「ショウマくん遅いぞ〜!もうランチタイム終わっちゃうじゃん!」
喫茶リコリコの扉を開けると、カウンター越しに千束の文句が飛んできた。コーヒー豆を挽くミカの背中と、洗い物をするたきなの姿が見える。普段と変わらない店内の空気に、ショウマは無意識に肩の力を抜いた。
「すみません……ちょっと考え事で」
「え?どうしたの?なんか元気ないね」
千束が心配そうに近づいてくる。ショウマは俯きながら唇を噛んだ。話すべきか迷う。雲嶽山に行くということは、自分がさらにグラニュートとしての力を求めるということ。二人にどう思われるか……
「……相談があります」
ショウマの真剣な声に、千束とたきなは顔を見合わせた。ミカもコーヒー豆を挽く手を止め、こちらを見ている。
「ボッカ・ジャルダックっていうグラニュート界の大統領が……人間界を闇菓子の原料にする"人間牧場"にしようとしています」
説明しながら震える声が漏れる。
「奴を止めなきゃならない。でも今の俺じゃ力不足だって……柚葉さんが」
「柚葉?」千束が眉をひそめる。
「浮波柚葉。ハーフグラニュートです」たきなが補足する。
「で、どうすんの?」千束が核心を突く。
「……雲嶽山に行って修行して強くなります」
決意を込めて言ったつもりだったが、声は弱々しかった。心の迷いが滲んでいた。
「ショウマくん……」
千束の表情が曇る。弟のように可愛がっていた少年が、再び危険な戦いに身を投じようとしている。
「危ないよ……グラニュート界の大統領なんて……」
「それでも!」
ショウマが拳を握りしめる。
「人間もグラニュートも、みんな苦しんでる……俺だけ何もしないなんてできない!」
叫ぶような声が店内に響いた。
「……ショウマ君」
たきなの声は静かだった。
「あなたのその気持ちはわかります。ですが無謀ではありませんか?」
正論だった。だがショウマは引けなかった。
「……いいよ、行ってきな」
千束の声が不意に柔らかくなった。
「でもね、一人じゃダメ」
「千束?」
「私も一緒に行くよ」
突然の宣言にショウマは驚愕した。
「千束さん!それは……」
「だってほら、人間の盾が必要でしょ?それに」
千束はニヤリと笑った。
「可愛い家族の修行だからね、私も行かないとね!」
「……私も同行します」
今度はたきなが言った。
「あなた一人だと無茶する。それに」
眼鏡を押し上げ、真っ直ぐショウマを見つめる。
「あなたに何かあった時、誰が人間界を守るんですか?」
二人の言葉が胸に染み込んだ。迷いは消えていた。
「……ありがとうございます」
深く頭を下げたショウマの声は、決意に満ちていた。
「決まったか?」
ミカが穏やかに微笑む。
「行ってこい。ただし」
ミカはコーヒーカップを差し出した。
「この一杯飲む時間だけは確保しなさい」
「……はい!」
三人の笑顔が交差した。危険な旅が始まる。だが孤独ではない。
ゼンゼロから出る陣営は
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邪兎屋
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白祇重工
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ヴィクトリア家政
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特務捜査班
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カリュドーンの子