その人は、窓から来た。
風でカーテンが大きくたなびく中、窓の縁の上に立ち、恍惚とした表情でこっちを見ていた。
「ああ…!やはり…!」
「すばらしいですね‥!」
何がすばらしいのだろう。
こんな僕に
こんな
出来損ないの僕に
今思えば一目惚れだったのかもしれない。
彼を一目見たときに、体に衝撃が走った。
この世のすべてに絶望しているようなその目
だらしなく下に垂れている腕
ぐったりと丸まっている肩
まるで力の入っていない足でだるそうに歩くその姿
だが、何かが瞳の中に宿っているその様子に心を奪われた
欲しい
彼が欲しい
慈愛の怪盗と称される私でも彼だけは
私だけが干渉できる、私だけの手元に置いておきたい。
彼を独占したい
沸々と独占欲が湧いてきた
私の全てをかけても彼を、私の目に届くところに…!
「…というわけなのですが」
「‥え?」
とりあえず窓の縁にいてもらうのもアレだったので、椅子を出して机を挟んで話を聞いてみたがどういうことだ?
え?街にいた俺を見て、一目惚れ?をしたから俺を盗りにきたの?え?
「えっと‥ちなみになんですけど、僕を手に入れたらどうするんですか?」
「!それは私のものになっていいということですか!?」
「いやその、あなたのものになるってどういうことかなって‥」
「?言葉通りですが?」
「具体的にどういう感じか教えてほしくて」
「ああ、なるほど。まず、わたしと一緒に暮らしてもらいます。」
「え?」
「暮らすといっても、わたしもアジトを転々としているので、一緒に逃げていただく、と行った方がいいですかね。」
「あの」
「ふふ、あなたと一緒に駆け落ちするなんて、素晴らしいですね。」
「ちょっと」
「ああ、あなたはずっと家にいていただいてよろしいですよ?」
「待って」
「わたしは外でわたしの仕事をしているので、働かなくていただいていいですし…」
「待って!」
「どうなさいました?」
「いろんな情報が来て混乱してるんだけど‥」
「難しいことは何もありませんよ?ただ、わたしと一生を添い遂げていただきたく‥」
「その事なんだけど‥いいの?僕で。正直そこまでする理由がわかんないんだけど‥」
「‥前提として私は、芸術はその作品の素晴らしさを最も理解している人に所有されるべきだと考えています。」
「はい」
「そして、私はあなたの素晴らしさを最も理解していると自負しています」
「はあ」
「よって、わたしはあなたと一生を添い遂げたいです。」
「………そっか、わかった。これからよろしくね。」
「…!ありがとうございます!」
彼女はそういうと、僕に抱きついてきた。
「え、ちょっ、まっ、一回離れて!」
「いやです‥離れません‥ずっと‥ずっーと」
僕の頭を撫でながら
「私はずっとあなたの隣にいますからね…」