フルコースとライダーと学園生活   作:ボルメテウスさん

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血のつながり

喫茶リコリコの押し入れ。そこはクルミが自身の根城とする、壁一面にモニターや機器が並ぶ秘密の部屋だ。昼下がりの穏やかな店内とは対照的に、ここには静かな緊張感が漂っていた。

 

「待たせたな」

 

ミカとライカンが押し入れから出てきたクルミを見つめる。

 

「見つかったのかね?」

 

ミカが静かに尋ねると、クルミは気だるげに視線を上げた。

 

「ああ。まあね。データは腐るほどあったけど……ライカンがくれたみちるって女の顔写真と、年齢、失踪時期……それらを照合して絞り込むのは骨が折れたよ」

 

そう言いながらも、クルミの指先は淀みなくキーボードを叩き、メインモニターにいくつかの情報が表示されていく。

 

「まずこれだ。井上みちる。失踪当時20歳。20年以上前の話だから、生存していれば現在40代ってところか。行方不明者リストには名前だけじゃ何百件も出てきたけど……」

 

モニターの一つに、若い女性の写真が拡大表示された。柔らかな笑顔を浮かべた女性。ライカンが息をのむ。

 

「……間違いございません。みちる様です」

 

「だろうな。そして、その兄だ。井上優。現在50代。都内で『ひだまり』って名のお菓子カフェを営んでる」

 

別のモニターには、初老の男性の顔写真と、可愛らしい雰囲気の小さなカフェの写真が映し出された。店の看板には確かに「ひだまり」と書かれている。

 

「『ひだまり』か……いい店名だ」

 

ミカが呟くと、クルミは肩をすくめた。

 

「まあな。で、この兄貴なんだけど……面白いことに、警察には妹は生きていると信じているって言って捜索願を出し続けてるらしい。店のブログにも時々『妹とよく食べた思い出のお菓子』とか書いてたりするぜ。よっぽど仲が良かったんだろうな」

 

その言葉に、ライカンの瞳が僅かに揺れた。ショウマの母が、人間界に大切な家族を残してきてしまったのだという事実が、改めて重くのしかかる。

 

「そして……これが偶然かどうかは知らないが……」

 

クルミが再びキーボードを操作する。新たな画面には地図が表示され、赤いピンが一つ刺さっていた。そのピンの場所は……

 

「文月学園のすぐ近くか……!」

 

ミカが驚きの声を上げた。文月学園といえば、ショウマたちが通う学校だ。

 

「ああ。まあ、都内に学園なんていくらでもあるからな。でも、ここまで条件が揃うと……何かあるんじゃないかって勘繰りたくもなる」

 

クルミは意味ありげにニヤリと笑った。

 

ライカンは静かに目を閉じた。ストマック家という因縁の場所から逃れ、人間界で新しい生活を始めたショウマ。その傍で、母親を失った悲しみを乗り越えようとしている。そんなショウマに、血の繋がった伯父の存在を伝えるべきか。そして、その伯父が近くにいるという事実。

 

「……クルミ君、ご苦労だった」

 

ミカは感謝の意を示す。

 

「この井上優という方に、我々が接触してみようと思う。無論、ショウマ様には気づかれぬようにな」

 

ライカンが静かに言った。

 

「そりゃ当然だろ。あの坊主には余計な気を遣わせたくないしな」

 

クルミは椅子をくるりと回し、再びモニターに向かう。

 

「で?具体的にどうするんだ?いきなり喫茶店に押し掛けるわけにもいかないだろ」

 

「まずは、客として訪ねてみるのが無難でしょう。我々が突然現れて事情を説明するより、まずは様子を見てみたい」

 

ライカンの提案に、ミカも頷いた。

 

「そうだな。優殿がみちるさんを今でもどれほど気にかけているか……そして、もしショウマ君の存在を伝えるにしても、慎重に進めねばならん」

 

「りょーかい。じゃあ、僕はそこまでだ。あとはあんたらの領分だろ。せいぜい頑張ってくれ」

 

クルミはそう言うと、興味を失ったかのようにキーボードから手を離した。しかし、その表情はどこか満足げにも見えた。

ゼンゼロから出る陣営は

  • 邪兎屋
  • 白祇重工
  • ヴィクトリア家政
  • 特務捜査班
  • カリュドーンの子
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