初めは単なる日常風景に思えた。モニターには午後の喫茶リコリコの様子が映し出されていた。千束がカウンターでコーヒーを淹れ、ミズキがグラスを磨いている。
何の変哲もない平和な光景だった。しかし……
たきなの視線は画面の隅に引っかかり始めた。最初は一瞬だけ見えた黒い影。次の映像ではわずかに動きが感じられた。そして次の切り替えでは—その存在はより明確になっていた。
フワフワとした白い毛並み。丸い顔とつぶらな瞳。それは確かに着ぐるみだった。動物の形をした、どこか愛らしいはずの衣装。なのに……
(何……あれは……?)
たきなの呼吸が浅くなる。映像が切り替わるごとに、その着ぐるみは少しずつ画面中央へと近づいてくる。
どの映像にも必ず現れるようになった。
「たきな……?大丈夫?」
ショウマの声がかすかに聞こえたが、たきなの意識は画面から離せなかった。着ぐるみたちはゆっくりと店の中を動き回っている。客の間を縫うように、テーブルの下を覗き込むように。
(こんなもの……撮影されたはずがない……)
たきなの喉が乾いた。唾を飲み込もうとしてもうまくいかない。手が震え、背筋に冷たいものが這い上がってくる。
映像は次の切り替えを迎えた。今度は店内の隅から全体を俯瞰するカメラからの映像だ。着ぐるみたちは1体……いや、2体になっている。まるで生き物のように自在に動いている。
その瞬間、たきなの視界が暗転した。映像が途切れたのだ。
「あれ……?」
クルミが混乱した声を上げる。たきなは急激に襲ってきた圧迫感に息を詰まらせた。
何かが、背後にいる。
全身が警告を発している。理性ではなく本能が告げている—危険だと。
ゆっくりと首を回すたきなの目の前に……
「きゃあああっ!!」
反射的に右手が動き、ヴァレンバスターが冷たい光を放った。引き金を引くと同時に轟音がリコリコ中に響き渡った。
放たれた光弾は床を抉り、煙が立ち込める。
そして。
煙が晴れると、そこにあったのは破壊されたソファの残骸と……驚愕の表情を浮かべる三人の人影だった。
「千束……?」
たきなが震える声で尋ねた。
「そ、そうです……」
千束の着ぐるみが口を開くと、中の声がくぐもって聞こえた。
「驚かせてごめんね?」
ミズキの着ぐるみが両手を振りながら言った。
「おいおい!マジで撃つ奴があるか!」
そして最後に現れた大きな着ぐるみ—おそらくミカのものだろう—がゆっくりと前に進み出てきた。
「まさか、ここまでやるとは、たきなを驚かすのも命がけだな」
そうしながら、千束は呆れたように言う。
ただ、その中で、ショウマは未だに顔が青いままだった。
それは、千束達の着ぐるみの方ではなく、先程までたきなと一緒に見ていた席で。
ショウマの視線に合わせていたゴチゾウ達もまた、それに恐怖していた。
ゼンゼロから出る陣営は
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邪兎屋
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白祇重工
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ヴィクトリア家政
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特務捜査班
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カリュドーンの子