ダンガンロンパXXX   作:Krk

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第二章 (非)日常編 -2

 次の日。

 特に何事もない立ち上がりだ。

 行ける範囲が広がったからといって、より活動的になるかと言えばそうでもない。

 読書にも水泳にも、特に興味が引かれない。

 俺はせっかくの新エリアもあまり訪れる気にならず、しばらく寄宿舎の一室でぼうっとしていた。

 

 しばらく後、俺は部屋を出て……。

 視聴覚室に入った。

 懐から、一枚のDVDを取り出す。

 『声野』と名前が書かれたそれは、彼女の部屋……その引き出しの奥に、しまい込まれていたものだ。

 あまり褒められた行為ではないだろう。

 だが、誰に見咎められる訳でもない。

 俺はケースからDVDを取り出し、デッキに差し込んだ。

 

『……』

 しばらく暗い場面が流れ、徐々に画面が明るくなる。

 アップテンポの音楽が流れてくる。

 大きな画面と、スタンドマイクが並ぶここは……スタジオ、だろうか?

 奥に見えるモニター室もいかにも設備投資がされていそうで、ここの経営が栄えているのが見て取れる。

 

『待望の、20周年最新作! CV:声野美遊』

 派手な色使いのキャラクターと、声野の名前が大きく書かれたポスターが所狭しと貼られている。

 

 映像がブレ、暗転する。

 再び映し出されたのは……さっきまでのきらびやかな様子が信じられないほど……廃墟と言えるほどにまで寂れたスタジオ。

 ズタズタにされたポスター達。

 

 明るい、機械的な声が響いてくる。

 

『希望ヶ峰学園に入学した声野美遊さん。そんな彼女を応援していた、たくさんのファンの皆さん』

 

『ところが、彼女のキャリアは、脆くも崩れ去ってしまったようですね?』

『……では、いったい何があったのでしょうか?学園の謎と合わせて考えてみましょう!』

 

『ではでは、シンキングターイムッ!』

 

正解発表は、『卒業』の後で!

 

「……」

 そこで映像は終わった。

 ボタンを操作し、DVDを取り出す。

 彼女の、仕事場と思わしき場所が壊される映像。

 彼女の、多くの犠牲を払ってきたであろう努力が、奪われた事が示唆される台詞。

 

 ……声野はあの夜、何を思ってこの映像をずっと見ていたのだろうか……。

 

「なにセンチメンタル・バカリズムしてんのさっ!」

 

「…………」

 モノクマが割り込んできた。

「……何の用だ」

「いやぁん、浸ってるとこお邪魔しちゃったからって、そんな怖い顔で見なくってもいいじゃない」

 くねくねと身体をよじらせ、小馬鹿にした声で言う。

 

「一応言っとくけどさあ。視聴覚室はあれから、生徒に消灯前の施錠の義務はなくなりました!…声野さんが居なくなって以来、だーれもここ来ないし、勿論鍵のことなんか誰も気にしないんだもん。恐ろしいものがあるよね、現代高校生の消費し終わったコンテンツへの無関心具合はさ……」

「……それだけか?じゃあ消えろ」

「それだけな訳ないじゃん!こんな1シーンだけで場面展開出来るわけないでしょっ、小説も読まないのかよ、きみは!」

 意味の分からない事ばかり言っている。

 

「新展開だよっ、全員体育館に集合!」

 

 俺達は再び、体育館に集められた。

「……今度は、何させようっていうのよ……」

 怯えが滲んだ目で、生徒達がモノクマを見ている。

「何って、決まってるじゃないの」

「新しい『ヒント』の時間だよー!」

 明るい声で、モノクマが発表する。

 

「い、いや……だ……」

 泣きそうな声で、軽井沢がそう言った。

「ま、まいこ……ヒントなんていらない……!そんなの見ないっ!」

「だ……だって、そのせいで、めうちゃんと美遊ちゃんが死んじゃったんだよおっ……!?」

 

「見たくないやつは、見なくて結構っ!…ていうか、そんなビビリには絶対見つけられないようになってるしね」

「どういう意味?」

「題して『宝探しゲーム』ッ!」

 

「この建物内のどこかに、とってもスペッシャルな『宝』を、隠させて頂きました!」

「それさえあれば、この学園生活をと〜っても有利に過ごせちゃうかもっ!?」

「早いもの勝ちなんで、調査はお早めに!」

 

「ほんじゃ、頑張ってねー!」

 言うだけ言って、モノクマは消えた。

 

「……」

 残された俺達は、再び沈黙に包まれた。

「ど……どうしよう?今の……」

「ま、また前回みたいなのがあるんじゃ……!」

 

「……俺は、忘れるべきだと思う」

 明日家が思案しつつ、きっぱりと言った。

 

「提案としては、危険過ぎるよ」

「ま、怖いから見たくないっていう人がいるのは分かるけど。共有する必要なんてないでしょう。個人で勝手に探す分には構わないんじゃない?」

「……それは、もってのほかだと思う。軽井沢君の言った通り……前回の『ヒント』のせいで、すでに二人が犠牲になったんだ。ヒントが何であるにせよ……それを見つけた人物が不透明になるのは一番駄目だ」

「むしろ絶対に誰も探さないように、と言わざるを得ないよ」

「あらやだ。意外とワンマンなのね……」

 

「で、でもぉ、まいこ、そうして欲しいな……。皆で一緒に忘れる、って約束した方が、安心できるし……」

「そ、そーだよね……。誰かが抜けがけしてるんじゃ?とか疑心暗鬼になるの、まじやばいもんね……」

「んじゃあ、何か?結局、新展開に繋がりそうなもんみすみす見逃せってのか?」

 尾後が顔をしかめて言った。

 

「どーせ脱出の目処なんか付いてねえだろうが。日和って安全パイ切ってどーすんだよ?諦めてここで死ねってか?」

「……そうは、言ってない。いよいよとなったら、『全員で』探すのは有りだと思う。……でもそれは今じゃないと言っているんだ」

 

「俺達は……まだまだこの学園について、知れていないと思うんだ。何が起こるか分からないよ……例えば、学園内に連続殺人鬼が潜んでいたりとか……」

「れ、連続殺人鬼ぃっ!?」

「急にB級ホラー?明日家らしからぬ発言じゃん」

「……ものの例えだよ。……とはいえ、あまり適切な発言じゃなかったね。ごめん」

 

「とにかく、俺が言いたいのは……。何があるか分からないからこそ、リスクを取らない方がいいって事なんだ」

「……勿論、真に皆の行動を強制する事なんて出来ないから……これはあくまで、お願いになるけれど」

 

「……どうか、モノクマの言う事を真に受けて、個人で勝手にヒントを探したりしないでほしい。頼むよ…………」

 

 頭を下げる明日家を、皆が黙って見つめている。

 彼の言葉に、それ以上反論する者はいない。

 だが……。

 全員が真に何を考えているか。

 

 俺には誰ひとりとして、それは分からなかった。

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