-アビドス校舎-
「着いた」
シロコちゃんに担がれて気づくと校舎に着いていた。
「い、いろんな近道を知ってるんだね。シロコちゃん」
途中でシロコちゃんが近道だからって道になってないようなところをいくからびっくりしたよ。金網を越えたり、人の家の塀の上を走ったりするなんて。
「ん、最短経路は常に考えてる」
「そうなんだ〜」
とその時、息を切らしたセリカちゃんが遅れて到着した。
「はぁ...はぁ、やっと追いついた」
「お疲れ」
「ほんと、ホシノ先輩もだけどシロコ先輩も体力おかしいわよね」
「鍛えてるから」
「いやいや、セリカちゃんも十分すごいと思うよ」
私なら多分通らないし倒れちゃうしね。
2年間で何変わってないかなとあたりをキョロキョロしながらグラウンドを抜ける。ちなみにどこに目があるのかは私にも分からないよ。多分上の方だと思うけど。
「あまり変わってないね」
「2年ならそこまで変わってないと思うわ。バリケードがあった時もあるけど」
そして玄関に入ると一つ驚いたことがあった。
「すごく綺麗になってる!私がいた時よりも掃除されてるし」
玄関から見える範囲は全て記憶よりも綺麗になっていた。
「ん、掃除頑張ったから」
「驚くのも無理ないわよね。結構頑張って掃除したわけだし。これでもまだ手付かずの部屋がたくさんあるけど」
それでも主に使う廊下は綺麗に掃除されている。
そういえばよく砂に足を取られて転んでたっけ。呆れ顔でホシノちゃんが毎回起こしてくれたんだよね。あの時もこれくらい掃除されてたら転ばずに済んでたのかな。
玄関には使用された形跡のある靴箱が幾つが見えた。
「そういえば今のアビドスには何人生徒がいるの?私の時はホシノちゃんと2人きりだったんだ」
「私を含めて5人、3年生のホシノ先輩、同級生のノノミ、1年生のセリカとアヤネ」
「2年生も1年生も2人ずついるなんてホシノちゃんはすごいなぁ。私の時は全然人が来てくれなかったのに」
そんな会話をしながら校舎を進んでいく、2年しか経っていないからだろうか、どこも私の記憶通りでまるで何も変わっていない。ホシノちゃんやその後輩が守ってくれていたのだと思うと胸に込み上げるものがある。
「ん、ここが今の私たちの活動場所」
「アビドス廃校対策委員会?」
部屋の看板にはそう書かれた紙が貼られている。
「ここって確か」
学園祭なんとかっていう部屋だったような。
「先輩なら知ってると思うけど莫大な借金とかアビドスにはたくさんの問題があるでしょ?それを文字通り対策する委員会ってこと」
分かってはいたけど2年経っても借金は相当あるみたい。あの額だもんね...
「うぅ、私がもっとしっかりしていれば後輩の負担も減ったのに」
「気にしないで、別に嫌でやってるわけじゃないし。解決が大変なのは身をもって分かってるから」
セリカちゃんの言葉に胸が熱くなる。
「ありがとう。セリカちゃんは優しいんだね」
「べ、別に...」
「ふふ、いいお嫁さんになれそうだね」
「な!?」
セリカちゃんは顔を少し赤らめていた。
「どうしてそうなるのよ!?ていうか、さっきもそうだったけどホシノ先輩みたいなこというんだからこの人は!」
「私が?ホシノちゃんは全然違うと思うけどなぁ。私と違ってしっかり者だし、言いたいことはまっすぐ言ってくれるし」
私と似てるなんて絶対言われないと思う。
「ユメ先輩がいた時に比べてホシノ先輩は変わったと思う」
シロコちゃんのその言葉にホシノちゃんが変わった原因って私...なのかな、なんて少し思ってしまう。
「どうしたの?」
「あ、なんでもないよ。変わっちゃったってことはキラキラした目のホシノちゃんを見れないのかなぁって」
「ん、その話知らないかも」
「ちょっと、2人で盛り上がらないでよ!私だけ仲間はずれなの嫌なんですけど」
「後でその時のホシノちゃんのこと教えてあげようか?」
2人がものすごい勢いで首を縦に振った。
自分のこと全然話してないのかなホシノちゃん。
「私からすると今のホシノちゃんが気になるから教えてね?この時間も寝てるみたいだし私みたいって一体どんなふうになってるの?」
ガラガラ
「扉の前でどうしたんですか?」
目の前の扉が開き眼鏡をかけた子が出てきた。
「2人とも、パトロールお疲れ様です〜。なにか変わったことはありましたか?」
その奥では金髪の長い髪をした子が椅子に座っていた。
「ん、途中でヘルメット団に襲われたけど返り討ちにした」
「あいつら勝手にアジトを作って縄張りにしてたみたい。懲らしめてきたわ」
「さすがです。ところでもう1人誰かいませんでしたか?」
「あぁ、えっと、なんて説明すれば...そういえばホシノ先輩はいる?」
「ホシノ先輩なら用事があるそうで先に帰りました盾は明日返してほしいと言ってましたね」
「分かった」
「そうなのね。1番いて欲しかったんだけど」
「なにかあったんですか?」
「...見てもらったほうが早いと思う。シロコ先輩」
「ん」
机の上にドンッと置かれたので話せばいいってことなのかな?
「ホシノ先輩の盾ですか?」
「2人とも、耳を傾けて」
首を傾げる2人に向けて声を出す。
「こんにちは!私の名前は梔子ユメ。アビドス高校の先輩...になるのかな?」
《!?》
「驚くのも仕方ないよね」
ポカンとした顔で2人は固まっている。しばらくしてメガネの子が口を開いた。
「...い、いまの声はいったい?」
「ん、ここから」
「シロコ先輩、嘘はよくないですよ?」
「そうですよシロコちゃん?」
「わかるよ、私だって盾が喋り出すなんて信じられないもん」
「...」
2人とも目をパチパチさせながらまた固まっちゃった。
「シロコちゃん、セリカちゃん、一体何が...」
=====================
「アヤネちゃんにノノミちゃんね。よろしく」
「よ、よろしくお願いします」
「よろしくです」
2人の名前を聞いてシロコちゃん達にした説明をもう一度した。
「やはり信じ難いですね。ホシノ先輩の盾になっているなんて」
「そうだよね。嘘だと思われても仕方ないよ」
「でも、今実際話してますし...」
「セリカちゃんも同じこと言ってたね」
「...」
「ノノミ、どうしたの」
「あ、いえ、その〜」
「ノノミ先輩も状況を飲み込むのに必死なんでしょ。シロコ先輩が冷静すぎるのよ」
そういうとシロコちゃんは首を傾げる。
「いえ、確かに混乱はしているのですが...なんていうか聞いた通りの人なんだなと思いまして」
「聞いた通り?」
そう聞き返すとノノミちゃんはクスッと笑って
「はい、ホシノ先輩が話していた通りの方なんだなと」
「ホシノちゃんが?」
思い出話は楽しそうに話してくれたみたいだけど私自身に対してはなんて言ってるんだろう?
う〜、怖くて聞けない。愚痴ばかりだったら立ち直れなくなりそう。
「もしかしてノノミ先輩しか聞いてないことじゃないでしょうね?」
「それは秘密ですよ。セリカちゃん」
「このまえ全部話すってホシノ先輩言ってたのに〜!」
「あの」
「ん、どうしたのアヤネ」
「とりあえずこれからどうするか決めませんか。いろいろと聞きたいこともありますし」
「そうそう、それを決めるために戻ってきたんだった」
「とりあえず座りましょうか」
私を机の上に置いて囲むようにみんなが座った。
「それでは今から緊急会議をはじめたいとおもいます...とは言っても何から話しましょうか」
「でもそうね。ホシノ先輩はいないし...そうだ!こんな時こそ先生の出番じゃないの」
「確かにその手がありましたね」
「でしたらもう夕方なので早めに連絡しておいた方が良さそうですね」
なんかみんな盛り上がってるけど議題の中心の私がなんにもついていけてないよぉ。
「ちょっとみんな、その先生っていうのは誰なの?」
「ん、私たちを何度も助けてくれた人」
「先生がいなかったら私たち今頃どうなってたか分からないわよね」
「本当に助けられてばかりで悪い気もしちゃいます」
「ですね」
みんなの話し方でわかるぐらい信頼されてる人らしい。そんな私もなぜかその名前に不思議と安心感のようなものを感じていた。ホシノちゃんにとって、そしてアビドスにとって大事な人だと。
きっとこんなことホシノちゃんに話したら"また騙されてるんですよ"なんて言われちゃうのかな。
「じゃあその先生?が来てくれたとしてなんていったら信じてもらえるかな」
「先生なら信じてくれる」
「いやいや、いくらなんでも盾から話しかけられるのは先生でもすんなり飲み込めないと思うんだけど!?」