艦娘可愛いです。   作:銀匙

86 / 112
【その53】

 

 

「らかりゃ!なん・・っで!お姉さまを最初にらかないのかと!」

「でもさ順番が」

「知ったことかぁ!」

「・・はい」

「・・金剛お姉さまがどれだけ変わる前の司令の為に苦労されたか、それが!今の司令に!解る訳にゃいでしょ!」

「そのとおりです」

「・・・解れっ!」

「えぇ・・」

 

はい。比叡さんべろべろです。

出てきたぬる燗の徳利をじいっと見つめてた時から嫌な予感はしてたんだけど。

まさか徳利一気に2本行くとは思わなかった!

私の反対側に座る陸奥いわく、今まで酒を飲んでるのを見た事が無いと。

あきまへん。こらあきまへん。

そして予想通り愚痴が止まらないよ!そして酔っ払い特有の超理不尽さ!

でも反論しようとすると鳳翔さんがじっと見つめてくる。

黙って聞けって事ですねわかります。

 

「金剛お姉さまは提督とよく知り合ってからえちちしたかったんですよぅ」

「・・」

「仲良くなって、おせっせして、一番最初にゴールインしたかったって」

私は比叡と反対側の隣に座る陸奥の肘をそっと突いた。

私は黙って聞くしかないけど、これは埒が明かないなと。

陸奥が日本酒の一番高い銘柄を指差し、私は頷いた。契約成立である。

鳳翔に注文を入れた後、陸奥は切り出した。

「ねぇ比叡」

「あい?」

「金剛は何を知ってくれないと付き合えないって言ってるのよ」

「知りましぇん」

「付き合わないと解らない。知ってくれないと付き合わない。それじゃ進展なんて無いわよ?」

「・・ってます」

「なに?」

「私は!解ってるんでしゅ!金剛お姉さまのはただの尻込みだって!」

「あー」

「でもすっごく言い難いんでしゅ。見合い断るのにあれこれ本当に苦労してきたんでしゅ!解れ司令!」

「すまん」

「謝るなら解れ!」

「とほほ・・」

がっくりと肩を落とすと陸奥が私の肩をそっとぽんぽんしてくれた。泣きたい。

「それで、金剛は尻込みって分かったけど、じゃあ貴方は何なのよ」

「・・待ってるんです」

「何を」

鳳翔から受け取った徳利からお猪口に注ぎながら聞き返す陸奥。

私にも一口・・あっ鳳翔さん冗談です冗談。

「金剛姉さまと司令がえちち・・・あーもう嫌!」

「今度はなにがどうしたっていうのよ」

「頭では!金剛お姉さまを優先してあげたいから我慢してるんでしゅ」

「ええ」

「でも、心では、ほんとうは、私はもうお付き合いしたいんでしゅ」

「・・」

「でもでも、お付き合いしたらきっと榛名と同じになっちゃう」

「あー、寮でもずっと提督提督言ってるわね・・」

私はそっと陸奥に肩を寄せて囁いた。

「(そうなの?)」

「(一日中)」

「(悪い事したかなあ)」

「(榛名はとっても幸せそうよ?)」

「聞いてるのかあ司令!」

「はい聞いてます!」

「塩梅!そう!塩梅ってもんがあるでしょ!」

「どういう意味でしょうか」

「初デートから帰ってきたら、ちょっとだけ頬を染めるくらいの変わりようとか」

「・・」

「何回かデートしたら初キッスしたとか!少しずつ今までと違う話題が増えて!」

「・・」

「順を!順を追って!だんだんああなってどろどろになるならまだ理解できましゅ!」

「・・」

「でも!たった1回!たった一晩でしゅよ!?なんであんなに一気に変わるでしゅか!」

「それを私に言われても」

「解れ!」

「えぇ・・」

陸奥がお猪口の酒をすいすい飲んでから言った。

「結局比叡も金剛と同じじゃない」

「にゃんですとぉ?」

「変わる事に尻込みしてるんでしょ。金剛にどうとか言ってるけど言い訳じゃない」

「・・う」

「なによ」

「うえええええん!ふえええええーーーーん!」

私の右には突っ伏して号泣する比叡、私の左では次の酒を指差してくる陸奥。

高い順に行くつもりですね?

私は陸奥に頷くしかなかったよ。

 

それから比叡はしばらく泣いていたが、鳳翔のこの一言で終わった。

「そろそろスッキリしましたか?比叡さん」

私はおろおろするだけだったんだけど、比叡はずずっと鼻をすすると

「・・あい。スッキリしました」

そう答えたんだ。

陸奥が肩をこつんとあわせ、次のメニューを指さす。

もう真ん中ぐらいまで来てますね。ええ。

「それで、どうするの比叡?このまま現状維持ってのもそろそろ限界でしょ?」

「あい」

「・・」

比叡は少し俯いていたけど、突然くいっと私の方を向いた。

「司令」

「はい」

「教えます」

「はい?」

「金剛姉さまが今まで何に苦労してきたのかを」

「う、うん」

陸奥が半目で比叡を見る。

「それでどうするの?教える前に全体を言いなさいよ」

「司令が金剛姉さまを知らないから進まないんです」

「・・まぁそうとしておくわ」

「だから全部教えて、司令が解ったと金剛姉さまに伝えます」

「それで?」

「・・・それで」

「それで?」

「・・・私が責任をもって金剛姉さまを後押しします!」

「それで?」

「・・そっ、そそ、それでその・・ます」

「聞こえないわよ?」

「・・わ、わわ、私も!おデートからお付き合いに!ゆくゆくはおせっせを考えたいかなと」

「ハッキリ言いなさいよ」

「前向きにお付き合いします!」

「解ったわ。まぁそんなところじゃない?提督」

「じゃあ金剛がどんなことしてきたか聞こうじゃないの」

私は決して気楽に言ったつもりじゃないんだ。

だけど私と比叡を除いた客が皆一斉に席を立ってお会計を始めたんだ。

「え?え?え?どうしたの皆?陸奥?」

陸奥はげんなりした顔でこちらを向いた。

「もう聞き飽きてるのよ。あ、お酒御馳走様」

「えっ」

一足先に会計を済ませた足柄が入口を開けつつ振り向いた。

「まぁ提督も1度は聞いておくと良いわ。比叡の金剛自慢」

「長い?」

「かなり。まぁ鳳翔さんがどうにかしてくれるわよ、きっと。じゃあね」

私が軽く息を吸った時、会計を終えた鳳翔が戻ってきた。

「提督、お茶をどうぞ」

「急須ごとなんだ」

「茶葉は外してありますから苦くなりませんよ」

「苦くなるほど長い話なんですね」

「飲み水は必須ですね」

「寝る時間あるかなあ」

「大人しく聞けば、あるいは」

私は溜息をついた。

 

 

-----

 

 

「それでですね、またそのババアが写真だけ変えて持ってくるわけでしゅよ!」

「・・ひどいな」

「あれだけ!あれだけ金剛姉さまが苦し紛れの断り文句を並べてるというのに!」

「だよね」

「何日もゴネたあげくやっと送り返せたと思ったら次の日には次の写真で来るんですよ!」

「別に写真変えたって変わんないよね」

「そーなんです!だからまた金剛姉さまは失礼にならないように隙を与えないようにと」

「もう断りの定型文考えたらどう?“当家とはご縁がありませんが別の縁談が成功することをお祈りいたします”とか」

「司令・・」

「え?」

「金剛姉さまがそんなことを試してないとでも?」

「あ、いえ」

「とっくりと説明してあげます!そこになおれ!」

比叡の非難する視線から目を逸らしたらジト目の鳳翔さんと目が合った。

「なぜ火に油を注ぎ続けるんですか?」

「えっ」

「執務時間に間に合うと良いですね」

「えっ」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。