路地裏に金属音と爆発音が響き渡る。
「くらえっ!」
グロッタの大鎌が月光を反射しながら弧を描く。刃先が銀色の軌跡を描き、ヴラムの首筋目掛けて鋭く振り下ろされる。同時に——
「逃げられると思うなよ!」
ジープがベイクマグナムを連射。マグナムから放たれた弾丸が空気を切り裂き、ヴラムの周囲に着弾する。
ヴラムは微動だにせず、ヴラスタムギアのレバーを一気に引き倒した。
『スイーツタイム』
ベルト中央から閃光が迸る。光は幾筋もの触手となってヴラムの前方へ伸び、空中で硬化し始めた。触手は瞬く間に形状を変え、兎林檎のシルエットと生クリームの飾りが立体的に組み合わさった盾が完成した。
「なっ……!?」
グロッタの鎌が盾に食い込む。金属同士が擦れ合う耳障りな音と共に火花が散った。ジープの銃弾も盾に命中するが、盾表面で跳弾し、路地裏の壁にめり込んでいく。
ヴラムは盾に片足を掛け、一気に踏み込んだ。
「甘いな」
盾を蹴り台にして高く跳躍。身体が宙に舞い上がる。
それと共に、ヴラムの武器の一つであるヴラムブレイカーを、光の矢を射出する弓形態に変形させた。
「消えなさい!」
ジープが再びベイクマグナムを乱射する。ヴラムは空中で体勢を整え、弓を構えると、弦を強く引いた。
弓の先端に淡い光が集まり、鋭い矢が形成される。
ヴラムは弓を引き絞る動作と共に、ジープに向かって狙いを定める。弓の弦を離すと同時に、光の矢が一直線に放たれた。
矢は空気を切り裂き、ジープの放った弾丸と交錯。火花を散らしながら互いの弾道を打ち消し合い、最終的にジープの肩口を捉えた。
「ぐあっ!」
衝撃でジープの身体が大きく後方に吹き飛ばされる。地面に叩きつけられ、鈍い音が響いた。
一方、グロッタはヴラムの背後に回り込み、再び大鎌を振りかぶった。
「逃げるつもりか!」
鋭い刃がヴラムの背中に迫る。しかしヴラムは振り返りもせず、左手で盾を斜めに構え直す。盾が回転し、グロッタの大鎌を受け流す。
キィン!
甲高い金属音と共に鎌の刃が滑り、グロッタの体勢が一瞬崩れた。その隙をヴラムは見逃さない。
盾を握る手に力を込め、そのまま盾の角でグロッタの鳩尾を狙う。
「……ッ!」
グロッタは咄嗟に身を捩るが避けきれず、盾の先端が腹部に浅く突き刺さった。苦悶の表情を浮かべながら後退するグロッタ。
ヴラムは盾を握る手を緩めず、そのまま盾を地面に突き立てる。金属音と共に盾が固定されると、素早くジープが先ほど落としたベイクマグナムに視線を移した。
地面に転がる黒光りするマグナム。ヴラムは瞬時に判断し、盾を支点に体を捻りながら片手を伸ばす。
「……!」
ジープが吹き飛ばされた先で呻きながら顔を上げる。彼の目に映ったのは、自分の武器を悠然と拾い上げるヴラムの姿だった。
「おいおい……冗談だろ……」
ジープの声には明らかな焦りが滲んでいる。
ヴラムは手にしたベイクマグナムを軽く振るう。重量感と質感を確かめるように。
「ふむ……」
彼は銃口を無造作に空に向け、試しに引き金を一度引いた。
ズドン!
路地裏に轟音が響き渡り、弾丸が遥か彼方のビル壁を抉る。
「……銃というのも悪くないな」
ヴラムの口元が僅かに歪む。それは嘲笑とも満足とも取れる笑みだった。
「やはり銃の方が使いやすいな」
その一言はジープのプライドを直撃した。
「なめやがって……!それは俺の武器だ!返せ!」
ジープが激昂し、地面から立ち上がろうともがく。だが、ヴラムはそんな彼を一瞥するだけで、銃口をジープ本人ではなく、ちょうど彼の背後で体勢を立て直そうとしていたグロッタに向けた。
「グロッタ姉さん!危ない!」
ジープの叫びと同時に——
ズドン!ズドン!ズドン!
三連射。弾丸が空気を切り裂き、グロッタ目掛けて殺到する。
グロッタは表情を一変させた。鎌を構える暇もなく、咄嗟にジープとヴラムの間に割って入る。
「ッ!」
銃弾がグロッタの身体に次々と命中する。最初の一発が左肩を抉り、二発目が脇腹を掠め、三発目は右足に深々と食い込んだ。
「グロッタ姉さん!」
ジープの悲痛な叫びが路地裏に響く。グロッタは苦悶の表情を浮かべながらも、その場に踏みとどまり、ジープを庇うように両手を広げた。
グロッタは咄嗟に体勢を立て直そうとするが、ヴラムの連射は止まらない。
「ッ……甘く見るな!」
グロッタは歯を食いしばり、衝撃を受け流すように鎌を地面に突き立てた。衝撃波が周囲のコンクリートを砕きながらも、グロッタの身体はわずかに後退するに留まった。そして反撃の機会を伺い、鋭い眼光でヴラムを睨みつける。
だが、ヴラムは冷静だった。彼はプリンテゴチゾウの一部を器用に分離させると、それをベイクマグナムの薬室へと装填した。
『バーニング!フルエクスプローション!』
ベイクマグナムから重厚な電子音声が響き渡る。
ヴラムはその銃口を迷いなく前方――グロッタと、その後ろで起き上がろうとしているジープへと向けた。
「消えろ」
その一言と共に、引き金が引かれた。
ズガァァァンッ!!!
耳を劈く轟音と共に、ベイクマグナムの銃口から放たれたのは、今までの比ではない巨大な黄色の光線だった。それはまるで巨大な光の蛇のように路地裏全体を覆い尽くし、グロッタとジープがいた場所を飲み込んだ。
「くっ……!」
グロッタは咄嗟にジープを庇おうと覆いかぶさったが、あまりの衝撃と熱量に耐えきれず、二人の姿は光の中にかき消えた。
「・・・・・・逃げられたが、まぁ良いか」
彼は踵を返し、路地裏の奥へと歩き出した。その背後には、焼け焦げた痕跡と、巨大な光線の通った跡だけが残されていた。
ゼンゼロから出る陣営は
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邪兎屋
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白祇重工
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ヴィクトリア家政
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特務捜査班
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カリュドーンの子