東方不死王墓~Requiem for the OVERLOAD~ 作:烏籠茶
無縁塚――それは、この幻想郷において最も危険とされる地。咲き乱れる彼岸花の中には、外の世界から流れ着いたであろう無縁仏たちの骸が静かに横たわる。朽ち果てた衣服に、未だに輝きを放つ装飾品。冷たい風がそれらの間を吹き抜けるたび、どこか生々しい死の匂いが辺りを満たす。
無縁仏たちの眠るこのあたりは空間が不安定になっており、時折、外の世界や冥界へと繋がる。ここは、文字通り「死に最も近い場所」なのだ。そのため、死を恐れる人間はもちろんのこと、妖怪ですら――外の世界に迷い込むことを恐れて――寄り付こうとしない。ある意味お墓にふさわしい静まり返った土地だ。
しかし、僕にとっては恐怖の象徴ではない。空間が不安定であるこの地には無縁仏と一緒に異界からさまざまな物品が流れてくる。結界によって外界と遮断されているこの幻想郷において、そういった物品は非常に貴重なのだ。外の世界の高度な技術が宿る道具や、冥界からの不思議なアイテム――そんなものが自然と湧き出るこの場所は、僕にとってはまさしく宝の山なのである。
確かに、無縁塚は危険な場所だ。しかし、僕はこの地を何度も訪れており、それなりに無縁塚の知識には自信がある。それに、もし別の空間に迷い込んでしまったとしても、他の人間や妖怪ほど危険性はない。もちろん、帰ってこれなくなるような事態は困るが。
そういうわけで、幻想郷一恐ろしいとされるこの場所も、僕にとってはそれほど苦ではない。むしろ、毎回訪れるのが楽しみなくらいだ。
――だが、その考えがどれほど甘かったかを、僕はこの日、思い知らされることになる。
僕はまだ真の意味で理解していなかったのだ。この地が幻想郷一危険な場所とされる所以を……。死の前では誰しもが等しく無力であることを……。
ここは無縁塚、死に最も近い場所。その日、森近霖之助は無縁塚の本当の恐ろしさを体感することとなった――――
―――――――――――――――――――――――――
――時間を数時間ほど遡る。
夏の面影もすっかり消え、吹く風に寒さを覚え始めたこの頃。だが、今日は風もなく、太陽の温かみが十分に感じられる小春日和だった。
そんな陽気に照らされて、古道具屋「香霖堂」の中からは軽やかな鼻歌が聞こえてくる。彼岸花の咲くこのタイミングこそ、霖之助にとって一番の楽しみ――「仕入れ」の時期なのだ。散歩日和な天気も相まって、古道具屋の店主・森近霖之助は上機嫌だった。
背負い籠などの荷物をまとめ終え、さあ店を出ようとしたその時、そのドアが勢いよく開いた。
カランカランッ!
「おーい、やってるかー」
居酒屋にでも入るような気軽な掛け声と共に、見慣れた黒い三角帽子が姿を現す。
「残念だが、今ちょうど閉店するところだ。さあ、帰った帰った」
その帽子の持ち主を軽くあしらうと、案の定、不満げな声が返ってくる
「なんだよ。せっかくこんなお出かけ日和だったから、『ご来店』してやったってのに」
買い物をする気もないくせに『ご来店』とは、よく言えたものだ。どうせここに来たって、商品を冷やかしたあとは店のソファでゴロゴロするだけだろうに。
「僕はこれから無縁塚に行くとこなんだ。残念だが他をあたってくれ」
「ああ。墓泥棒か」
「失礼だな、仕入れと言ってくれよ」
「ハナから売る気がないくせに仕入れも何もないだろ」
確かに、拾ってきた物の中には非売品も多い。だが、店頭に並んでいる商品の大半はれっきとした売り物だ。……ただ、買う人がいないだけで。
「――まあいい。だったら、この魔理沙さんが代わりに店番をしてやるよ」
どうやら、あくまでもこの店に居座るつもりのようだ。正直、客なんて滅多に来ないので店番など必要ないのだが、それを口にたところで彼女は帰らないだろう。下手に指摘すれば、魔理沙は店番すらせずに居座ろうとしかねない。それならせめて「店番」という言質だけでも取っておこう。
「そうか。じゃあ留守番を頼むよ」
とはいえ、魔理沙を店に一人残すのは少し心配だ。彼女が売り物を勝手に触るのはもちろん、最悪の場合、非売品にまで手を出される恐れがある。
「――それと、売り物を壊さないでくれよ」
「おう、任せとけ! お土産待ってるぜ!」
「そうか。じゃあ留守番を頼むよ」
とはいえ、魔理沙を店に一人残すのは心配だ。彼女が商品を勝手に触るのはもちろん、最悪の場合、非売品にまで手を出される恐れもある。しかし何を言っても引き下がるはずがない以上、これ以上のやり取りは無意味だろう。
「――それと、売り物を壊さないでくれよ」
「おう任せとけ!お土産待ってるぜ!」
霖之助の心配をよそに返ってきたのは、あまりに図々しい返事だった。まあ確かに、店番という仕事を引き受ける以上、何かしらの報酬を求めるのは理にかなっているが……どうやら一本取られてしまったようだ。
「ああ、行ってくるよ」
霖之助はせめてもの抵抗として、お土産についてははぐらかすように適当な返事をして、自分の店を後にした。
***
この季節の無縁塚には深紅の彼岸花が咲き誇り、幻想郷でも随一の美しさを見せる。もっとも、その美しい景色の中には、時折、朽ち果てた死体が転がっているのだが。
だがむしろ、僕の目的はまさにその死体にある。この無縁塚に横たわる遺体の多くは、幻想郷の外の世界から流れ着いた者たちだ。そのため、この幻想郷では珍しい品を持っていることが多い。
それに、死体を放置しておけば妖怪が発生する原因にもなる。幻想郷の秩序を守るためにも、無縁仏の処理は必要不可欠な仕事だ。しかし、この地に眠る死者を弔う者は――少なくとも僕以外には――いないのが現状だ。
もちろん、ただ剥ぎ取るわけではない。死体を放置しておけば妖怪が発生する原因にもなるため、幻想郷の秩序を守る意味でも無縁仏の処理は必要不可欠な仕事だ。しかし、この地に眠る死者を弔う者は――少なくとも僕以外には――いないのが現状である。
だから僕は無縁仏たちを火葬して弔い、その対価として品物を頂いているのだ。埋葬の労力と手間を考えれば、それくらいはバチも当たらないだろう。
今日の成果は上々だ。早めに出発したこともあって、背負い籠は既に昨日の収穫を超える量でいっぱいになっている。少し早いが、この辺りで切り上げるのが良さそうだろう。
最後に目の前の無縁仏を火葬して、今日は終わりにしよう。
そう考えて、僕は懐から小さな金属の箱――『ライター』を取り出した。
これも無縁塚で拾った外界の品だ。火を起こすだけのシンプルな道具だが、このように頻繁にものを燃やす際には非常に助かる。なにより、外の世界から流れ着いた道具をこうして使いこなせていることがうれしく、かなりのお気に入りだった。
親指で歯車を弾くと、カチッという音と共に小さな炎が灯る。それを無縁仏の衣服へと近づけようとした――その時、突然空からポツリポツリと雨が降り始めた。
「狐の嫁入りか……」
何とも間の悪い。だが、降り始めたばかりの今なら、まだ燃え移ってくれるかもしれない。僕はその小さな炎をもう片方の手でそっと覆い庇い、急ぎ足で無縁仏の衣服へと近づけた。
……しかし、思いのほか雨脚が強く、あっという間に無縁仏の衣服に水が染み込んでいく。結局、炎は完全に拒絶されてしまった。
「これじゃあ火葬は無理だな」
諦めて近くの木陰で雨宿りをすることにした。狐の嫁入りなら長くは降らないだろう。そんなことを考えながら、僕は彼岸花の赤い絨毯を見つめて、静かに雨音に耳を傾けた。
***
雨は思ったより長く続いた。途中から「このままずっと止まないのでは」と半ば諦めかけた頃、唐突に止んだ。なんだか天気に翻弄されたような気分だ。空には鮮やかな虹まで架かっているが、僕の気分はむしろ曇ったままである。
これだけ降った後では、再び火をつけるのは無理だろう。残った無縁仏の火葬は明日に回すしかない。これでは弔いもせずに持ち物だけを剥ぎ取った形になってしまうが、どうか恨まないでほしいものだ。
心の中で無縁仏へ軽く言い訳をしつつ、木陰から立ち上がり帰路につこうとした矢先――ある違和感に気づく。
ライターが無い。
確かに懐にしまったはずなのに、どこかで落としてしまったらしい。一応、店にはライターの予備が四つほどあるが、次はいつ手に入るか分からないのだ。ここで無くしてしまうのは非常に痛い。
仕方なくまずは今いる木陰の周辺を探す。だが、見つからない。次に、先ほどまでいた死体の周囲へと戻り、入念に探す。しかし、そこにもない。
……そうなると、雨宿りするまでの道中にでも落としてしまったのだろうか。そこまで探すとなると時刻的にも厳しいものがある。悔しいが、諦めたほうがいいだろう。運が良ければ、またいつか再発見できるかもしれない。
そう自分を納得させ、帰るべく腰を上げようと思ったその時――。
――――少し、よろしいですか?」
突如として響く声。その瞬間、全身の毛が逆立つような感覚に襲われた。
声は冷たく、丁寧な響きがありながら、どこか空虚だ。言葉が持つ温かさや誠実さは微塵も感じられない。
視線を上げると、そこには「それ」が立っていた。
骸……いや、それ以上の何か。あるいは「死」そのもの。
それは、冷徹な視線でこちらを覗き込んでいた。全身を凍りつかせるような眼差し。まるで魂の奥底まで見透かされているようだ。
さらに、その両脇には腐敗した体を持つ巨大な剣士が控える。獲物を痛めつけることだけを考えたかのような形状をしたその剣からは、どす黒い靄が広がり落ち、兜の隙間から覗く崩れ落ちた顔には、こちらへの憎悪が露わに浮かんでいる。
明らかに、敵意を持ってこちらに接触してきている。中央の死神が取る丁寧な態度も、一部の力を持つ妖怪特有の慇懃無礼なものだ。それを勘違いし、下手なことを言ってしまえば、その瞬間、この首が飛ぶことになるだろう。
僕はその人と妖怪の混血という特殊な体質から、人としての損傷にも妖怪としての損害にもある程度の耐性を持っている。だからこそ、こうして人里離れた無縁塚にも平然と足を運べる。しかし――
死だけは違う。
死の前では、人間であろうと妖怪であろうと平等に無力なのだ。
僕はその事実を、この瞬間に痛感した。
「私の言っていることがわかりますか?」
またしても、死の言葉が響く。頼むからそれ以上口を開かないでくれ、こちらを意識しないでくれ――そう願うが、無駄だと悟る。意を決し、その言葉に返事をした。
「はい。」
非常にシンプルな肯定の答え。余計な修飾はいらない。大概、こういった存在は思考が人間のものとはとはかけ離れているのだ。下手な言葉を添えれば、見えない地雷を踏みそうな気がした。
「お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
次の問いが投げかけられる。まるで、死後の審判を受けているかのような圧力だ。名前を告げたら何か取り返しのつかないことが起こるのだろうか――いや、仮に名前を告げずとも、この死神なら僕一人を消し去ることなど造作もないはずだ。僕は再び覚悟を決めて口を開く。
「森近霖之助です」
「ここの地名を教えてくれますか?」
「無縁塚……と言います」
「この辺りに住んでいるのですか?」
「いえ……ここから魔法の森を越えたところに家があります。」
回収しに来た魂の確認でもしているのだろうか。
「その近くには、他にも誰か住んでいますか?」
……――――そんな一方的な詰問はしばらく続いた。
――――――――――――――――――――――――――――――
目の前のこの男――森近霖之助の話を聞く限り、やはりここはユグドラシルではないらしい。
そうなると、これからの方針をどうするかが問題だ。やはり、一番の不安因子である他のプレイヤーの存在を確認すべきだろうか。
それにしても、この男は何というか掴みどころがない。質問には素直に答えてくれるが、会話はどこかぎこちなく、こちらから話しかけても自分から話を振ってくることはない。心に壁を感じるというか……いや、出会ったばかりなのだから、打ち解けるには時間がかかるものだろう。もしかして人見知りなのだろうか?
ひとまず、この地域の住人である彼に人里までの案内を頼むことにした。自力で探すよりは間違いなく効率がいいし、なにより一人で彷徨うのは心細い。ありがたい申し出だ。
男――森近霖之助と名乗った彼の後をついていく。背中の籠には何かがぎっしり詰まっているのが見えた。
「背中の籠には何が入っているんですか?」
モモンガはさりげなく話題を振る。せっかくの第一村人なのだ、なるべく交友関係を深めてこの世界の事柄についていろいろ知っておきたい――そう思ってのことだ。
「……珍しい物を集めるのが趣味でして、ここで拾ったものです。」
少しの間の後、霖之助が口を開いた。
なるほど、蒐集が趣味なのか。これは良い話題になりそうだ。モモンガもレアアイテムを集める楽しさはよく知っている。なんとなく親近感が湧いた。
「へえ、興味深いですね。少し見せてもらってもいいですか?」
「わかりました。」
霖之助は意外にも快く了承し、背負っていた籠を地面に下ろした。そしてその中身を全てひっくり返して見せてくれた。一見すると古びたジャンク品ばかりだが、中にはモモンガの知識にないようなものも混ざっている。
モモンガはその中から、手のひらサイズのスタイリッシュな金属を拾い上げた。舵輪のような形をしており、六方向におもりがついている。現実でもユグドラシルの世界でも見たことがないデザインだが。この世界独自のアイテムのようだが、これは一体どのような代物なのだろうか。
「これはどういったものですか?」
「それは『はんどすぴなー』といって、暇をつぶすための道具らしいですよ。」
え? それだけ?
「この中心部分を持って、外側の部分を弾くとクルクルと回るんです。」
だからなんだというのだ。
「よろしければ、あげますよ。」
別にいらないが……。だが、プレゼントをもらえるというのは、それだけ打ち解けた証拠ではないだろうか。ここで断るのは無粋だろうし、せっかく築きかけている友好関係を壊れてしかねない。
そう考えたモモンガは社会人としての必須スキルである営業スマイルをフル活用し、こう答えた。
「いいんですか!? ありがとうございます!!!」
彼岸花が咲き誇る一本道を抜け、二人は森――「魔法の森」と呼ばれる場所に差し掛かった。薄暗く湿った雰囲気だが、意外にも居心地が悪くない。
「そういえば、えーと……」
少し前を歩いていた霖之助が、急に言葉を詰まらせた。モモンガはどうしたのだろうと訝しんだが、すぐに思い当たる節があった。
「ああ、まだ名乗っていませんでしたね。鈴木悟と呼んでください。」
自分の迂闊さに気付く。そういえば自己紹介もしていなかった。初対面で名前を聞けないままでは、相手も話しかけにくいだろう。コミュニケーションを円滑にしたいと思っていた割には、重大なミスだ。
「鈴木悟、ですか。」
霖之助は復唱したあと、少し考え込むようにして続けた。
「――意外と普通の名前なんですね。」
その反応に少し面食らう。どういう意味だろう。むしろ「モモンガ」と名乗るべきだったのだろうか?
「それで悟さんは、僕を迎えに来た死神とかじゃないんですか?」
……いきなり何を言い出すのだろう。この話の流れでどうしてそういう結論になるのか、全く理解できない。
「いえ、あの辺で少し迷子になりまして。たまたまお会いしただけですよ。」
「なるほど。そういうことだったんですね。」
霖之助は何かに納得したようにうなずく。
「――となるとやはり冥界からきたんですか?」
話がどんどんよく分からない方法へ進んでいく。
「ええ。」
ゲームの世界からアバターごと転移してきましたー。なんていうと絶対話がややこしくなるから言わない。とりあえず相手の想像に合わせておこう。
「人里に何か用事があるのですか?」
「すこし知人を探していまして。人里の方にいるかもと」
まあ知人というか、同じユグドラシルプレイヤーを探しているのだが、あながち嘘というわけでもないだろう。
「なるほど。それは大変ですね」
男は軽く笑うと何かに納得したようにうんうんと唸る。なんだかまた勘違いが強まった気がするが、モモンガの知ったことではない。……と思いたい。
魔法の森を抜け、開けた場所に出ると霖之助が言った。
「もうすぐで人里に着きますよ。」
そう聞いたところで、霖之助が何か気になるような表情を浮かべる。
「ところで、その格好のまま里に入るんですか?」
「まずいのか?」
「……人里に妖怪が現れると大騒ぎになるんですよ。その姿のままだと、ちょっと……最悪の場合、巫女が退治に来るかもしれませんし。」
なるほど、そういうことか。つまり人里には人間以外の種族がいないという認識いいのだろうか?そうなると異形種たちはどこに住んでいるのだろう。もしかして先ほどの会話に挙がった冥界あたりか?
「そういうことですか。なら……」
モモンガはインベントリを開いた。空中に突如現れる黒い穴。ユグドラシルの仕様とは少し違うが、己の直感がこの中がインベントリにつながっていると訴えかけてくる。それを信じ暗闇の中に手を突っ込むと、適当な装備を取り出す。
「では、これでどうでしょう?」
仮面とガントレットを装備したモモンガが尋ねる。どちらも性能は低いが、骨の外見を隠すには十分だ。
「えーっと……まだ少し、いや、かなり怪しいですね……」
「む? そうか。なら、これではどうだ?」
モモンガは幻影魔法で人の顔を作り出し、仮面を外して見せた。霖之助はその様子に驚いたが、微妙な表情で首を傾げる。
「人間には見えますが……その服装は里ではかなり目立つと思います。」
それでもダメか。この地の住人である霖之助が言うのだから間違いないのだろう。だが、モモンガとしては少し納得がいかない。最悪の場合は
人里の門が見えてきた。既に日も暮れ始めているしこの辺りで霖之助とは別れることにしよう。
「まあ外見の問題は自力で何とかしよう。それと、ここまで世話になったな。お礼と言っては何だが――」
モモンガはインベントリから小さな角笛を取り出した。
「これを渡そう。」
そう言って角笛を差し出す。正直ユグドラシル基準で考えればゴミアイテムだが、別世界からやってきたアイテムという意味では、蒐集家の彼にとっても珍しいものではないだろうか。
「ほう……これは……」
霖之助は角笛を受け取り、興味深そうに眺めている。
「どうかしましたか?」
「ああ、かなりすごいものだと思いまして……実は触れた道具の名前と用途が分かるんですよ」
魔法を使った様子もなかったし、この世界特有の能力ということだろうか。そうなると、今後はそういった情報も含めて調査をしなければ。ユグドラシルの知識を前提に行動するのは危険だだろう。
「それはすごいですね。他には何かできるんですか?」
「別にそんな大した能力じゃありませんよ。他にはまあ、魔道具をいじるのが少し得意なくらいなものですよ」
生産系の
「それは興味深いですね。私はこれで失礼しますが、また今度、お店に伺うことになるかもしれません。その時はよろしくお願いします。」
「ああ、待っているよ。生憎、お客さんが滅多に来ないものでね。それと、買い取りなんかもやっているから、他にもこんな感じのアイテムがあったら是非持ってきてくれ。」
どうやら角笛をかなり気に入ってくれたみたいだ。モモンガは小さくなっていく彼に手を振ると村の方へと歩いて行った。
――――――――――――――――――――――――――――――
霖之助は骸骨――いや、鈴木悟を見送ると、手元の角笛に視線を落とした。それは「ゴブリン将軍の角笛」。どんな仕組みかは分からないが、ゴブリンたちを生み出す能力があるらしい。命の創造、まさに神の領域ともいえる代物だ。
「とんでもないものをもらってしまったな……」
小さく呟き、霖之助は苦笑した。だが同時に、湧き上がる興味を抑えられない。こんな希少なアイテムを、鈴木悟はまるで大したことのないように渡してきた。ということは――
「もっとすごいものを、持ってるってことだよな……」
霖之助は小さくため息をつく。できれば店に来てもらい、手持ちのアイテムを見せてもらいたい。いや、可能なら買い取りたいものだ。だが、それだけの価値を持つアイテムを購入する資金をどうやって用意するのか。今の店の売上では到底足りない。これが悩みどころだ。
「ただいまー。」
遅い時間だし、さすがに魔理沙も帰っただろう――そう思っていたのだが。
「遅いぞ!」
予想に反して、不満たっぷりの声が飛んできた。
「ああ、まだいたのか。」
「まだとはなんだ。こっちは心配してたんだぞ!」
「すまない、今日は色々あってね。」
「まあいい。それよりお土産だ。残業した分多めにもらうぜ!」
そう言いながら、魔理沙は籠の中身に目を光らせる。どうせ遅くまでここにいたのも、お土産が目当てだったのだろう。相変わらず図々しいやつだ。
魔理沙の言葉に呆れながらも、霖之助は首にぶら下げた角笛に目を向ける。確かに今日の収穫を多少多めに持っていかれるくらい、些細なことに思える。だが、こればかりは別だ。
「はいはい、好きなものを適当に持っていきな」
霖之助はため息交じりに籠の中身を台の上に広げた。
「おっ、気前がいいな。じゃあ全部もらっていいか?」
「ダメに決まってるだろ。」
魔理沙の言葉に呆れながらも、霖之助は首にぶら下げた角笛に目を向ける。確かに今日の収穫を多少多めに持っていかれるくらい、些細なことに思える。だが、こればかりは別だ。
「その角笛も拾ってきたのか?」
「これはダメだよ。大事なものなんだ」
「えー、別にいいじゃないか。ちょっと貸してくれよ。」
「ダメなものはダメ。それより、欲しいものは決まったかい? 残りはしまっちゃうよ。」 「ちょっと待ってくれよ!まだ何も選んでないぜ」
「そういえば、随分遅いけど帰りは大丈夫かい?」
「何言ってるんだ? 泊まってくに決まってるだろ?」
何が「決まってる」なのか。家主の了承も得ないで。
「そうか、じゃあ晩御飯も食べていくんだね?」
「おう!というかこの魔理沙さんがもう作ってやったぜ。ありがたく思えよ!」
魔理沙はここを自分の家か何かと勘違いしているのだろうか。だが、今日は色々あって疲れているし、正直ありがたい。ここは素直に感謝しておこう。
「ありがとう。助かるよ。」
「お代は、その大事そうに持ってる角笛でいいぜ。」
「おいおい……」
食卓から漂う芳しい香りと宿るぬくもりが、今日一日の疲れを静かに溶かしていくようだった。
なんか一話目と雰囲気が違いすぎる気もするどまあいいか。