「とりあえず、先生に連絡するわよ」
セリカちゃんは先生宛にメッセージを打ち始めた。
ちょうどその時、シロコちゃんが後ろからこっそり覗き込んだ。
「ん、セリカはなんて書くつもり?」
「うわっ急に覗き込むな!」
セリカちゃんがびっくりして携帯を手放すと、ちょうど私のところへと落ちてきた。
画面には
'緊急事態!!アビドスに来て!'
とだけ書かれていた。
「これで来てくれるのかな?」
「うるさい!簡潔な方がいいでしょ!」
「確かに他のことを書いても混乱するだけでしょうし。普段はともかく今回はセリカちゃんの連絡で問題ないと思います」
「そうよ、まったく」
といって私の上からセリカちゃんは携帯を取った。
「ってもう返信来てるじゃない!?いますぐ来るって」
みんなの恩人、そしてホシノちゃんの恩人ってことなら失礼がないようにしないとだよね。
「元生徒会長として完璧な挨拶を披露するね!」
「完璧な挨拶ってなによ...」
「聞き取りやすい自己紹介とか?」
「そこが良くても意味ないわよ!?」
ちなみにホシノちゃんへの連絡はアヤネちゃんがすでにやってくれていたみたい。
セリカちゃんはこんな時に限ってどこに行ってるのよ!って怒ってたけどね。
=============
セリカからの急な呼び出しに胸騒ぎがしつつ大急ぎでアビドスへと向かう。迷って倒れかけたこともあったが今では迷わずに行けるようになったものだ。
校舎の玄関を抜けて対策委員会の部屋へと走ると手前で微かに笑い声が聞こえてくる。
ということは大事ではないのかな?と少しだけホッとする。
さて、どんな用事だろうと扉を開けたとき。
「あなたが先生?こんにちは。いや、もうこんばんはなのかな?」
私は元気よく話す盾と出会った。
==============
「えっと...先生?」
部屋の扉の前で固まったまま、呼びかけても返事がない。
シロコちゃんが固まる先生の目線を遮るように手を振ると、はっとしたように先生は肩を振るわせる。
「...これはどう言う状況?」
「ん、ユメ先輩、盾、私たち困惑。かくかくしかじか」
シロコちゃんの説明に先生は一生懸命耳を傾けている。ずっとはてなマークが頭に出てきそうな顔だったけど。
「ありがとうシロコ。状況だけはわかったよ」
「ん」
シロコちゃんが少し誇らしげに見えた。
「それで君が...」
「はい、梔子ユメといいます」
そういうと先生はじーっと、シロコちゃんに抱えられている私を見つめてきました。
「どうしたんですか?」
「うん、どこから見ても盾だなって思って」
私が誰かを疑うんじゃなくてそこを疑うとは思ってなかったなぁ。
いや、そもそも私のことは知らないなら当たり前なのかな。
私と先生の間を遮るようにセリカちゃんが割って入る。
「っていう状況なわけ。これからどうしようか先生にも相談したいの。ちなみに、すでにわかることがあったら聞きたいんだけど」
セリカちゃんの問いに先生は少し考えた後、首を横に振った。
「ごめん、心当たりはないかな」
「まぁ、そうよね」
「ん、先生も座って」
気を取り直して先生も交えてみんなで話し合うことになったみたい。
「それでは気を取り直して会議を始めたいと思います。とりあえず現時点でわかっていることを書いていきますね」
アヤネちゃんが分かりやすくホワイトボードにまとめていく。
会議なんて委員会らしいことなんて久しぶりだから少し新鮮に思う。
「そういえばホシノは?」
「それが、今日は戻らないからとどこかへ出かけてしまって。メッセージにも全然既読がつかず...」
「見れないのか電波の届かないところにいるのかも」
「まったくもう!」
「なにもなければいいんだけど」
先生は眉を顰めた。
「先生、それは大丈夫だと思います。出掛けて行く時のホシノ先輩はどこかうれしそう、というか吹っ切れた様子でしたから」
「...そっか」
その会話はまるでホシノちゃんに何かがあったかのようだった。私はたまらず
「ホシノちゃんになにかあったんですか?」
と聞いた。
「いろいろとね」
「そう、本当に色々あったんだから」
みんながセリカちゃんの言葉にうなづく。
「...そのこと私に教えてくれないかな?」
そういうと
「ん、それはホシノ先輩から聞くべき」
シロコちゃんの発言にみんながまたうなづく。
「そっか...ホシノちゃんに明日聞いてみようかな」
それから先生と対策委員長会のみんなは周りで変わったことがなかったかとか、他の武器も喋るようになってるんじゃないかとか色々と話し合いを進めたんだ。
私が元の姿に戻りたいのか先生から聞かれたけどそれはセリカちゃんたちに話した通りのことを話したよ。
他の方法がないか探してくれるっていうから少し期待しておこうかな。
そんな感じで話は進んで行ったんだけど、それ以上は進まなくて最終的にはどこに目とか耳がついてるの?とか、暑さは感じるの?とか雑談になっちゃった。
「で、結局どうするのよこれから」
「とりあえず、いつも通り明日から生活すればいいんじゃないかな?」
「まぁそうなるわよね。具体的にやることといったら、戻れる方法がないかしらべることぐらいだし」
「それでは今日はここまでにしましょう。明日はホシノ先輩も来るでしょうし」
ここでお開きみたいだね。
「ん、また明日。先輩、行こ」
シロコちゃんが私を持って部屋から出ようとするとセリカちゃんに呼び止められた。
「ユメ先輩はシロコ先輩が連れて行くの?」
「もともと明日ホシノ先輩に返す予定だったから。どうかした?」
「な、なんでもないわよ」
といいつつ何か言いそうな顔をしている。
「セリカ?」
「セリカちゃん?」
シロコちゃんと私が声をかける。
「...あ、もしかしてセリカちゃん、ユメ先輩ともっとお話したいんじゃないですか?」
「ギクッ」
ノノミちゃんの考えは図星だったみたい。
なんだ、もっとお話ししたかっただけなんだね。
「そういえば昔のホシノ先輩のこと、聞きたいって言ってた」
「...き、気になるんだから仕方ないじゃないの!」
「恥ずかしがり屋なところも可愛いよ」
「うるさい!!」
「だったら私の家に来る?」
「いいんですか?」
「私もホシノちゃんのことについて聞きたいしちょうどいいかも」
「ん、それじゃ決まり」
と扉から出ようとしたシロコちゃん今度はノノミちゃんが止めた。
「お二人だけで話を進めてますけど、お話ししたいのは私たちも同じですよ?ね、アヤネちゃん?」
「...そうですね。私も気になります」
そんなにみんなホシノちゃんのこと気になるんだね...
「流石にみんな来ると狭いかも、それでもいいならだけど」
お泊まり会で何を話そう?ホシノちゃんとの商店街を巡ったときのお話?それともホシノちゃんに助けてもらったときの話?うーん、どうしよう。
「なら学校なんてどうでしょうか?物を動かせばみんなで眠れる教室もいくつかありますし」
「でもシャワーとかは浴びたいわよね。今日はパトロールで疲れた訳だし」
「では一度解散してまた集まりましょう」
なんて私が悩んでる間に話がまとまったみたいだね。
「先生はどうする?」
「...迷惑じゃないならかな」
「それじゃあ決まりね!」
そういうとセリカちゃんは走って消えてしまった。
「決まりってどっちなの!?」
「泊まって、先生」
「あ、うん」
「セリカちゃん、よっぽど楽しみみたいですね」
「ノノミとアヤネはどうするの?」
「私はずっとこの部屋にいましたし汗も書いていないのでこのままここに残ります。パジャマは体操服でいいでしょうし」
「私もそうします」
「ん、分かった」
「アヤネちゃん、だったら今のうちに空き教室の整理をしに行きませんか?」
「そうですね。アヤネちゃんが帰ってくるまでに時間もありますし」
そういってアヤネちゃんとノノミちゃんも部屋を出て行った。
「先生はどうする?」
「いや、私もここに残るよ」
「じゃあお願いがある」
「?」
「ユメ先輩を預かってて」
「私はお留守番?」
「すぐに戻ってくる」
シロコちゃんはそういって私を先生に預けた後、物凄いスピードで校舎を走り抜けていった。
「...あはは、残されちゃったね」
「ひぃん、私の後輩が迷惑をかけてすみません」
気にすることないよと笑顔で先生は答えてくれた。
「えっとそれで...」
「?」
「どこを持てばいいのかな?」
そしてそのまま私と先生は部屋に2人きりになってしまったんだ。
明日、ホシノちゃんはどんな反応をするのかな。
こんな姿の私を私だって思ってくれるのかな。
ふざけないでくださいって怒ってくれるのかな。
それとも呆れてどこかへいっちゃうのかな。
ホシノちゃんに会いたいのに、話したいのに
なぜかすごく怖いんだ、ホシノちゃんに会うことが。
5thPVでミレニアムがパジャマパーティーみたいなことしてましたしアビドスでもパジャマパーティーしたいよねって。