「おはよう、長門、大淀」
「Goodmorningデース!」
「ああ、おはよう。提督、金剛」
「おはようございますご主人様、金剛さん」
朝の挨拶をかわしつつ、長門はじっと私達、というか金剛を見ていた。
「ドーかしましたカ?」
「・・提督との夜は、幸せだったか?」
「Yes!あれだけ悩んだのがウソみたいデース!」
「・・・だ、そうだ。良かったな比叡」
長門が自分の背後に声をかけると、長門の椅子の後ろから比叡がそっと立ち上がった。
金剛が目を丸くした。
「比叡!?どーしたのデース?」
「あ、や、金剛姉さまがやっぱり心配で」
「とっても楽しいNightでしたヨ!」
比叡はその場で金剛をじっと見て、目を離さずそろそろと金剛に近づいていった。
「も、元の金剛お姉さまと、あんまり違わない・・」
「Yes!比叡は良く見てマース!間違いないネー!」
比叡の目に涙が浮かんだ。
「よ、良かった。みんな榛名みたいになってしまうんじゃないかって心配で心配で」
えっと、ここまで言われる榛名って今どうなってるの?
「では私達は哨戒任務に行ってきマース!頑張るネー!」
「司令、あの、き、霧島の時にもよろしくお願いしますねっ!ではっ!」
賑やかな二人が執務室を出ていくと、長門と大淀がこちらを向いた。
「え、なに?」
「提督・・」
「ご主人様・・」
「うん」
「普通のお付き合いが出来たのか?」
「そうなるね。まぁおせっせしたけど」
「何セットくらいですか?」
「2サイクルだけだね」
大淀が心配そうな目つきになった。
「・・あの、ご主人様」
「うん」
「・・溜まってませんか?」
「いや、そんなこと無いんだけど、絞りつくした感もないなあ」
「なるほど」
「とりあえず仕事しよっか」
「ああ」
「・・・・」
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「よっし、今日も一日お疲れさん、と」
「ああ、お疲れ」
「お疲れ様でしたご主人様」
「大淀は支度出来た?」
「はい、大丈夫です」
「じゃ大淀、行こうか。長門、お疲れ」
「またな」
執務室を出た時に、私は大淀に声をかけた。
「ちょっと酒保冷やかしに行って良いかな」
「何かご入用ですか?」
「無いんだけど、何か無いかなって」
「良いですよ」
「らっしゃー・・あっ提督お疲れ様です!」
「こんばんは。ちょっとお邪魔します」
「あははは!はい!どうぞ!」
私が店内を歩き出した時、大淀は明石に近づいて行った。
「明石さん」
「なんでしょ?」
「先程後ろ手に隠したものは何ですか?」
「なんにもありませんよ?」
「私は常時視界を録画しているのですが?」
「くっ!」
「さあ出しなさい」
一方その時、私は店の隅に妖精さんが並んで手招きしているのが見えたんだ。
「どしたのこんなとこで?金平糖食べる?え?これくれるの?吸わないんだけど・・まぁ貰っておくよ。ありがと」
ふいっと3人の妖精さんは消えてしまって、私の手元にはタバコと灰皿、ライターが残された。
「なんだったんだろう・・そういえば普段の妖精さんと服が違ったような・・うーん」
そしてその頃、大淀と明石はヒートアップしていた。
「なっなんですかこのハレンチ極まりない商品は!」
「だから見せたくなかったのにぃ」
「“提督をにぎり!たい 味”ってどう考えても猥褻物ですよね!“味”の字がパッケージ回り込んで見えないですし!」
「ちっ違いますよ?ただのおにぎり弁当じゃないですか!包装はたまたまズレただけです!」
「真ん丸のおむすび2つの間に極太ソーセージって絶対そういう事ですよね!」
「ただそういう配置のお弁当です!ご飯とソーセージなんて普通じゃないですか!」
「じゃあこのおむすびのどこに鯛味があるんですか!」
「原材料表示をよく見てください!」
「・・・むっ」
「ほらここ!“だし(一部に鯛原料を含む)”って書いてあるでしょ!だしで炊いたご飯なんです!」
「それでここまで堂々と鯛味をうたうのは過剰宣伝です!」
「ちゃんと使ってるだけマシじゃないですか!」
「やっぱりタイトルありきの猥褻商品じゃないですか!だいたいなんで“お”が“を”なんですか!」
「別におにぎりを何と書こうが自由ですぅ」
「じゃーそもそもなんで最初に提督を付けるんですか!」
「提督とつけると皆の目を引いて売れるからです!何らやましいところはありませーん!」
「最初に隠した時点でやましいところありまくりでしょうが!」
「逮捕できますか?容疑は何ですか?“お”が“を”と書いてある罪ってなんですかー?」
「良いでしょう。出来れば使いたくありませんでしたが」
「なっなんですか」
「鳳翔さんにお越し頂いてこの場でジャッジしていただきます」
「すいません明石会で絶対売れると盛り上がって商品化されました。もう金型作っちゃったんで見逃してください」
「・・まったく。あまり過激になったら鳳翔さん呼びますからね?」
「ありがとうごぜえます」
特に買う物もなかったので大淀達に合流すると、大淀が私が持つ物に気が付いた。
「あら?ご主人様、それを買うんですか?」
「いや、妖精さんに渡されたんだけど・・ねぇ明石、これ商品なの?」
「いいえ、それはうちの商品ではありませんが・・」
「が?」
「少し確認したいので、預かっても良いですか?」
「良いよ」
「確かに。確認が済んだらお返ししますか?」
「いや要らないよ。どうせ私タバコ吸わないから」
「そうですか。では」
大淀は普段と違う明石の振る舞いに違和感を覚えたが、黙っていた。
「ところで提督は奥様方に宝石とかご興味は」
「帰りますよ提督。明石も売りつけようとしない」
「ちぇー」
「あはは。ごめんね明石。そうだ。ケッコンカッコカリの指輪手配してくれたんでしょ?ありがとね」
「あれは特急という事で実にボロ儲けさせて頂き・・ああいやこっちの話です」
「ははは・・じゃあ今日は帰ります」
「ありがとうございました!」
酒保を出た時、大淀が私に振り返って言った。
「ご主人様、今日は間宮さんのご飯にしませんか?」
「いいよ、お部屋でゆっくり食べようか」
「ではお持ちしてから部屋に戻りますね」
「解った。先に帰ってるからね」
「はい。それでは」
大淀は提督が角を曲がるのを見届けてから、再び酒保へと入った。
「らっしゃーせー・・って大淀かぁ」
「態度が変わりすぎよ。で、あれはなに?」
「んー・・多分なんだけどね」
「ええ」
「“神隠しのタバコ”って呼ばれてる、妖精の悪戯の品」
「神隠しのタバコ?」
「1箱吸いきると神隠しに遭うんだって。つまり提督が行方不明になるわけ」
「・・先程の弁当の件は不問といたしましょう」
「ありがとうごぜえますだ大淀上級捜査官殿」
「その代わり」
「明石会できっちり処分しておくだでな。ただ捨てるだけでねぐで身代わりが必要だっつぅ説もあるだでな」
「先程から何故そんな口調なのです?」
「なんとなく」
「まぁ良いです。しっかり頼みましたよ」
大淀と明石は小さく頷きあい、大淀は急ぎ足で食堂へと向かった。