ひだまりの前まで来たショウマは扉を開けようとする手を止めていた。
優の思いを知ってしまった今、一体どうすればよいのだろうか。
「入らないの?」
「・・・エレン」
その時不意に背後からかけられる声。
振り返るとそこにはエレンがいた。
「別にアンタがどういう選択を選ぼうが勝手だけどね」
「・・・」
「ここまで来ておいて帰るのも勿体無いと思わない?」
そう言いながらエレンはショウマの肩に軽く触れる。
まるで押すようにして前へ進めと言わんばかりだ。
それを見て観念したのか小さく溜息を漏らしつつゆっくりと足を動かすのであった。
そんな様子を見たエレンはニヤッと笑みを見せたあと静かに背中を押すようにして店の中へと誘導していくのであった。
そして遂に辿り着いた店内に入ると厨房の中で働いていた男性―――優と目が合った瞬間思わず息を飲んだ。
「いらっしゃいませ!」
明るく元気良く接客するその姿は紛れもなくみちると同じであり。
「あれ、ショウマ君じゃないか、それにそっちの子は」
「えっと、この子は」
「同級生のエレンです、別に気にしないでください」
エレンはすぐに自己紹介を終えてさっさと席へと歩いて行き席についた。
ショウマもそれについて行くように歩く。
「今日はどういった用件かな?まさかまた店でアルバイトとかじゃないよね?」
「違いますよ。今日はちょっと相談したいことがあるんです」
「そうなんだ……でも丁度よかったかもしれないな」
「何故ですか?」
「実は今日新商品を出したところでね!是非試食をお願いしようと思ってたところだよ!!」
そう言うと早速冷蔵庫の中にしまってあったものを取り出す。
それと一緒にテーブルに並べられていく数種類のカップに入ったものを見る限りどうやらケーキなどのデザート類らしいことがわかる。
「これ全部食べて良いんですか!?」
興奮しながら聞くと満面の笑みとともに首肯してくれるので遠慮なく頂戴することにする。
目の前に置かれている物一つ一つに対して美味しくいただいていくと次第に幸福感に包まれていった。
(凄く……甘くて優しい味付けになってるな)
素材本来の旨味を活かしたものとなっており口に入れた途端溶けてなくなってしまう程の軽さを持っていることに驚愕させられたほどだった。
しかも何より驚愕すべき点といえばこの味わいを作り出した張本人が目の前にいるということなのだ。
これを食べた時に感じた衝撃以上のモノがあるわけがないと思った程だ。そんな気持ちにさせるほどの代物なのである。
そう感じると共にお腹だけでなく胸の奥底から熱いものが込み上げてきたような錯覚さえ覚えてしまっていたくらいであったのだ。
「どうだった?」
優は尋ねてくる。
その表情は非常に穏やかなものだったのだが同時に不安そうなものにも見受けられるものだったのが印象的であったように思われたのだが気のせいだろうか?
などと思っているうちにショウマは我に返ったので素直に今の心情を告げることにしたのである。
「とても美味しかったですよ」
それを聞いた途端パァッと花開くように晴れ渡った眩しい光景が広がっていったのであった。
これが本物というものなのかと改めて認識させられたと言ってもいいだろう。それくらい素晴らしい瞬間であったように思われる部分があったということでもあるのだが……。
「・・・そう言えば優さんって、なんでこの店の店長をしているんですか」
そうして、エレンはふと疑問を浮かべる。
「ん?ああ……」
優は少しだけ考える仕草を見せた後語り始めることになるのであった。
ゼンゼロから出る陣営は
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邪兎屋
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白祇重工
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ヴィクトリア家政
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特務捜査班
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カリュドーンの子