フルコースとライダーと学園生活   作:ボルメテウスさん

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恐怖の実験

ニエルヴがベイクマグナムから得られたデータをコンソールに打ち込み終えると、彼は満足そうに微笑んだ。

 

「いやぁ、こうやってデータが揃うと創作意欲が掻き立てられるね」

 

彼は目の前の巨大な円筒形の水槽に歩み寄った。内部には薄緑色の液体が満たされ、その中に一人の若い男性が浮かんでいる。

 

いや、それはもはや完全な人間とは呼べなかった。

 

背中からは昆虫の節足のようなものが蠢き、右腕は鋭い刃状に変形し、左半身は岩のような鱗に覆われている。頭部からは捻じれた角が三本、不気味に天井を指していた。

 

複数の異なるグラニュートの特徴が、まるで無理やり継ぎ合わされたかのように歪に共生している。

 

それらを、何度も外したり、装着などを繰り返し行っていた。

 

「お前、同じグラニュートの身体を、そんな事に使って平気なのか」

 

真島は思わずそう呟いた。その声には隠しきれない嫌悪と、僅かな怯えが滲んでいた。

 

「ん?何か言ったかな?」

 

ニエルヴは振り返らず、コンソールの数値を調整しながら答えた。

 

「彼らは皆、すでに命を終えているものたちだよ。僕が有効活用してあげなければ、ただ土に還るだけさ」

 

彼の口調はあくまで穏やかだったが、その言葉の意味するところは冷酷だった。

 

「それにね」

 

ニエルヴは振り返り、真島に向けた笑みはさらに深くなる。レンズの奥の瞳が妖しく輝いた。

 

「赤ガヴのように人間とグラニュートが合わされば、とんでもない強さになるのは知っているだろう?他のハーフグラニュートだってそうだ。だったら、種類が全く異なる複数のグラニュートを組み合わせたらどうなるのか……そんな興味に誰も抗えるはずがないだろう?」

 

ニエルヴはまるで子供が新しい玩具を語るような無邪気さで言った。

 

「赤ガヴは不完全な融合体だが、こいつは違う。僕が完璧に設計した最高の融合体だよ」

 

真島は言葉を失った。目の前で行われている行為は、生命への冒涜以外の何物でもない。だが同時に、その未知の力への好奇心が胸の奥で疼くのを感じずにはいられなかった。

 

「さあ、実験の成果を見せてもらおうか」

 

ニエルヴがそう言うと同時に、水槽のロックが解除される音が地下に重く響いた。プシューッという蒸気の抜ける音と共に、水槽の上部がゆっくりと横にスライドして開いていく。

 

ゴボゴボッ……

 

内部の緑色の液体が溢れ出し、床を濡らしながら排水溝へと流れ込んでいく。その液体の流れが作り出す湯気の中に、異形の存在がゆっくりと浮上してきた。

 

最初に見えたのは、水面から突き出した歪な腕だった。岩のような鱗に覆われた左腕と、金属光沢を放つ昆虫の節足が絡み合ったような右腕。次に、水面が割れるようにして顔が現れた。

 

それはもはや人間の顔の原型をとどめていなかった。中央には人間の眼球が二つ。しかし右半分は甲殻類のような無数の複眼がびっしりと埋め尽くし、左半分は岩の亀裂のようなひび割れから赤黒い組織が覗いている。額からは捻じれた三本の角が生え、呼吸をする度にそれぞれが不規則に蠢いている。

 

ゴボリ……ゴボリ……

 

まだ体内に残る液体が不気味な音を立てる。そして、水槽の中からゆっくりと、しかし確実に歩みを進めてきた。

 

その歩みは不自然だった。右脚は恐竜のような太い筋肉質の脚で地面を力強く踏みしめ、左脚は軟体動物のようにうねりながら引きずられている。体幹は人間のそれに近いが、背中からは何本もの触手のような器官が蠢き、それぞれが独立して周囲を探るように動いている。

 

「……こいつは……」

 

真島の喉が乾ききっていた。目の前に現れたのは、生命の摂理を嘲笑うかのような怪物だった。美しさなど微塵もない。ただひたすらに醜悪で、異様で、圧倒的な存在感。

 

その怪物が、突然、真島の方向へ頭を巡らせた。人間の眼球と、無数の複眼が一斉に真島を捉える。

 

ギギギギ……ッ

 

喉の奥から漏れるのは、金属が軋むような音。そしてそれは明らかに真島を認識している。

 

ニエルヴは狂気の色を隠そうともせずに叫んだ。

 

「素晴らしい!予想以上の反応だ!君の気配を感知したぞ!真島くん!」

 

「……ニエルヴ、お前……これは……」

 

真島は無意識に後ずさっていた。本能が警告を発している。こいつはヤバい。今まで出会ったどんな敵とも違う。理解不能な恐怖が背筋を凍らせた。

 

「さあ、どうかな?僕の傑作は」

 

ニエルヴは楽しそうに手を叩いた。怪物は依然として真島を見据えている。その歪な口が開き、牙が覗いた。

 

「……狂ってやがる」

 

真島の呟きは、怪物の低い唸り声と、ニエルヴの高笑いにかき消された。

 

地下施設の蒸気が立ち込める中、新たに生み出された異形の怪物がゆっくりと真島に歩み寄っていく。その足元からは粘液が滴り落ち、コンクリートの床に不気味な染みを広げていった。

 

「あぁ、そう言えば、こっちの方があなたには過ごしやすいはず」

 

そう言って、その怪物に、ニエルヴはミミック・キーを投げ渡す。

 

すると、その怪物はミミック・キーをそのまま装填すると。

 

「ふぅ、ニエルヴ君。これはさすがにびっくりしたよ」

 

「そうかい?それよりもどうだい?気分は?」

 

その怪物は、尋ねられると。

 

「・・・そうだね、あえて言うならば、さっさと、実験をしたくてたまらいね」

 

「さすがだね、酸賀さん」

ゼンゼロから出る陣営は

  • 邪兎屋
  • 白祇重工
  • ヴィクトリア家政
  • 特務捜査班
  • カリュドーンの子
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