喫茶リコリコから忽然と姿を消した三人が辿り着いたのは——鮮やかな緑が眩しい山岳地帯だった。
「これが……グラニュート界?」
千束が目を丸くするのも無理はない。街は中世ヨーロッパの絵本から飛び出したかのような石畳の路地に三角屋根の建物。
「なんというか、これまた映画のような光景のような感じですね」
「うんうん!けれど、結構ファンタジーって感じでいいじゃん!」
千束は目を輝かせながら辺りを見回す。まるでテーマパークにでも来たようなテンションだ。
「それにしても……」たきなは周囲のグラニュートたちを観察しながら呟く。
「まるで私たちがいることが当然のようですね」
そう。通行人も商店の主人も、誰一人として驚いたり振り返ったりしないのだ。
それは——。
「変装用の服のおかげですよ」
柚葉が得意げに言った。喫茶リコリコの地下工房で製作した衣装は、グラニュートの生態を完璧に再現していたのだ。
「しかし本当に違和感がない……」
ショウマも自分の手や鱗のような肌を見て唸る。
「この技術……すごいなぁ」
「当たり前でしょ!」柚葉が胸を張る。「何せこの天才ハッカーの柚葉様が考案したんだから!」
「それよりも早く行きましょう」
たきなが先導する。
「ショウマさんの時間が惜しいですし」
「うん。行こう!」
千束も鼻歌混じりに歩き出す。一行の目的地は霊峰——雲嶽山。
鬱蒼とした森を抜けると突如として現れる朱色の建物が見えた。山門風のアーチをくぐると中華風の寺院群が広がっている。
「うわぁっ!!カンフー映画に出てきそう!」
千束は目をキラキラと輝かせている。
「これは……本物ですか?何かのセット……とか?」
たきなも興味津々だ。
「違うよ」
柚葉が苦笑する。
「ここが"適当館"。あの建物の名前は『適当観』っていうのよ」
「てきとう……かん?」
ショウマは首を傾げる。
「そう。この雲嶽山に昔の人が道場を建てようとしたとき、土地探しをしてたんだけどさ」
柚葉が説明を始めた。
「ある日、地主さんに『ここに建てるの?』って聞かれてね」
「地主さん……?」たきなが怪訝な顔をする。
「ほら、こういう山だからさ。昔はやっぱりこういう場所にも住んでた人たちがいたんだろうね」
柚葉が納得したように頷く。
「で、その時の先人は『まぁ適当に決めましたけどね』って答えたんだって。だから道場の名前も『適当観』になったの」
「へー!なかなかユニークな名前ですね!」
千束は嬉しそうに手を叩いている。
「でも……本格的な道場っていうよりは神社のような作りですね」
たきなが建物の詳細を眺めながら言う。瓦葺きの屋根に紅白の装飾。
「あれっ!もしかして、ショウマさんですね!」
「うわっと!」
すると、建物の扉から出てきたのは虎の耳が特徴的な少女が1人。
「えっと、はい、そうです」
「お待ちしておりました!私!橘福福です!」
そう、元気そうに挨拶を行う橘福福を見た一同の答えを代弁するように。
「可愛いでしょう」
柚葉が悪戯に成功したような笑みを浮かべる。
ゼンゼロから出る陣営は
-
邪兎屋
-
白祇重工
-
ヴィクトリア家政
-
特務捜査班
-
カリュドーンの子