ダンガンロンパXXX   作:Krk

10 / 19
※※注意※※

残酷な描写が含まれます。

閲覧時はご注意ください。






第一章 おしおき編

「議論の結論が出たみたいですね。では、そろそろ投票タイムといきましょうか!」

「オマエラ、お手元のスイッチで投票してくださーい!」

 

「では、張り切ってまいりましょう!投票の結果、クロとなるのは誰か!?その答えは、正解なのか不正解なのか……」

 

「さっ、いってみよーっ!」

 

 くるくると、スロットが回り……。

 声野の顔が、映し出される。

 

「だいせいかーい!」

「甘井めうさんを殺したクロは、声野美遊さんなのでしたー!」

 

「声野……」

 青空の震えた声が漏れる。

「ど、どうして、殺人なんて……」

「…………」

 声野は俯いたまま……しばらくして、ぽつりと話し始めた。

「私だって……。殺したくなんてなかったですよ……」

 

「めうって……あの子って、昔っからああなんですよ。世間知らずで何かズレてて、能天気で人好きで、人懐っこくて」

「……そのくせ、ひとの気持ちなんて、全然分かんなくて」

 

「“Mew”だって、あの子が勝手に気に入ってただけで……。『めう』と『みゆう』どっちもいっぺんに表せて、すごくない?なんて……」

「……私その呼ばれ方、嫌だって何回も言ったのに」

 

「……私、必死だったのに……」

「こんな所、出たくて出たくて、しょうがなかったのに……っ」

「今日だって、ほんとはお仕事いっぱいあるのに……」

「“みゆゆん”のファンでいてくれる皆のために……。でも、皆は私だけのファンじゃないから……飽きられないために、私、休んでる余裕なんかないのに……!」

 

「こんな所で、こんな事やってる暇っ、私にはないのにっ!!」

 

 ……それは、声野の魂の叫びだった。

 

「でも、殺人なんて出来る訳なかった……一生懸命調べたんです。脱出のヒントはないかって……あのビデオだって、どうかなりそうなのを我慢して、何回も何回も見て……」

「だから…期待なんてしてなかったけど……。あの子が私以上に必死になって調べるはずないから……私の気付かなかった手がかりを、あの子が見つけたなんて、思ってなかったけど……でも、もしかしたらって……。藁にも、縋る思いで……あの子の呼び出しに、応じました」

 

「そしたら……あの子、言ったんです。嬉しそうな顔して……。『見て、わたしのビデオ、美遊も映ってるよ!』……って」

「……こっちは、昔の学校での事なんて、思い出したくもないのに」

 

「……それであの時、頭が……一瞬、真っ白になって…………」

「気が付いたら……めうが、倒れて、動かなくなってて……」

 

「じゃ、じゃあ、あんたは……。私達ほかの全員のことも殺そうと……!」

「……そうですよ」

 声野は顔を上げると、自嘲気味に笑みを浮かべた。

「そりゃあ……殺しちゃったんだから……『殺せちゃった』んだから。後付け条件出されようが、こっちに賭けますよ」

「そりゃあ……昨日今日会った十何人の命より……何万人のファンと、自分の将来を選びますよ……!決まってるじゃないですか!?」

 

 

「でも、まあ……意味ないですけど。結局……結局、死んじゃうんですもんね、私」

「そーですね!」

 モノクマが、白々しい声で相槌を打った。

「……ま。負け犬の独白なんて、皆キョーミないしねえ」

「皆が興味あるのは……その先ですからっ!」

 

「……てな訳で、張り切っていってみましょう!」

 

「おしおきターイムッ!」

 

 

【熱演】

超高校級の声優:声野美遊処刑執行

 

『あっ……えっ……?』

 

 突然現れた謎の鎖に連れ去られ、声野の姿は見えなくなった。

 だが、その声だけが聞こえてくる。

 裁判場一体に鳴り響くような、スピーカーを一杯に使ったような音量が鼓膜を揺らす。

 

『こ、ここは…………』

『っ!?』

 

『きゃああああああああああっ!!』

 

「!?」

 突如、耳をつんざくような悲鳴が響き渡った。

 それと同時に、ボウボウと、空気を揺らす音が聞こえてくる。

 

 何かが……『燃えて』、いるような。

 

『あ……ぁああ…………!″熱い″!』

『あぁあああっ!あつい、あついあつい!助けて、開けて!ここから出してえっ!』

 絶叫と、必死に壁を叩くような音が響いている。

「ひ、ひぃいいっ……!」

「やっ……やだやだ…っ!聞きたくないよお!」

 

 生徒のほとんどは、必死に耳を塞ぎ、少しでも声を聞かないようにしている。

 明日家は気丈に振る舞ってはいるが、組んだ腕がガクガクと震えている。

 尾後と高梨は不快そうに眉を寄せ、顔を背けている。

 南界は……。

 

 南界レイコは、これがまるで何事もない日常であるかのように目を細め、薄く微笑んでいる。

 僅かながらでも見知った人間が凄惨に殺されようとしている事など、気にも留めていないようだった。

 

『あぁ、あつい……たすけて!おねがい……っ!』

 

『げほ……っ!こ、このままじゃ、ほんとに…………!……あ……』

 

『死んじゃうんだ……私、ほんとに…死んじゃうんだ……あ、はは、は……』

 

『あぁああ……!なんにも……!何にもいいこと無かったなあ!こんなもんなんだあ、私の人生……!』

 

『げほっ、げほ……!』

 

 無限と思えるほどの地獄の中、徐々に声と音が弱まっていく。

 弱々しい喘鳴だけが、それでもはっきりと聞こえてくる。

 

 

『見通、くん……』

 

「…!」

 

『わ、たしのこと……覚えてて、くれる……?』

 

『私…わた、し……何にもなれなかった……。だから、せめて…………』

 

 

 

 

 

『あなたの傷になりたいな……』

 

 

 ドサリ、と倒れるような音が響いた。

 それを最後に、耳を塞ぎたくなるような声が止む。

 

 痛いほどの沈黙ののち……ゴドン、と『何か』が、落ちてきた。

 

 赤いブレザー……だったもの。

 肉の焦げた、吐き気のする匂いが鼻につく。

 長く艷やかだった髪も、白く健康的だったはずの肌も。生真面目だったその顔も。全て焦げ、燃えて、爛れてしまっているものの。

 それは……かろうじて、だがどうしようもなく彼女だと分かる、焼け焦げた声野の成れの果てだった。

 

 阿鼻叫喚とした悲鳴と、誰かの嘔吐する音が耳を通り抜けていく。

 俺はただ呆然と、声野の亡骸と、最期の言葉を頭に巡らせていた。

 

 

『わたしのこと、覚えてて、くれる……?』

 

『……、だから、せめて…………』

 

『あなたの傷になりたいな……』

 

 

『見通くん……私……』

 

『ヒロインになれると思ったのにな……』

 

 

『……冷静なんですね。それとも……冷たいだけ?……なーんて』

 

『ごめんなさい……ひとりにしてくれますか……?』

 

 

 

『悩んだ時は私に相談してくださいねっ!いつでも一緒にパニクりますからっ!だから私が悩んでる時は、一緒にパニクってくださいねっ!』

 

 

『……絶対、見通くんを私のファンにしてみせますっ!』

 

『……だから、絶対、ここから一緒に出ましょうね』

 

「見通君」

 

 はっと現実に引き戻る。

 

 長い黒髪と、切れ長の目をした女子生徒。

 南界レイコがこちらをのぞき込んでいる。

 

「…………」

 気が付けば、いつの間にか地上に戻ってきていた。

 薄暗い廊下で、どれほどの時間か知らないが立ち尽くしていたようだ。

「……他のやつらは」

「とっくに自室に戻ったわよ」

 相変わらずクールな態度で、南界がふわりと距離を取る。

 

「いつ話しかけようかと思った。意外とセンシティブなのね、貴方って」

 淡々とした態度で、そんな事を言う。

「……何の用だ」

「ごあいさつ。感謝されこそすれ、噛みつかれる謂れなんてなくてよ。私が居なかったら、ずうっとそうしたままいつの間にか気絶してぶっ倒れてたでしょう?そうなったら『自室以外での就寝』…の校則違反に該当して、蜂の巣かしら。私って命の恩人ね」

 朗読するかのように、南界はつらつらと並べ立てる。

 俺の顔を見やると、こてりと首を傾げた。

「ごめんなさいね。ひょっとして傷付いた?私はただ、犯人に一番近い人物が探偵役になったらドラマチックかなあと思って、甘井さんのメモをあなたに託したのだけれど」

「…………」

 

「……お前、いつから声野が犯人だって気付いてたんだ?」

「初めからよ。悲鳴が聞こえた、あの時から」

「だって、いかにも『声野さんが演じている、録音音声』だったんだもの。あの悲鳴」

「…な……!」

 さらりと言ってのける姿に絶句する俺を見て、南界レイコはくすりと笑った。

 

「嫌だわ。あの程度の違いも見抜けなくて、『超高校級の演劇部』を名乗れると思う?」

「それが解ってしまえば……。おまけに、首元の痕だのメモだの見つけちゃったら早々にトリックだなんて察しが付くわよ。脚本として書いたとしたら、没でしょうね」

 

「…ま、仕方ないけど。声野さんだって台本を書いてる訳でもないでしょうし。殺人だって初めてでしょうしね」

「お前は……!」

 

「お前は、何だと思ってるんだ……!ひとの、命をっ…………!」

「…………」

 

「大根役者」

 俺の目を真っ直ぐに見て、南界レイコはそう言った。

「熱のない人間の言葉ってつまらないわね」

 ため息をついて、くるくると指で長い髪をもて遊んでいる。

「ひとの命を、どう思っているか……ね」

 

「……さあ」

「興味ないわ。幕が降りたあとの事なんて」

 そう言って、南界はクールに去っていった。

 

 残された俺は、黙ってその場に立ち尽くしていた。

 そのままいつまでも立ち尽くしているかと言えばそうでもなく、ふらふらと自室に戻り、ベッドに入り込む。身体は今日の疲れを癒すべく、問題なく休息につこうとしている。いつも通り、今日のあれこれもトラウマにならずに済みそうだ。俺は結局…………。

 

 我を忘れるほど、死んでいったふたりに対し心を砕けない。

 

 正気でないほどに、正気でしかいられなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。