私が自室に戻ってから少し経ち、金剛が部屋にやって来た。
配膳は二人で済ませたんだけど、金剛が少し目を丸くしていたんだ。
「じゃ、いただきます」
「イタダキマス」
「間宮さんはシンプルな材料を上手く使って美味しく仕上げるよね」
「Yes。とてもやさしい味がしマース」
そんな会話を続けつつ箸を進め、終盤で切り出したんだ。
「あ、金剛」
「ハーイ?」
「長門と大淀に聞いてね、特にしつこいお見合い依頼相手が2組居たんでしょ?」
「・・ハイ。居ますネ」
「あの2組、もう連絡してこないから心配しなくていいよ」
「へっ?」
私は私をぽかんとして見る金剛ににこりと笑って返した。
「私の奥さんイジメるんじゃないよって事で、大淀さんと悪巧みしたら見事に嵌ってくれてね」
「・・」
「2組とも逮捕されたからもう心配しなくていいよ。気づくのが遅くなってごめんね、金剛」
「・・テートク」
「うん」
「一体どうやったのですか?1組はある意味テートクのボス、もう1組は皇族ですヨ?」
「もうまとわりついてくんなって公文を電子送付したんだけど」
「ハイ」
「少しだけ書きかえれば結婚を承諾しますと読める文章でわざと送ったの」
「・・oh」
「で、そこにマザーAIが常時監視をつけて変造する瞬間を押さえて逮捕したってわけ」
「公文書は量子証明書がついてるので、必ず変造は見破れマース。なぜ引っかかったのでしょう?」
「寺社の方は資金繰りがショートしてて切羽詰まってたみたい」
「No・・テートクの財産目当てデスカ」
「皇族の方も表向きは健全だったんだけど、裏で結構借金があったみたい。後で分かったことだけど」
「・・」
「まぁもう懲役150年の実刑になったから、心配しないで」
「150年・・デスカ」
「デース」
「真似しないでくだサーイ」
「はい」
「・・確かにその2家からつい最近連絡が途絶えて、首を傾げてマシタ」
「うん」
「・・テートクの発案ですか?」
「うん。金剛が苦労してる事を、私がどうにかできるならって」
金剛は箸を置き、俯いた。
「・・テートク」
「うん」
「まっ・・前の・・テートクは、一声も返してくれなかったデース」
「うん」
「視線をこちらに向ける事も、私が何をしているかも興味はなく、ましてや私の抱えた困りごとを解決なんて」
「うん」
「それでも、そっそれでも、被害に遭い続けてきた男性を、守りたかったんデース」
「うん」
「でも今のテートクは、そうやって、優しくしてくれマース」
「うん」
「さっきもごく自然に配膳を手伝ってくれマシタ」
「うん」
「初めて飛行艇から降りてきた時も、ただいまって言ってくれマシタ」
「うん」
「気を失ってしまいましたケド、それくらいびっくりして、同じくらい嬉しくテ」
「うん」
「だから、だからこそ、嫌われたくないデース」
「うん」
「お互いに好きになって、仲良くなって、結婚したいデース」
「うん」
「私は、ゲームの金剛ではありまセン」
「うん」
「全然違う反応を示してしまうかもしれまセーン」
「うん」
「それでも、私と、お付き合い、してくれますカ?」
「ねぇ金剛。もし私がゲームの金剛と100%同じじゃなきゃ嫌だっていうならさ」
「ハイ」
「ラリアットされた時点で嫌って言うと思うよ?」
「ハウッ!?No!そうでしタ!」
「だから、そんなことしないよ。ゲームはゲームだし、ここに居る金剛とは別人。解ってるよ」
「・・」
「実際、付き合ってみると大淀も鹿島も、長門も、みんな違うんだけど、ここの皆の方がずっといい」
「・・ナゼデスカ?」
「生きてるから。毎日反応が変わるし、それは私のした事でも変わったりする」
「・・」
「毎日色々な顔を見られるし、色々な出来事に巻き込まれたりするけど、楽しいよ?」
「・・」
「だから楽しい毎日の輪の中に、金剛も入ってくれたら嬉しいな」
「・・Yes。私、提督と仲良くしたいデース」
「じゃあ入ってくれるんだね?ありがと!」
「・・・ナルホド。鳳翔の言う通りデシタ」
「鳳翔さんはなんて?」
「案ずるより産むが易しデース、と」
「まぁそうだよね。感覚が違う所はすり合わせていくことになるし」
「・・ふふっ。緊張して損シマシタ」
「とりあえずご飯食べちゃおうか」
「ハイ!」
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食堂から戻って来た金剛に、私は早速切り出した。
「金剛は日本の文化も知ってたりする?」
「Yes!もうずっと居るから知ってますネー」
「じゃあ確認なんだけど」
「ハーイ」
「野球拳に興味ある?」
「やきゅうけん?やきゅう・・けん・・あー」
「あ、ごめん。嫌いなら嫌いって言ってくれていいよ」
「あ、あの、あれですよネ」
「どれでしょう?」
「ジャンケンポーン!で・・」
「そう。負けた方が脱ぐんです」
「えっ」
「えっ?」
「ふ、服を脱ぐ?!」
「脱がせます。というか脱いでもらいます」
「ほんとの野球拳にそんなのアリマセーン!ハレンチデース!」
私は金剛を見た。顔を真っ赤にして両手で目を覆っている。
以前の私なら絶対にここで引いたはずだ。でも!
「二人っきりの時に、してみない?」
金剛は手の隙間からそっと目を開けてこちらを見た。
「・・ふ、二人きり、ですか?」
「うん」
「絶対録画とかしませんか?」
「しません」
「・・・じゃ、じゃあ、1回だけデース」
そういうことだったんだ!
「でね、トランプからJQKだけ2組取り出して・・」
「フンフン」
「で、一斉にカードを開くの」
「ナルホド!これなら後出し不可能デース!」
「でしょ?」
「やってみまショー!」
「じゃあ初めの1回は脱ぐの無しで、掛け声も皆で作った方で」
「Yes!我が鎮守府Originalで!」
「3・2・1!GO!」
「勝ちましター!」
「わーまた負けたー」
「次!次しまショー!」
「よっし!後ろ向いて!」
「また勝ちますヨー?」
「という感じ。どお?」
「楽しいデース!次は本番デース!」
「よっし!今度こそ負けないよー?」
「3・2・1!GO!」
「あっ・・」
「金剛さんや?」
「ま、負けましたから・・好きな部位を指定して良いヨ?」
「サラシで!」
「NOOOOOO!」
「サ・ラ・シ!サ・ラ・シ!サ・ラ・シ!」
「わっ!わかっ!解りましタ!解りましたから!テートクアッチ向くデース!」
「かしこまりました!」
「3・2・1!GO!」
「えっ・・」
「フッフッフ・・テートクゥ?まさか嫌とは言いませんヨネー?」
「どんとこいっ!」
「ズバリ!ズボンデース!」
「えっち!」
「ヘッヘッヘッへ・・・さぁ脱ぐデース」
「向こう向いてて!」
「仕方ないデース」
「3・2・1!GO!」
「NoOOooO!」
「・・金剛さんや、お召し物を」
「パッ!パンティは!パンティはダメぇ」
「何のために最後の勝負をしたと?」
「テートクヘンタイデース!」
「こっちだってパンツ一丁で勝負したのっ!」
「・・うー」
「パ・ン・ツ!パ・ン・ツ!パ・ン・ツ!」
「・・向こう向いてテ?」
「Yes」
「と、いうわけで、物凄い接戦だった訳ですが」
「悔しいネー!」
「えっと、風邪引くから布団被ろ?」
「一緒に被るネー」
「良いの?」
「テートクが風邪引くのはNoデース」
「じゃ、一緒に」
「・・テートク」
「うん」
「私、男女の営みって、もっと緊張するものだと思ってマシタ」
「そっか」
「こんなに笑って、excitingして、おバカな時間だとは思いませんデシタ」
「うん」
「・・仲良くって、こういう事デスカ?」
「別にこれじゃなくても良いんだよ。ただ話すだけでも、えちちなことでも」
「じゃあ」
「うん」
「テートクとこれから、えちちなコト、したいデース」
「いいの?」
「夫婦の時間がこんなに楽しいなら、Welcomeデース♪」
「わかった」
「・・もしゲームの私と違う反応でも、怒っちゃ嫌デスよ?」
「怒らないよ。大好きだよ、金剛」
「テートク・・」
ゆっくり倒れるように、そっと折り重なるように。
一緒に被ってた掛け布団の下で。
私達は1つに繋がったんだ。