留意するよ」
「そんな事が知られたら足が腐るまでAIの膝枕をさせられますからね?」
「つくづく人権が無いなあ・・」
「女は多すぎるから、男は少なすぎるからと、四の五の言って庶民から権利を全部取り上げましたからね」
「人権があるのは?」
「政治家とやんごとなきなんとやらですかね」
大淀がニタリと笑った。
「誰であれ、私達からご主人様を奪った者が、12時間後に生きてるとは思えませんが」
鳳翔がほほほと笑った。
「大淀さん、そんなに長く生かすおつもりですか?」
をほほほほほほと二人が声を揃えて笑うもんだから、私も半笑いでへへっと合わせておいたよ。
多分この子達は本当にやる。
外で余計なこと、というか会話しちゃだめだなこりゃ。