かんぱにのSS置いてくだけ   作:イイワカハルミ

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木下アンこと『アン・アップルトン』のSSです


木下アンのSS

 

 金色の髪。青い目。白い肌。

 

 見た目なんて一番解りやすいものも違えば、育まれてきた思想も違う。

 

 周りにとって私、木下アンは異物でしかなかった。

 

 

 

 

 自分で言うのもどうかと思うけど、私はいわゆる何でも出来るタイプの子だった。

 

 運動も勉強も頑張ればそれなり以上にこなせたし、要点とかコツとか言われるモノ?

 

 そういうものを掴んだり理解するのも早かった。

 

「凄い。こんなやり方あるんだ」

 

「さすが。何でも出来るよねー」

 

 周りの人達も同じように評価してくれてたみたいで、自分の事を褒めてくれる言葉をたくさん聞いた。

 

 けれど、私はちっとも嬉しくなんてなかった。

 

「やっぱハーフは違うよな」

 

 だって二言目にはこれ。

 

 誰も私の事なんて見てくれてない。

 

 それは失敗した事に関してもそう。

 

 私だって最初から何だって出来るわけじゃない。

 

 慣れない事や解らない事なんて失敗だらけ。

 

 そんな時、普通なら同情されたり笑われたりするんだと思う。

 

 けど私に待っていたのは、そのどっちでもない反応。

 

「ハーフだし仕方ないよ」

 

 なんていう、もっと他に言う事ないのかってくらい聞きなれた言葉。

 

 気が狂いそうだった、とまでは言わないわ。

 

 けど何したってハーフだの何だので片付けられるなら、頑張る意味なんてないじゃない。何が出来てもどうしようもないじゃない。

 

 そんな風に思えてきて、もう適当にしてればいいんじゃないか。

 

 そんな想いが頭の端に住み着くようになっていた。

 

 

 

 

 そんな中、私は考えたわ。

 

 いや、多分考えたというか無意識に思っていたのかしらね。

 

 それならハーフだから、で済ませられないくらい凄い人間になればいいんじゃないかって。

 

 そうすればきっと私の事を見てくれる。

 

 そんな風に感じていたのかしらね。

 

 今まで以上に運動や勉強に打ち込んだわ。

 

 元々運動や勉強が嫌いな訳じゃない。

 

 むしろ今まで出来なかった事が出来るようになるのは楽しいし、知らない知識に新鮮さを覚えていたわ。

 

 そして私は自分でも誇れるくらい凄い自分になった。

 

 これで皆も私の事をちゃんと見てくれるって思った。

 

 けど、実際はそんな事はなかった。

 

 今までより凄いと言われる事も増えた。

 

 ハーフだからって言われる事は減ったわ。

 

「天才には敵わないな」

 

 けど、代わりに次はこんな言葉が聞こえるになっただけで、なんにも変わらなかった。

 

 ……何が天才なのかしらね。

 

 どうしたら自分が欲しいものが手には入るかも解ってなくて、単に突っ走ってただけの子どもじゃない。

 

 

 

 

 目的もなく、自分を高めるだけの日々が続いた。

 

 特に何かをする為に力や知識が必要だった訳じゃない。

 

 それ以外にしたい事がなかっただけ。

 

 どうすれば理解してもらえるのか。自分を見てもらえるのか。

 

 そんな式も答えも解らない当てもない事を考えて悩むのが性に合わないというのもあったかも。

 

 難しい問題を解いたりしている時は、余計な事なんて考えてる暇もなくて夢中になれたしね。

 

 充実はしていた。

 

 けれど、どこか乾いた日々を送っていた私に運命の瞬間がやってきた。

 

 その時を境に、私の人生に新しい色が根付いていく事になる。

 

 体育の授業が終わって着替えていた時の事だったわ。

 

 周りとズレている事を感じていた私は、必要以上に皆に近寄らないようにしていた。

 

 そのズレを埋めるのは難しくて、埋めようとしたってお互い傷付いて解り合えないだけだって、もう知っていたからね。

 

 そんな私を他所に同級生の女の子達は仲良くしていたわ。

 

 お互い触りっこする遊びが流行ってて、意外に思うかもしれないけど当時の私は何が楽しいのかみたいに思ってた。

 

 その時、事故が起きた。

 

 誓って言うけど、私から何かをした訳じゃないわよ。

 

 多分はしゃぎ過ぎてて周りが見えてなかったんでしょうね。

 

 向こうからぶつかってきて、偶々私の手が相手の胸に当たってしまった。

 

 私が何かを言うよりも先に向こうが口を開いたわ。

 

 意外、木下さんも結構こういうのに興味あるんだ、ですって。

 

 いやいや、ぶつかってきたのはそっちなんだけどって思ったけれど――

 

 こういう時、下手に否定とかして空気を悪くしたりするのは駄目だってのは知ってた。

 

 同性同士の場合は特にね。

 

 だから私は適当に肯定して、触りっこに混ざってみた。

 

 その場しのぎの適当な誤魔化し。

 

 すぐに日常に埋もれて忘れてしまうだけの出来事。

 

 そうなる筈だったのに。

 

 楽しかった。

 

 嬉しかった。

 

 他にどんな言葉を並べればいいか解らない。

 

 勉強や運動で成果を出せた時とも、色んな知識に没頭している時とも違う。

 

 どこか心躍るものを感じていた気がする。

 

 私の心に影響する大きなイベントになったわ。

 

 多分だけれど、人付き合いってものに心のどこかで飢えていたのかもしれない。

 

 私はどんどん触りっこやスキンシップにハマっていった。

 

 始まりって大事よね。

 

 そんな形で同性との触れ合い方を覚えた私は、十年以上の月日が流れた今でもスキンシップが大好きなままなんだから。

 

 別に今の自分を否定したい訳じゃないのよ。

 

 むしろ今の自分の事は結構好きだったりするわ。

 

 後悔はしてないし、凄く楽しい。

 

 でも、もし。

 

 もし違う形で他人との触れ合いの楽しさを覚えていたなら、きっと今の私は存在しなかったでしょうね。

 

 自分で言うのもアレだけど。

 

 もしそうなっていたら才色兼備って言葉が似合う欠点一つない女になっていたんじゃないかしら?

 

 それはそれで良かったのかもしれないけど――

 

 何ていうか、しっくりこないわね。

 

 私っぽくないというか。

 

 やっぱり私は今の自分が結構好きなのかもね。

 

 

 

 

 スキンシップをしている時は輪の中に入れているような気がしたけれど、結局普段はどことなく周りとズレがある。

 

 だから相も変わらず自分を高める日々は続いていたわ。

 

 そんな時、ある男の子に出会った。

 

 その男の子も、凄い凄いと他の人達と同じように私を褒めてくれた。

 

 けどね、そこから先が皆と違ったの。

 

 二言目がなかったの。

 

 ハーフって言葉も。

 

 天才って言葉も。

 

 どっちも出てこなかった。

 

 嬉しかったと思う?

 

 全然そんな事ないわ。

 

 いつも言われている筈の言葉が来ない。

 

 それは逆に違和感だらけで気持ち悪さとか、もどかしさに似た軽い不快感さえ覚えたくらいよ。

 

 歯に物が挟まってるとか、そんな感じ?

 

 とにかくそれが嫌で、その男の子の前で色んな事をしたわ。

 

 色んな知識も披露した。

 

 その度に素直に凄いって驚いてくれた。

 

 けど聞きたい言葉はそれじゃない。

 

 早く楽にしてほしい。

 

 だから聞いてしまった。

 

 どうせ言われるのなら――

 

 ずっと待ってるより、ズバっと言われて諦めたかった。

 

「えっと、全部アンが頑張ってきた結果だと思うんだけど」

 

 けど返ってきたのはそんな言葉。

 

 心底不思議そうな顔して、私の事を見ていた。

 

 頭が真っ白になるって、ああいう時の事を言うのよね。

 

 最初は本当に何を言っているのかさえ理解出来なくて、暫く経ってようやく色んな感情が出てくるの。

 

 真っ白になった頭の中を塗り潰していくようにね。

 

 その塗り潰していった感情をどういうものかは言わない。

 

 というか言えないわ。

 

 良い感情も悪い感情も多過ぎて言葉に出来ないもの。

 

 何を言っても嘘になってしまう。

 

 ただそうして塗り潰されていくのを自覚して、最初に感じたのは悔しさだったかしら?

 

 自分の中にすんなり入ってきたのにイラついたというかね。

 

 心の中にある縄張り意識というか何というか。

 

 それなのに自覚一つないところが更にイラつくような気もするんだけど、可愛い気もするというか。

 

 とりあえず何かこっちばかり驚かされているみたいで不公平な気がしたから、色々悪戯してみたわ。

 

 驚く顔。戸惑う顔。苦笑い。

 

 困ったように笑ったり、仕方ないなあって呆れたり。

 

 意外と普通に笑ったりしないのよね。

 

 そんな事に気付いた時には、驚かしてやろうとかそんな気持ちはなくなっていて。

 

 男の子の色んな表情を見るのが楽しくなっていた。

 

 当時は気付いてなかったけど――

 

 男の子と遊ぶのが何よりも大事な時間になっていた。

 

 

 

 

 その男の子との出会いから色々意識が変わったのかしらね。

 

 上手くは言い難いけれど心に余裕が出来るようになったというか。

 

 それは自惚れじゃなかったわ。

 

 雰囲気が柔らかくなった、話しやすくなった。

 

 そんな事を言われるような事も増えて、友達も随分増えた。

 

 間違いなく楽しい日々を送れていたわ。

 

 けど、そんな日々がずっと続く訳じゃない。

 

 その男の子との別れの日が来た。

 

 当然と言えば当然かしらね。

 

 目標が違えば進路も違う。

 

 私は医療の道へ進み、彼は違う道へと進んでいった。

 

 それを最後に私達の交流は途絶えた。

 

 そりゃそうよね。

 

 初めて話すまで近くに住んでいた事すら知らなくて、出会ってからも楽しく過ごした。ただ近くに居たから続いていただけの関係。

 

 男女の関係でもなければ特別な絆がある訳でもないもの。

 

 だから一度離れてしまえばそれで終わり。

 

 連絡する切っ掛けもなければ会う理由もないし、ただ綺麗なだけの思い出になっていく。

 

 そうなって初めて、あの関係をもっと続けていたかった。

 

 きっとあれが初恋だったんだろうな、とか気付いちゃったりする訳だけど――

 

 そんな事振り返ってる暇もないくらい、仕事や勉強、人間関係なんて現実に追われていっちゃうのよね。

 

 

 

 

 そうして日常に追われていく中で。

 

 思い出は色褪せて風化していく。

 

 そして新しい恋を見付ける。

 

 そういうものだと、思ってたんだけどね……。

 

 ある何気ない言葉を聞く度に、私は男の子の事が頭に浮かんでくるせいで忘れられなかった。

 

 在り来たりな言葉よ。

 

「どんな男がタイプ?」

 

 ……本当、いつでもどこでも聞ける言葉よね。

 

 その度に同じ相手思い浮かべる私も大概だけどね。

 

 けど、こんなの言える訳ない。

 

 だってそうでしょう?

 

 初恋を引きずったまま忘れられないなんて、今時、女子中学生でもなさそうなんだもの。

 

 色んな意味で言える訳ないじゃない。

 

 だから私は決まって――

 

 イケメンでスポーツ万能で高収入な人かしら。

 

 まあ、私はそれよりも可愛い女の子と遊んでる方が楽しいけどね。

 

 なんて嘯いて答えているわ。

 

 こういう時の本音って話したって浮くだけで碌な事にならないしね。

 

 もしも話していいと思える人。

 

 どこか私に似た雰囲気を感じる人が居たなら、案外初対面でも話すかもしれないけどね。

 

 

 

 

 こうして男の子の事を思い出していると、偶に考える事がある。

 

 もう一度会えたなら。

 

 ううん。

 

 どこか違う場所で。

 

 どこか違う立場で。

 

 どこか違う環境で。

 

 一から新しく巡り合えたのなら。

 

 その時は―― 

 

この中で言いたい事でもあれば

  • あのゲーム復活するんだ、今知った
  • 事前登録済だぜ
  • 懐かしいなあ
  • こんな作品あったんだ
  • 昔、読んでました
  • 結構好き
  • ミルじゃないのか
  • 木下アン好きだったなあ
  • サービス再開楽しみですね
  • かんぱにの二次創作探して辿り着いたよ
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