ダンガンロンパXXX   作:Krk

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第二章 (非)日常編 -3

 

 朝食の後、青空に声をかけられた。

「見通、後でプール行かない?」

「……プール?」

 

「うん、昨日さ……またモノクマが変な事言い出して、空気壊れちゃったじゃんっ?気分転換にガーッと泳いで、すっきりしようよっていう話」

 青空の提案に、少し思案する。

「……行かない」

「えー!?何で何でっ!?」

「なんとなく」

「ちぇー、男子ってノリ悪いなー。結局来るのはあのおチビだけだよー」

 青空はぷいっと唇を尖らせた。

 

「おチビって、琉球宮か?」

「ん。てか、あの子と私が言い出したんだけどさ。女子で来るのは三雲と軽井沢のペア」

「男子っていうか、全体的に集まり悪いだけじゃないか」

「そーとも言うけどっ。……あーあ、明日家あたりは来てくれると思ったんだけどなーっ」

「まあ確かに」

「……なんかね、忙しいんだってさ……。天条は明日家が行かないならやめとくって言うし……尾後はまあ、アレだし……」

「……」

 言いながら、青空はどんどんしょんぼりとしていく。

 

「……行ってもいいけど、俺泳げないぞ」

「え、えぇえっ!?見通って泳げないのっ!?」

「多分」

「しかも多分っ!?」

 今まで泳ぐという経験をした事がなく、自分が果たして泳げるのかどうかすら分からないというのが本当だ。

「へぇ〜っ、逆にレアだね……」

 

「だから精々プールサイドで過ごすくらいだと思うけど、それでいいなら」

「うんっ、いいよいいよ、パチャパチャするだけでも楽しいと思うっ!それにビート板とかもいっぱいあったし、仮にガチカナヅチでも何とかなるって!」

 ……まあ仮にガチカナヅチだったとしたら、あんまりビート板だけで何とかしようとしない方がいいと思うが……。

 

 ともかく水着を手に入れるため、倉庫へやって来た。

 あらゆる物が雑多に並べられていて、目当ての物を見つけるのも苦労しそうだ。

 その中からプール用品っぽい一角を見つけ出し、男子用の水着から適当な物を掴みプールへと向かう。

 生徒手帳をかざし、男子更衣室に入る。ロッカーは一番左上と真ん中より下辺りの二つが使用中になっている。着替えて適当に空いている所に荷物をしまった。

 プールへ出ると、すでに四人が集まっていた。

 

「あ、来た来た!」

「見通くん、やっほ〜」

 青空、軽井沢、三雲の三人がスクール水着姿でこちらを振り返る。

 三者三様のスタイルを過不足なく包んでいるあの水着の素材は、少し気になる所ではある。……これはセクハラか。

 

「ねーねーウソでしょ、見通クンって泳げないのっ!?せっかく一緒に水中バレーで青空ちゃんをボコにしようと思ってたのに〜!」

 左手にラバー素材のリストバンドを着け、小脇に派手な青のビーチボールを抱えた琉球宮が、ぴょんぴょんしながら声をかけてきた。

「ちょっと、なんで私が2対1の1側なワケっ!?」

「だって青空ちゃん、単に山バカなだけじゃなくって運動神経オバケじゃん!こんくらいハンデだって!」

「あんただって運動神経がウリの才能でしょ!…ってか山バカは余計だし!」

 

「見通くん、浮き輪とか持ってないの〜?まいこもう一個持ってきたから、貸してあげよっか?」

 ピンク色のカワイイ浮き輪を抱えた軽井沢にそう聞かれる。

 ……抱えているもう一つの浮き輪も、同じくピンクの女児系だ。

「……ビート板があるから、大丈夫だろ」

 

「それより、その菓子とかプールに溢さないように気を付けろよ」

 相変わらずというか、大量の菓子やジュースを持ち込んでいる。

「大丈夫だよお〜。食べる時は向こう行くし……ちゃんと蓋付いてるやつ持ってきたもん」

 

 青空と琉球宮はビーチバレーを始め、俺達は反対側で軽い水遊びを楽しむ事にした。

 まずは足先から水に慣らし、身体を水につけていく。

 冷たさと浮力が、心地良い感触を伝えてくる。

 軽井沢は浮き輪にすっぽり腰掛けて、その側にいる三雲とのんびりお喋りしている。

 俺も一番大きめのビート板を浮かべ、そこにゆっくり身体をあげていく。

「う……!」

 ビート板が不安定にプルプル震え、ひっくり返りそうになるのを何とか押し留める。

 若干じたばたしながら、足を引き上げる。

「ふう……」

 ようやく座り込み、ひとごこちつく。

 

「隙あり〜っ!」

「ッ!?」

 いきなり後頭部に剛速球でビーチボールをぶっつけられ、頭から水中に突っ込んだ。

「み、見通ーーッ!?」

「やーい、三雲ちゃんのおっぱいに気を取られてるからだよ〜ん、見通クンのエロ〜ッ!キャハハハッ」

「こらーっ!あんた、はしゃぎすぎっ!」

 大喜びで逃げていく琉球宮を、同じように青空が猛スピードで追いかけていく。

 

「……さいて〜……」

「水遊びでの悪ふざけは命に関わるんだから、洒落になってないわよ、まったく……。見通くん、大丈夫?」

「…………大丈夫だ」

 三雲に助け起こされ、水上へ戻ってきた。

 決して気を取られていた訳ではないが、揶揄われた後だと彼女の豊かな胸元は若干目のやり場に困る。

 

 結局その後は軽井沢に浮き輪を貸してもらい、プカプカと浮かんで過ごした……。

 

 

 次の朝。

 結局丸一日プールで遊んで過ごし、筋肉痛になるほど運動してもいないはずだがまだ若干眠気が残る。

 

「もー、琉球宮くん、お魚くらいおハシで食べなよお!」

 軽井沢の少女っぽい高い声が響いてくる。

「しかもちょー逆手持ちだしぃ。お行儀わる〜い」

「うるっさいなあ〜。軽井沢ちゃん、ママかよ!朝からケーキ食べてる子に言われたくないしーっ」

 隣でやいやい言われている琉球宮は、面倒臭そうに顔をしかめている。

 リストバンドを着けている右手にスプーンを持ち、子供のように煮魚をつき刺して食べている。

 …あれは確かに行儀を言われても仕方ないかもしれない。

「ケーキじゃないし、パンケーキだしいー!」

 

「元気だねー、ちびっ子ズは」

 青空が、やや呆れたように言った。

「…お前も、昨日かなり泳いでた割にはいつも通りだよな。疲れとか残らないのか?」

「へっ?あー、まあね。あれくらい体動かしたうちに入んないしっ!」

 …そうなのか。

 琉球宮と一緒に、派手にビーチバレーを延々やっていたが……。

 超高校級的体力とはかくありき、といった所か。

 

「おはよう」

 全員が集合し……すっかり遅刻となった頃、悪びれず南界がやって来る。

 それがここ最近確立されたスタンダードだ。

「……あれ。なんか、まだ来てない子いる?」

「尾後くんでしょ?いつもの事じゃない」

「いや、何かいつもよりもっと少ない気がして……えーっと……」

「……明日家が来てない」

 

 珍しい事もあるものだ。

 言い出した責任もあってか、明日家は朝食会には毎日必ず一番に来ていた。

 そうでなくても人一番時間に気を使うであろう彼が、こんなに他人を待たせる事など、今まで無かった。

 

「ど、どうしたんでしょうか……?明日家クンに限って、遅刻なんて……」

「な……何か、あったのかなあ……?」

「まあ、『何か』ですわな!」

 モノクマが、にゅるりと飛び出てきた。

 

「ぎゃっ!」

「な、何よ……!何しにきたのっ!?」

「ど、どういうこと……?明日家くん、何かあったのお……?」

「そうだよ!だからこうして直接声かけに来てあげたんだから。起こっちゃったよ!」

 

「多分きみたちが、いっちばん想像しちゃってるこ・と。うぷぷぷぷ……」

 

「早く調べに行ってあげた方がいいんじゃないかな?ロックは開けといてあげてるから、すぐに駆けつけられるしさっ!」

「ほんじゃーねー!」

 モノクマは消えた。

 

「と、とにかく、急いで探しに行かないと……!」

「で、でも、どこに行けば……」

「『ロックは開けといてあげた』……って言ったわね。つまり、普段は何かひと手間かけないと入れない場所……っていう事じゃない?」

 南界が、変わらず冷静な調子で言った。

「え……そ、それって……。…更衣室のこと?」

 

 不安を抱えながらも、全員で学園の二階に向かう。

 男子更衣室の扉を手にかけると、音もなく開いた。

 嫌な予感を胸に中に入るも、広がる光景は普段と変わらない。

 

 先へ進み、さらに奥の扉を、開いた……。

 

「キッ……キャアアアアアアアッ!」

 

 目の前に広がるプール設備は、昨日来た時と同じだ。

 青年が一人、そこに浮かんでいる事を除いては。

 

 いつも丁寧に整えられている髪も服も靴も、ぐっしょりと濡れてしまっている。

 頭部から血が流れた跡があり、その一角だけを赤く染めている。

 

 明日家灯。

 その死体が浮かんでいた。

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