「本当、今日は、色々とありすぎでしょう」
千束は、そう愚痴りながらも、文月学園へと向かっていた。
私立文月学園。
見た目は普通の校舎。
試験召喚システムと呼ばれる特殊な制度を導入している関係上かなりの防音性を備えた新校舎と、導入以前から存在する旧校舎が存在し、両校舎は廊下で繋がっている。
だが、深夜である事も含めて人の影はなく、明かりが灯っていない廊下はどこか不気味さを感じさせる程だった。
そんな場所に、千束は周囲を見渡しながら、警戒している。
彼女が、ここに来たのは、とある噂を元に、既に幾度となく起きている不可思議な誘拐事件の解決の為である。
千束は、喫茶『リコリコ』の自称看板娘として親しまれる一方、実は”史上最強”と称されるDA屈指のファーストリコリスである。
しかし、この深夜は、ある意味、彼女の最大の力を発揮できない場所でもあった。
「けど、こういう場所で、お化けとか出ないか、不安になるよね~」
そう言いながらも、彼女は周囲を警戒しながら進んでいく。
すると、そんな中だった。
誰もいないはずの場所で、何か変化を感じた。
「えっ?」
その違和感はすぐに理解出来た。
周囲を見ると、そこには、通常とは違う空間。
その違和感に最初に気付くと共に。
「これって、確か召喚フィールドだっけ」
それは、この文月学園の特徴である試験召喚獣を召喚する為のフィールド。
だが、無人であるはずのここに、それが現れるのか。
僅かな疑問を思うと共に、聞こえてきた足音。
同時に見つめた先には、一人の男性がいた。
「えっと、関係者の人でしょうかぁ?」
千束は、そう、なるべく怪しまれないように笑みを浮かべる。
眼前にいるのは、眼鏡を掛けたぼさぼさ頭の男性であり、不気味な雰囲気を出していた。
「ここは、良いよなぁ」
「えっ?」
突然の言葉に、千束は、首を傾げる。
「他の場所から出るよりもずっと出やすい。おかげで、ここだったら、思いっきり力を解放出来る」
「何を言っているの?」
男は独り言をぶつぶつと言う。
その目は明らかにやばく、薬物中毒に近い状態だと分かる。
「特に、お前のような幸福な人間を見つけやすくて、闇菓子の材料にぴったりだからなぁ!!」
笑みを浮かべると共に、男は自分の服をめくると、そこから出てきたのは口。
疑問に思った千束だが、その口から飛び出てきたのは舌。
驚きは一瞬。
だが、瞬時に、後ろにある鞄から取り出したのは銃弾。
迫る舌は、千束を捕えるように向かってくる。
だが、千束は、その舌に対して、躊躇なく引き金を引く。
「なっ、がぁ!?」
まさかの反撃に驚きながら、男は後ろに下がる。
「うわぁ、びっくりしたぁ、まさかお腹に口があるなんてぇ」
二回目じゃなかったら、動けなかったという言葉を出さずに、そのまま構える。
「それで、あなたは一体何者なの?」
「ちっ、材料の癖に、逆らって」
「材料って、一体」
そのまま、男が口の中にある何かを取り出した。
それと共に、男の身体は一瞬で変わる。
「うそ」
それは、一言で言えば、茶色い犬人間。
狂暴な見た目をしているその怪物は、千束を睨んでいる。
「本当に、最高の闇菓子になりそうだなぁ」
そうしながら、怪物は迫る。
それに対して、千束はその手にある銃の引き金を引く。だが、弾丸はその身体に突き刺さる事なく弾かれる。
それだけではなく、先ほどよりも速い速度で接近してくる。
そして、その巨大な拳を振るってきた。
咄嗟に回避するが、僅かに掠っただけでも吹き飛ばされそうになる程の衝撃が走る。
(これは、ちょっとやばいかも)
そう思いながらも、なんとか距離を取る。
それでもなお、相手は追いかけてくる。
牽制を行いながらも、この事態の打開を考える。
そうしている間にも、千束に重い一撃が放たれる。
慌てて避けるが、風圧だけで身体が持って行かれそうな威力だ。
それをギリギリ避けながら、更に距離を離す。
しかし、このままではジリ貧だという事は分かりきっていた。
(あの攻撃、まともに喰らったらひとたまりもない)
このまま逃げ回っていても埒が明かないと考えつつも、どうやって対処するかを考えていくが。
そんな時だった。
怪物が次の攻撃を仕掛けようとした時だった。
「千束!」「えっ!?」
聞こえた声、それと共に、窓を突き破って、怪物を吹き飛ばした人物。
その人物に、千束は驚きを隠せなかった。
「ショウマ君!なんで!」
なぜ、ここにショウマが来ているのか、思わず叫んでしまう。
それに対して。
「千束が、朝、ミカさんと話しているのを聞いたから、気になってついてきた」
「嘘」
あの時、会話を聞こえないように注意したはずなのに、どうして聞こえていたのか。
だが、今はそんな疑問を抱いている場合ではない。
ショウマの登場によって、状況は大きく変化したのだから。
「ぐっ、貴様ぁ」
先ほどの一撃で壁に叩き付けられた怪物は、ふらつきながら立ち上がる。
その身体は傷付いているように見えるが、まだ戦えるようだった。
だが、それよりも問題なのは、目の前の存在に対して怒りを露わにしていた事だった。
それは当然だろう。自分に対して攻撃をしてきた相手なのだから。
だが、それ以上に脅威を感じているのは。
「なんだっ、その赤いガヴはっ!?」
「ガヴ?」「んっ?」
怪物は、ショウマの腹部にある物の正体を知っている様子。
「まぁ、どちらでも良い!さっさとどけ!そこいる奴は、俺が闇菓子を手に入れる為の材料なんだよ!」
そう、ショウマに向けて叫ぶが。
だが。
「嫌だ!千束を渡してたまるか!何よりも闇菓子って、なんだよ!」
その言葉に千束も同じだった。
「はぁ、グラニュートの癖に知らないのか」
「ぐらにゅーと?」
また聞いた事のない言葉に、ショウマは首を傾げる。
「どちらでも良い、ただ、そこにいる女を渡さないんだったら、お前を始末して、俺が頂く!」
そう言った怪物は、本気だった。
すると、妖精が、ショウマの肩に乗る。
「えっ、使え?」
そう、ショウマに、何かを語り掛けた。
ゼンゼロから出る陣営は
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邪兎屋
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白祇重工
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ヴィクトリア家政
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特務捜査班
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カリュドーンの子