仮面ライダーラインス 作:電化製品
拙い文ですが、どうかお付き合いください。
都会の夜景も静まるほどの深夜。
その場を照らすのは月明かりと普通より数の多い街灯のみ、場所はとある工事現場……そこで、一体の化け物か謎の人影に殴られ、大きく転がる。
その怪人は、両手が蝙蝠の羽の様な形をしており、顔は蝙蝠の耳のような大きなパーツがつけられた、メカニカルな怪物だった。
胸にあるバルブのようなパーツがワンポイントになっており、何処かスチームパンク味を感じるデザインだ。
しかし、彼を殴るたびに吹き出すのは、蒸気ではなく電流……殴るたびに鮮血のように赤い電流がバチバチと唸る。
そんな蝙蝠の怪人を責め立てるは、一人の仮面の戦士――黒いアンダースーツの上に、クリアなオレンジの色の装甲、節々に稲妻の様なマークが刻まれている。
頭部は銀色のヘッドフォンの様なパーツと、顔面から頭頂部に掛けて伸びる装甲、黒く染まった大きく目立つ瞳が特徴的だ。
腰にはベルトが巻かれており、そのベルトは中心にプラグが、それを守るように黒鉄のアーマーに黄黒のラインがテーピングされていた。
その仮面の戦士は、電流を唸らせながら目にも止まらぬスピードで蝙蝠怪人へと近づくと、その胸元に鉄拳を叩き込む。
これまでも何度も殴られたであろう蝙蝠怪人は、胸のアーマーにはヒビが入り鮮血の様な電流を流しながら大きく吹き飛ぶ。
「ぐぁぁぁぁ!?き、貴様ぁ!?一体何者だ!?」
雄叫びの様に叫ぶ蝙蝠怪人、その怪人の問にその仮面の戦士は少し立ち止まると……少しして声を上げた。
「……菫コ縺ッ莉ョ髱繝ゥ繧、繝?繝シ繧ィ繝ャ繧ッ繧ケ」
しかし、上げたその声は到底聞き取れるものじゃなくノイズが入ったり無駄に甲高かったりと、とても言語には出来ないような言葉……否、音声だった。
「な……なんと言った!?」
仮面の戦士は、蝙蝠怪人の困惑混じりの言葉を無視してベルトを操作する……プラグを差込口ごと左側にレバーのように持ち上げて、再び下ろす。
《プラグ!クラッシュ・ブレイク!!》
その音声と共に、仮面の戦士の周りがバチバチと唸る。
まるで稲妻の柱の様なエネルギーが仮面の戦士の周りに浮かび上がり、仮面の戦士は右足を前に出して力を込める。
稲妻は右足に吸い込まれるように吸収され、その足には青白い電流が纏わりついていた。
「……ッ!」
仮面の戦士が右足を踏みしめて地面を蹴り上げると、一瞬で仮面の戦士は蝙蝠怪人の前まで移動した。
まるで瞬間移動かと思ってしまうが、舞い上がる砂埃が瞬間移動ではなく、ただの
仮面の戦士は飛び掛かる勢いのまま右足を蝙蝠怪人へと叩きつけて、大きく蹴り飛ばす。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!?」
蝙蝠怪人は大きく吹き飛び、コンテナに衝突……激しい砂埃が舞い上がった。仮面の戦士は、蝙蝠怪人から振り向いて、スタスタと歩き始める。
「ぐぅ……くそぉ……クソぉぉぉがぁぁぁ!!!!」
コンテナに叩きつけられた蝙蝠怪人は、体中がひび割れてボロボロと崩れ落ちていく……体全身から赤い電流が流れている。
上げることができるのは、相手の敗北の姿すら確認せず悠々と後ろ姿を向けて立ち去るその仮面の戦士に対して、悔しさをにじませた声を上げる事だけだ。
……そして、次の瞬間蝙蝠の怪人は爆破。同じように、赤い稲妻が、人によっては飛び散る血液にも見えることだろう。
そんな赤い稲妻の端で、一匹のコウモリが闇の夜空へと飛び去っていった。
スタスタと歩く仮面の戦士……爆炎を背景にしたその人影は、次の瞬間仮面の戦士に走る稲妻と共に、その姿を透明にして消してしまった。
まるで、初めからそこにいなかったようにすら感じる。
そんな一連の戦いを捉えていたものはたった一つ……工事現場に設置されていた監視カメラだ。そのカメラだけは、事の顛末を1から百まで捉えていたのだった。
……さて、舞台の紹介が遅れた。この街の名は
街並みの特徴としては……家電量販店が多いのと、あと無駄に街灯の数が多いと言うのもある。おかげで夜も見渡しは良い。
まぁ、それくらいしか特色に上げることのない普通の街だ。
しかし、そんな街に最近とある噂が流れてくる……ハンドルを体につけた怪物達、そしてその怪物の戦う仮面の戦士。
色々な所で目撃例のある話だ。怪物と仮面の戦士――仮面ライダーと呼ばれる存在が日夜戦い、人々の自由と平和を守っている。
そんな特撮のような話だ。
普通ならばそんなことは絵空事……オカルトの一つにしかならないのだろうが、良くも悪くも、その出来事は現実に起きている。
この才都でもまた然り。先の話の通り最近、バルブを体につけた怪物が人々を襲う様子が、新聞やニュースで知らされている。
そして、そんな怪物達と戦う仮面ライダーも存在していた。
△▽△▽△
「知ってる!?最近噂の仮面ライダーに怪物!」
「知ってるって言うか、ニュースになってるからなぁ。」
日時は梅雨明け、ジメジメとした空気感が夏の日差しでカラッと乾かされるそんな頃。
二人の少年少女が通う学校からの帰り道を歩いていた。少年の方は、少しはねた癖っ毛にオレンジがかった髪が特徴的な少年……背はかなり高めで、180cmの大台に突入しそうな程だ。
対して少女の方は若干小柄で、160cmは無いと思われる程度には小さい。メガネを掛けて、三つ編みした黒髪の毛とタレ目が特徴的だ。その手には怪しげなオカルト雑誌が握られていた。
2人共灰色の制服を着ており、その首には紺色のネクタイが結ばれていた。
少年の方の名は『
……二人の関係は家が近所の、所謂幼馴染と言うのがある。それだけなのであるが……難の因果か高校まで同じ学校に通い続けている。縁とは実に不思議なものだ。お互い示し合わせたわけでもないのに……
来駕は、摩耶の話を広げるように首を回しながら呟く。
「今朝もやってたろ。工事現場で蝙蝠の怪人と……その、仮面ライダー?って奴が戦ってる映像が。」
何度か繰り返すが、この才都では最近未確認の怪物が人を襲ったり、仮面ライダーと呼ばれる存在と酷似した謎の怪人と戦っている様が度々確認されている。
摩耶は笑顔になりながらウンウンと頷く。
「仮面ライダー!やっぱり実在してたんだ!都市伝説じゃなかった!」
「仮面ライダー……かぁ。」
悪を倒す正義のヒーロー。
やっていることだけを上げれば陳腐なヒーローだが、なぜそうまでして敵を倒すのだろうか。
来駕としては、そこが気がかりだ。何のためにそんな事をしているのか……何が目的か、気になりはする。
そんな風な事を考えている来駕を他所に、摩耶はお気に入りのオカルト雑誌を胸に抱き寄せて、まだ見ぬ存在に夢を踊らせる。
「あぁ、仮面ライダーに謎の怪人!世の中には謎や不思議なことがいっぱい!ふへへ……」
「謎や不思議な事ねぇ……お前そういうオカルト系好きだよな。」
「まぁねぇ、謎があるっていいじゃん!ロマンとかあってさ!」
「ロマンかぁ。」
来駕は腕を頭を後ろに組んで歩く……すると、ニカッと白い歯を見せて笑いながら声を上げる。
「まぁ、確かにロマンあるよな!」
すると摩耶も笑顔になり、うんうんと頷いてくる。摩耶をオカルト好きと称したが、来駕もオカルトは嫌いではない。
夢は広がるし、ロマンがある。世界観が広がる。それだけで人生は案外楽しくなるのだ。正直、来駕にはこれといって夢中になれる……世界を広げる物がない。
そう言う面では、来駕は摩耶の事を尊敬しているし羨ましくも思っている。
「来駕も読む?貸そうか、ウチのオカルト雑誌!」
「前借りたのあんまり肌に合わなかったんだよなぁ。陰謀論色が強すぎて。」
「あぁ、わかるかも。私もどちらかと言ったらUMAとか都市伝説的なのが好きだからなぁ。」
2人は会話を続けながら道を歩いていく……ある程度道を進んだ所で、来駕は摩耶と分かれ道を行く。
摩耶の家は来駕の家の近所にあるにも関わらず、だ。
しかし、摩耶はその行為に対して疑問も持たないいつものことだからだ。来駕は去る前に摩耶に声を掛ける。
「んじゃ、俺は今日
「うん!……私も今度会いに行こうかな?」
「おう、そうしてやってくれ。あいつも喜ぶ。」
そう言って、来駕はニッコリと笑ってみせて手を振って足早に立ち去った……。
来駕はスタスタと歩みを続けながら、仮面ライダー――ヒーローと言う存在を思い浮かべて、心の中で思いの丈をぶちまける。
(ヒーロー、か。聞いてみたいな……
それが、どれだけ無茶苦茶な理論か来駕は理解している。だからこそ胸の内にお留めておくだけだ。言葉にしてしまっては、八つ当たりも良い所だ。
……来駕は、そんな思いを胸に足早へ妹のいる場所――才都労災病院へと向かうのだった。
△▽△▽△
才都の地下に張り巡らされた下水道。様々なものを煮詰めた悪臭が辺りを包み込む中で、そんな悪臭を物ともせずゴミを漁り餌を探す畜生がいた。
ドブネズミだ。そのドブネズミは、本当に従ってひたすらに餌を探し続けている。明日を生き残るために………しかし、そんなドブネズミを狙う影があった。
それは、赤い電流都共にその姿を形つくりその場に現れた。それは、才都で見られる怪物の持つバルブ都同じものだった。
そのバルブは、ドブネズミに狙いを付けると勢いよくそのネズミに突き刺さりゆっくりと、しかし確実に回り始めた。
ドブネズミは何か声を発する間もなく、その体を赤い稲妻に包まれて、徐々にその姿を元のドブネズミよりも巨大に、強く、逞しく育たせ、怪物――
その様子を見つめるものは……この場所にたった一人。水流を挟んで向かい側にいる、青白い電流の塊だ。
その青白い電流は、勢いをつけて赤い稲妻に包まれたドブネズミへと突撃するが、あっさりと弾かれてしまう。青白い電流は、その光景をただ見ていることしかできなかった。
心の中は、ドブネズミがみるみる内にバルブのついた怪物になるのを見るしかない現状に、苦虫を噛み潰したような思いだ。
そして、青白い電流の塊は、たしかに持ったその意志の中、心の中で呟く。
(……次の実体化まではまだ時間がかかる。早く見つけなくては……
青白い電流は、そんな覚悟を決めながら……ドブネズミが等身大の大きさに変身し、醜いネズミの怪物になるのをじっと見つめていた。