「表で皆して何やってるの?」
「あらあなた、おかえりなさい。今七輪を起こしてるんですよ」
「あ、なるほど。サンマを焼くんだね?」
「ええ。新鮮なサンマを炭火で焼いたら美味しいですから」
「それは良いんだけど、なんか皆苦戦してない?」
「皆さん既に飲んでらっしゃって、上手に扇げないみたいで。私がやるしかないですかね」
「いやいいよ、鳳翔は他の支度とか切り盛りがあるでしょ。私がやっとくよ」
「・・・えっ?」
すると七輪に向かっていた面々が一斉にこちらを向いた。
「えっ何?怖いんだけど」
その一人、足柄がこちらを向いたままゆっくりと立ち上がった。
「て、提督が焼いてくれたサンマが食べられるの?」
「別にサンマ位焼けるけど?」
「お願いしますっ!」
そう言って皿に載せられた生サンマを差し出された。いや良いんだけど。
「私のも!」
「お願い!」
「します!」
そんな感じで差し出されたサンマを次々と受け取る事に。
鳳翔が苦笑しながら私の方を向いた。
「すみませんが焼いて頂いて良いですか?あなたと大淀さんの分も御持ちしますので」
「鳳翔の分も持っておいで。皆で食べようよ」
「あら、ありがとうございます。それではお言葉に甘えますね」
七輪に火のついた炭と熱で乾かした炭を置き、網を載せる。
充分火が安定したらサンマを並べては焼いていくだけだ。
「ご主人様、右は安定燃焼に入ったようです」
「左も良さそうだね。並べて行くね」
「はい!中央は引き続き扇ぎます!」
そして。
「はーい最初の2匹焼けたよ~、こっちから置いていくね~」
「待ってましたっ!」
「提督の初物頂くわっ!」
「なんか足柄の言い方がいやらしいんだけど・・まぁいいや。次焼いてくるよ」
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「はーい、これで全員だよね?お待たせ鳳翔、綺麗に焼けたからこれあげるね」
「あなた、ありがとうございます」
「七輪の火はどうしておく?」
「周りに燃え移るものはありませんし、そのままで構いませんよ。いただきましょうか」
「ごめんねーもう頂いてるわ~」
「いいよいいよ。アツアツ食べるのが良いもんね」
「お酒が進むったら!」
「よし、じゃあ私達も食べようか、鳳翔、大淀」
「ええ、ありがたく頂きます」
「はい、ご主人様!」
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サンマの塩焼きをつつきながら、その後も肴をメインに二人で盃を交し合う。
大淀と、鳳翔と、足柄を始めとした客の皆と言葉を交わし。
ゆっくり過ぎていく居酒屋の時間。
こういうのも楽しいよね。
「ごちそうさまでした」
「またいらしてくださいね、あなた」
鳳翔も最初はなかなか離れようとしなかったけど、最近は普通に見送ってくれる。
仕事が終わると嫁さんの誰か、あるいは・・
「ねぇ大淀」
「はい、ご主人様」
「鹿島の事なんだけどさ」
「どうかしましたか?」
「えっと、今は鹿島はケッコンカッコカリしてないじゃない」
「そうですね。着任時に長門さんのご配慮もありまして」
「聞いてみようかなって思うんだけど」
大淀は立ち止まり、軽く首を振った。
「ご主人様、鹿島はまず断る事はありません。ですからご主人様のお心で決めて頂いて構いません」
私は大淀を見て、その背後に視線を動かした。
「じゃあちょっと寄り道しようか」
「てーとくさん!大淀先輩!おかえりなさいっ」
「ただいま、鹿島」
「鹿島さん、お疲れ様・・って、どうぞ、ご主人様」
一緒に部屋に入ってきた大淀が、そっと私と距離を取る。
私がそのまま鹿島に近づいたので、鹿島は小首を傾げている。
「えっとね、鹿島」
「はい?」
「実を言うと、一番初めに鹿島と出会った時、ちょっと怖かった」
「へっ!?」
「なんていうか、獲物を見る捕食者の目って言うのかな、そんな感じがあってね」
「あわわわ」
「実際、多分出会った最初のおせっせが一番激しかったと思うんだ」
「そ、その節は我を忘れてしまって・・すみませんでした」
「でもその後、沢山お話したり、色々な形で触れ合ったりして、今は何というか、毒気が抜けたような気がするんだ」
「・・そう、かも、しれませんね」
「だからね鹿島、これを用意してみたんだ」
そういって私は、ケッコンカッコカリの指輪をポケットから取り出した。
「へっ!?で、ですが、そんな事なさらなくても私はもうてーとくさんのモノですよ?」
「所有権がどうのってのはちょっと脇に置いとく。私は鹿島と身も心も結ばれたい。それこそ他の奥さんのようにね」
「・・」
私はケースの蓋を開け、ケッコンカッコカリの指輪を鹿島に見せた。
「お願いだ、鹿島。ケッコンカッコカリ、受けてくれませんか?」
鹿島はじっと指輪を見て、不安そうに私を見上げて、もう1度指輪を見て、再び私の顔を見た。
両眼には涙がいっぱい溜まっていて。
「鹿島は・・私は・・汚れてると、以前言いました」
「うん」
「でもてーとくさんはそれでも受け入れてくださると仰ってくださいました」
「好きだからね。だから、これを貰って欲しいんだ」
「・・・はい。鹿島、永遠にてーとくさんにお仕えすることを誓います」
「嵌めるから、手袋を脱いでくれるかな?」
「はい」
よく見ると、鹿島は手袋を脱ぐのにも苦労するくらい手が震えていて。
私はそっと手伝って左手だけ脱いでもらって、その薬指に嵌めた。
「・・・」
鹿島は目を細めて微笑みながら見ていたんだけど、1つ、2つとその頬に涙が伝ってね。
「君に出会えて良かった。これからもよろしくね」
ぐしぐし泣く彼女を私の腕の中にすっぽりと納めることにしたんだ。
ふと大淀を見たら、なんだか花嫁の母親のように、嬉しそうな顔をしていたんだ。
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「あー、えっと、鹿島さん。かーしーまーさーん?」
「・・えへへ」
指輪を受け取ってくれて、それからかれこれ3時間が過ぎたんだ。
最初は涙を流していた鹿島だったんだけど、次第にポーっとした感じになって、笑みが増えて。
今はずーっと左手の指輪をうっとり見ながらえへえへ笑っている。
私は大淀に尋ねた。
「ねえ大淀、指輪を配った時、皆もあんな感じだったの?」
「あーそうですねえ・・ええ、そういう方もいらっしゃいました」
「例えば?」
「順当な方だと、加古さんでしょう」
「確かに。え?じゃ、順当じゃない人が居るの?」
「鳳翔さんがそういう方だったと申し上げるとどういう印象ですか?」
「え?順当だなって」
大淀がグイッと顔を近づけてきた。
「なぜです!?」
「えっ?だって鳳翔、最初にお店に顔を出した翌日に執務室に帰ろうとしたらさ」
「はい」
「2時間離してくれなかったんだもん」
「・・どういう状況なんですか?」
「最初の1時間は店から出てっちゃ嫌だって感じで」
「へ?」
「次の1時間は店のすぐ外から離れて行っちゃうの嫌だって感じで」
「あ、あの鳳翔さんがですか?」
「そうだよ。とっても可愛かったんだから」
大淀はつくづく、その瞬間に居合わせなかったことを後悔した。
普段の、あるいは万が一に遭遇した鳳翔からはおよそ想像のつかない態度である。
「へ・・へぇ~・・」
「そういえば明日は鳳翔さんの順番だったなあ」
「そうでしたね」
「鳳翔とサシで飲むのとか楽しそうだなあ」
「鳳翔さんが酔った所って見た事無いんですよ」
「へぇ。飲まないの?」
「お店を切り盛りしてる間は基本的に飲まれませんからね」
「そっか。まぁ酔って回せる店じゃないもんなあ」
「それもありますし、仕事中に不注意要因などまかりならんって感じですから」
「あぁそれは解る」
「なので、ちょっと想像がつきませんね。鳳翔さんとの一夜と言われても」
「そっか。で、それはそれとしてですよ大淀さん」
「なんでしょうかご主人様」
「さっきからずっと太ももで私のおっきさせようとしてませんかね?」
「おっきさせようとしています」
「スリットに手を入れたいのですが」
「幾らでもどうぞ」
「また声出さないようにしてくれる?」
「鹿島に気づかれないようにですか?」
「あぁ、それいいね。鹿島に気づかれずに耐えたらおせっせだ~」
私は本当に軽い気持ちで言ったんだけど、大淀さん真剣に我慢しようとするもんだからついつい本気を出してしまいまして。
「ん?てーとくさんに大淀先輩?なんで人が良い雰囲気で浸ってる隣でおせっせしてるんですか!?」
いやぁ、声を出さないように我慢させた大淀さん、よわよわで敏感で最高です。
何回も気をやっちゃってビックンビックン痙攣しちゃって。もう可愛すぎでした。