昼間の陽光が届かない薄暗い地下施設。壁には無数の配管が走り、蒸気の音がかすかに響いている。中央にはニエルヴが愛用する巨大な実験机があり、その上には試験管や奇妙な装置が所狭しと並べられていた。室内には複雑な機械油と微かな甘い香りが混じり合っている。
「やあ、真島。約束通り持ってきてくれたね」
机の前に立つニエルヴは、手に持っていた小さな歯車を指先で弄びながら振り返った。切れ長の目に丸眼鏡。柔らかな笑みを浮かべているが、その奥の瞳はどこか異質なものを見透かすような冷たさを秘めている。
「……ジープのベイクマグナムだ。約束通り、な」
真島はロングコートの懐からそれを取り出し、机の上に無造作に置いた。銃口にはまだ硝煙がわずかに残っている。
「素晴らしい。これでデータ収集が捗るよ。君のその“偶然”を装った行動にはいつも感心するね。さすがは混沌を求める男だ」
ニエルヴは嬉々としてベイクマグナムを手に取り、レンズ越しに覗き込む。その手つきは重だが、明らかに機械への愛情が滲んでいる。
「感心するのはいいが、質問に答えろ。なんで弟の武器をわざわざ奪わせた?」
真島は腕を組み、壁にもたれかかる。声には若干の苛立ちが混じっている。ニエルヴの遠回しな物言いは、いつも真島の神経を逆なでした。
「ふふ、それはね、単純に“面倒”だからさ」
そうしながら、ベイクマグナムを見つめる。
「兄弟関係ってのは面倒だからね。素直に渡して欲しいと言っても、ジープはわざわざ手に入れた力を手放さないからね。だから、奪う事にしたのだよ」
そう言いながら、ニエルヴは手に持っていたベイクマグナムを分解し始める。細長い指が複雑な機構を丁寧に解体していく様は、まるで楽器を演奏しているかのようだ。カチリ、カチリと規則正しい金属音が地下に響く。
「兄貴に頼まれた弟が拒否するってか?グラニュートの倫理観ってのは理解できねえな」
「理解する必要はないよ。僕らは種族が違うんだからね。それに……」
ニエルヴはふと手を止め、レンズの奥の目を真島に向けた。
「真島くん、君だって“理解できないもの”のために動いているだろう?君の求める“バランス”とやらも、他人から見れば十分に異端だ。僕たちの違いなんて些細なものだよ」
穏やかな口調なのに、その言葉は鋭いナイフのように真島の胸を刺した。否定できない事実だった。自分もまた、誰にも理解されない狂気を抱えている。
「……勝手に言ってろ」
真島は視線を逸らし、窓もない部屋の隅を見つめた。
「本当に、あの坊主と兄弟なのか」
沈黙が二人の間に落ちる。その間にもニエルヴの手は休むことなく動き続ける。
「さて、こうしてデータは揃った。またあなたと実験出来るのは楽しみだよ、酸賀さん」
ゼンゼロから出る陣営は
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邪兎屋
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白祇重工
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ヴィクトリア家政
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特務捜査班
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カリュドーンの子