となりのクラスの殺し屋 作:狐大総統
映画やってるし、せっかくならと思って。
割と荒いので、誤字脱字あったら連絡下さい。
「オラァ!!」
ドン!という音とともに、1人の男が壁へと叩きつけられる。
男は見るからにカタギなどではない顔つきをしており、その手にはナイフが握られている。
だが、そんな危険人物も先程叩きつけられたことで伸びてしまっており、そのすぐ側には、同じような格好をした男達が7名ほど倒れ伏している。
その惨状を生み出した1人の男─威吹荒邦─は、歪んだネクタイの位置を直し、その場に深く座り込んだ。
「ハァ〜、ったく、殺し屋多すぎだろ。バーゲンセールかっての。」
荒邦は後頭部に手をやると、ガシガシとかく。
彼がボディーガードとなってから約一ヶ月と少し。
尽宮正親による図書館襲撃事件を経て、荒邦は更に緊張感を持ってボディーガードに励んでいた。
正親がいついかなる方法で、骨子を襲撃するかは不明だが、こうしていつでも迎え打てるようにしておけば幾分かマシなはず。
荒邦はそのように考え、骨子の周囲を張っていた。
とはいえ、荒邦も人の子。
汗もかけば、ノドも渇く。そのため、水分を補給すべく、目に入った自販機に小銭を入れ、水を購入しようとしたときだった。
「あれ?威吹くん!」
「ん?ああ、潮田か。」
荒邦へ声をかけたのは、一見女子生徒にすら見えるほど華奢で、顔立ちまで可愛いらしい男子生徒─潮田渚─だった。
「こんなところで何してるの…って、わ、これは派手にやったね。」
渚は倒れ伏している殺し屋たちを見つけると、「あちゃー」と驚いた様子だ。だが、倒れている者達や荒邦に対する恐怖などは一切無いようで、本当に派手にやった以外の感想のみのようだ。
彼は見た目によらず、妙に肝が据わっているところがある。
これは荒邦と初めて出会った日、入学当初から変わらない。
彼とは入学して初めてのクラスが同じで、他のクラスメイトとは違い、臆せず話しかけてきたのが渚だった。
他のクラスメイトといえば、荒邦の見た目や喧嘩ばかりという噂も相まって、自分から話しかけてくることはほぼ無い。あったとしても、事務連絡のようなものを仕方なしにしてくる程度のもの。
実際に荒邦自身の見た目や噂自体は正しいものであるため、そういった扱いを本人も受け入れていたし、寧ろ渚が積極的に話しかけてきたことの方が予想外のことだった。
赤羽のように荒邦を昔から知っているならまだしも、そういうわけでもない筈だ。もしくは、荒邦が覚えていないだけで、小中が同じだったとかだったりするのだろうか。
「…なあ。潮田ってこういうのにビビったりしねーけど、なんか理由とかあんのか?一年で俺と初めて会ったときもビビってなかったよな?」
荒邦は以前から気になっていたことを渚へと聞いてみることにした。
「…あれ?僕言ってなかったっけ?威吹くんと初めて会ったのって入学前だよ?」
渚はキョトンとした顔で、荒邦へと視線を向ける。
思わぬ回答に、荒邦は記憶を辿っていくが、どうにも思い出せそうにない。
「…すまん。思い出せねーんだが、いつ頃の話だ?」
「ううん、寧ろ覚えてなくても仕方ないよ。」
荒邦は申し訳なさそうに謝ると、渚は笑みを浮かべながら出会ったときのことを説明しだした。
渚曰く、2人が初めて出会ったのは渚が県内一の不良校─鬼怒ヶ島高校─の生徒に絡まれているときのことだったという。
当時、周囲に人はいたものの、誰もが関わりたくないためか、遠巻きに見ているだけで、誰も助けてくれそうにはなかったとのこと。
そんなわけで、どうしようかと渚が困っていたときに助けてくれたのが荒邦だったらしい。
荒邦は一発で不良共をボコして気絶させると、渚のお礼を聞くだけ聞いて、さっさとその場を去ってしまったという。
「…ってわけなんだけど、思い出せそう?」
渚は荒邦に向かって、本人が覚えてるかどうかについて、少し探るように目をやる。
「………ちょっと待て。たしかに、そんなことがあったような気はする。するんだが…。」
荒邦は心底悩むような顔をして、チラリと渚へと目を配る。
「…俺が助けたのは、
女子だったはずなんだが?
」
荒邦がそう言った瞬間、膝から崩れ落ちる渚。
「す、すまん!一瞬見ただけだったってのと、ツインテだったこともあって、てっきり女子かと…。」
「…いや、僕が紛らわしい見た目だったのは自覚してるから。」
荒邦は渚を励ましたりするも、「ツインテはよく似合ってたぞ!」などといったフォローになっていないフォローをしたことで、渚は更に落ち込んでいく。
そんなカオスすぎる空気が10分程度続いた後、ようやっといつもの調子まで立ち直る渚。
「ま、まあ、そんなわけだから!改めて言わせて貰うけど、あのときはありがとう!」
「別に大したことはしてねぇけど、ここは素直に受け取っとくわ。」
荒邦の言葉に満足そうに笑う渚。
渚はその笑みのまま、感謝の意を更に伝えるべく、口を開く。
「うん!次は、もし威吹くんがピンチになったときは僕が助けになるね!」
渚の言葉に一瞬目を見開く荒邦だったが、すぐにニヒルな笑みを浮かべ、応える。
「そりゃあ、ありがてぇな。期待してるぜ。」
「うん!任せてよ!」
荒邦は渚へと拳を突き出すと、渚もその意図を理解し、荒邦へと拳を突き出す。
そして、お互いの中央地点で拳が軽く当たり、俗に言うグータッチというものが完成する。
そうやって、お互いに男同士の友情というやつを育んでいると、荒邦は突然悪戯でもするときのようにニヤッとする。
「ま、そのときのためにも筋肉つけねぇとな!お前、女子にも腕相撲とかで負けたり、2人がかりなら拘束されちまいそうだし。」
荒邦が冗談めかしてそう言うと、当の本人が少し落ち込んでいたため、荒邦は笑って本気で思っているわけではないことを伝える。
「冗談だっつーの。さすがにそんなことあるわけねーだろ。」
だが、渚の顔は更に青くなる。
その様子に、さしもの荒邦も気付いてしまった。
「…潮田、まさかお前。」
だが、荒邦はその先を言うことがどれだけ渚を傷つけるかに気付き、頭を横に振る。
「いや、俺が悪かった。今度メシでも行こうぜ。奢るからよ。」
「……ありがとう。」
そこには、落ち込んだ少年と、その少年の肩に手をやり、励ます漢という、さきほどとはある種真逆の青春が広がっていた。
尚、これにより荒邦は渚が不良にビビらない理由は聞きそびれることとなったが、それに気付いたのは帰宅後のことである。
◇◇
「追い詰めたぜ、クソガキ〜!」
─クッソ、数が多すぎんだろ!けど、やるしかねぇ!次のチャイムまで残り20分!なんとしてでも耐えてやらぁ!
尽宮正親による学校襲撃により、次のチャイムまで荒邦ひとりで殺し屋たちを受け持たなければならなくなって30分がたった。
ギリギリではあるものの、澄彦の指示や、増援があっても持ち前の根性で耐える荒邦。
「知るかボケェ!!さっさとかかってこいや!!」
荒邦は闘志を沸かせ、気合いを入れ直す。
だが、そこに1人の一般生徒がトイレから廊下へと出てくる。
─な、マジかよ!なんで、ここに一般生徒がいるんだ!?いや、授業をしてないってだけで、トイレなんかにいるってのはあり得るか!クソッ!どうする!?
荒邦は焦りで頭をフル回転させ始める。幸い、殺し屋たちに見えない角度にいるため、生徒がこちらと逆方向へと進み始めれば、回避することができる。
─こっちを見ずに向こうへ行け!行け!
だが、現実はそう上手く行かない。
─ハァ!?なんで、こっちに来るんだよ!もう流石に見えてんだろ!?…ん?つか、アレ渚じゃねぇか!逃げろっつの!
荒邦が殺し屋たちに気付かれないよう、アイコンタクトをしようとするが、渚はゆったりと自然体な動きでこちらへと歩いてくる。
そう、まるで─
─通学路を歩くみたいに、普通に。
次の瞬間、3人の男が倒れる。
男達は後ろから首を絞められたことにより、声も上げられないまま倒れ、泡を吹いている。
更に次の瞬間には、2人の男が倒れる。
荒邦に見えた限りでは、ハンカチで男2人の口を押さえたように見えた。
その次には、1人、3人、2人と膝から男たちが崩れ落ちていき、そこでやっと最後にいた1人の男が異変へと気づく。
「おい、どうし…
「パァン!」
…。」
だが、目の前にいるはずの渚へ警戒することなく、猫騙しをくらったことで、この男も全身が痺れたようにドサリと倒れる。
一瞬で殺し屋たちが崩れ落ちていった光景を見た荒邦は、あまりの早業に驚き声が出なかった。
そんな荒邦へと、いまの光景を作り出した渚が駆け寄ってくる。
「…ふぅ、大丈夫だった?威吹くん!」
渚はなんてこともなかったかのように、荒邦へと声をかける。
だが、荒邦は状況把握に処理が追いつかず、すぐに答えることができなかった。
「あれ?ほんとに大丈夫?」
「…は、は、ハァ〜!?ど、どうなってんだ!?」
渚が心配そうに荒邦へと再度声をかけたことで、ようやっと荒邦は再起動することができた。
「あ、良かった。大丈夫そうだね。」
「いや、大丈夫とかより!お前何者だよ!?」
荒邦はあまりの驚きにより狼狽えていると、荒邦の疑問は渚本人ではなく、インカムから聞こえてきた。
『彼は殺し屋さ。それも超生物を殺した、超一流のね。』
「澄彦!って、こいつも殺し屋なのかよ!」
荒邦は渚に向かって構えようとするが、澄彦がそれを制する。
『いや、赤羽さんを狙ってるってワケじゃない。少なくとも、今はね。』
「いや、これからも狙うわけないから!」
渚は澄彦の発言に対し、心外な!とばかりに否定する。
その様子に、荒邦は『潮田もインカムを付けてんのか?つーことは、味方ってことでいいのか?』と疑問に思っていると、渚がため息をひとつつき、話を続けた。
「…はぁ。まぁ、いいや。とりあえず、この人たちにはしっかりと手入れしてあげないとね。こっちは任せてよ。威吹くんはまだ向こうにいる殺し屋たちをお願い。ひとり、きみ狙いの人がいるみたいだしね。」
そう言って、倒れている殺し屋達を手持ちのロープなどで縛っていく渚。
そんな渚に対し、荒邦はひとつだけ確認しなくてはならないことがあっため、渚へと問う。
「…ひとつ、聞かせてくれ。本当にお前が赤羽狙いじゃねぇってんなら、なんで俺を助けてくれたんだ?3年4組じゃねぇってことは、ボディーガードとしての役割じゃなく、本当に殺し屋なんだろ?」
荒邦は真剣な顔つきで、渚へと問いかける。
その目は、嘘をつくことは許さないという鋭い目つきだった。
そんな荒邦を見た渚は、フッと笑みを浮かべて口を開いた。
「もし威吹くんがピンチになったときは僕が助けになるって約束したからね。」
荒邦のセリフって、なかなか難しいと感じました。
たぶん、キャラの特徴を掴みきれてないんやろな。