「よーし、じゃあ早速始めようか」
真島は自宅に戻ると、まるで戦闘開始前の指揮官のように宣言した。
キッチンは驚くほど整理整頓されており、さまざまな調理器具が整然と並べられていた。
器用な手つきで鍋を火にかける真島の横で、ショウマはワクワクした様子で見つめていた。
「まずは卵だな。これは生産地を厳選した特級品だ」
真島は自信満々に言うと、卵をボウルに割り入れた。
「すごーい!おじさんて料理上手なんだね!」
「ふっ、バランスを求める俺にとっては基本中の基本」
真島が粉砂糖を量る姿勢は、まるで武器の取り扱いのように几帳面だった。
「なぁ、坊主。君はどう思う?今の世界について」
卵白を泡立てながら真島は突然尋ねた。
「え?どういうこと?」
「表面だけ平和な世界だ。犯罪組織は地下に潜伏し、表向きは何事もない。これがバランスのとれた世界だと思うか?」
ショウマは首を傾げながら生クリームを混ぜていた。
「うーん……よくわからないけど、みんなが笑顔なら良いんじゃないかな?」
真島はフッと鼻で笑った。
「笑顔の裏に隠されたものを見ないのが甘いな。例えばこのプリンの表面は美しくても、中身は複雑な工程と材料で成り立っている。表面だけ見ていたら本当の姿は見えない」
「へぇ~、そうなんだ!」
ショウマは素直に感心する。
真島は満足げにカラメルを煮詰め始めた。
「さぁ、本題だ。君にとって本当の平和とは何だ?」
「僕にとっての……平和?」
ショウマは考え込みながら答えた。
「僕にとって平和は……毎日美味しいご飯を食べられて、友達と遊べて、お風呂に入って眠れる場所があることかな」
「単純すぎる。そんなものは幻想だとすると」
真島は苛立ちを隠さずに言い放った。
「幻想でもいいじゃん!僕が幸せを感じられるなら、それが僕の平和だよ!」
ショウマが反論すると同時に、真島が持っていたカラメルがこぼれる。
「平和ねぇ、実現すればいいと思うよ。でも現実は残酷だ」
真島が静かに言う。
ショウマは手を動かしながら考える。
「・・・知っているよ、俺はその記憶で理解出来た。だからこそ、俺は千束達との日々を大切にしたいんだ」
そうして、フルーツを丁寧に切り始める。
真島はショウマを鋭く見た。
「面白い答えだ。確かに本物の地獄を知れば偽りの平和でも良いと思える。だがそれは本当に正しいのか?」
「正しいかどうかはわからないけど、僕は今の生活が好きなんだ」
「理想を追い求めず、現状に甘んじるのか?」
真島は少し声を荒げながら質問する。
「甘んじるわけじゃないよ。ただ、一歩ずつ進むしかないと思うんだ。一気に全部を変えようとしたら、また混乱が起きちゃうかもしれないから」
ショウマがそう言いながら果物を丁寧にカットしていく。
「バランスか……」
真島は呟いた。
「え?何?」
「いや、なんでもない」
真島は苦笑いしながら言った。
「しかし、一つだけ覚えておくといい。平和というものは、その価値を知らない奴が守るものではない。それを脅かそうとする側にも必ず理由があることを忘れるな」
「そうだね、だからこそ」
ショウマは、そのまま真島を見る。
「俺がいるよ」
真島は満足げに笑みを浮かべた。
「なかなか面白いやつだな、坊主は。」
真島はゆっくりと微笑み、プリンの生地を型に流し込み始めた。
「さあ、完成までもう少しだ。甘さのバランスを見誤らないように慎重にな」
ショウマは真剣な表情で見守っていた。
こうして二人の奇妙な協力関係の中で作り上げられたプリンアラモードは、意外なほど完璧な甘さと見た目の美しさを兼ね備えていた。
「完成だ」
ゼンゼロから出る陣営は
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邪兎屋
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白祇重工
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ヴィクトリア家政
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特務捜査班
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カリュドーンの子