致命的な矛盾はないはず(恐らく)ですが、生暖かい目でご覧ください。
学級裁判 開廷
「まずは、学級裁判の簡単な説明から始めましょう!」
「……」
「なーんつって!もういいっしょ?さすがにもういいっしょ?大体お約束って感じで、察しついてるでしょ?」
「捜査の前に説明してあげた分で上等だから!議論してクロを決めて、全員で投票!多数決で決まったクロが正解ならクロだけおしおき、不正解ならシロ全員がおしおき。以上ッ!」
「適当かよ……」
「ほ、本当にこの中に……犯人がいるんですよね……?」
「当然ですっ!」
「じゃあ……。そろそろ、始めようか」
(議論が始まる……)
(気付いた事があれば、俺自身が発言するんだ)
議論開始
「……まず、前提として。殺されたのは、甘井めう君」
「場所は……視聴覚室、でしたよね」
「きっと、甘井さんはそこで犯人に遭遇して……」
「[部屋に入るなり]……殺されちゃったんですね……」
[部屋に入るなり]→[死体発見現場]
「それは違うぞ!」
「ちょっと待て天条。甘井の死体は、モニターの前にあったはずだろ?入口の扉からはそれなりに距離がある。『部屋に入るなり』……とは、言えないんじゃないか?」
「えっ?そ、それは……そうですね。ご、ごめんなさい……」
「えっと、場所は分かったから……次は犯行時刻?」
「殺された時間は、奇しくもはっきり分かるよねぇ。皆食堂に集まってて、時計も見れたしさあ」
「皆で探しに行った、8時頃に、殺されてしまった……って事ですよね……」
「でも朝集まってた子達は、こっそり殺すのなんて無理だよねえ~?」
「アリバイがない人……つまり、朝食会に来てなかった内の誰かが犯人って訳だよね!?」
「来てなかったのは~……。尾後と南界の二人だけだよ!」
「じゃあ、そのふたりのどっちかが犯人だ!」
「な~んだ、思ったよりなんとかなりそうだねー」
「……」
「じゃあじゃあ、尾後くんにレイコちゃん、今日の朝はどこに居たの~?」
「あら、どうして私達ふたりだけそんな事を聞かれるのかしら?」
「ちょっ、話聞いてた?朝食会に来てなかったのが、あんたらだけだからでしょ?」
「それで?」
「だ、だから……。甘井さんが殺されたのは、朝食会の真っ最中で、その時のアリバイがないのは二人だけで……」
「冗談も程ほどにして頂戴。あなた達、彼女の死体を実際に検証したのかしら」
「はっ…?で、できる訳じゃん、そんなん、グロい!」
「……俺は、最初に脈を取ったくらいだけど……。彼女が死んでいたのは確かだよ。身体も冷たくなってて、死後硬直もしているみたいだったから……」
「それで十分よ。……考えてもみて」
「いま、死んだばかりの人間が、『冷たくなっていて、身体も固まっている』……だなんて事有り得ると思う?」
「あ…っ!」
そこで初めて南界は顔を上げると、余裕たっぷりに笑いかけた。
「だから、最初から分かり切っていた筈よ。『甘井めうは、死体発見時よりも数時間は前に殺されていた』……だなんて事はね」
「そんなの有り得ない!」
青空の声が響いた。
「だって、私たちは実際に甘井の悲鳴を聞いたんだよ!?」
「だから、死体を見た時、あの直前まで甘井は[確実に生きてた]はずだよ!」
「それは違うぞ!」
「何!?ちょっと!見通は南界の味方なワケ!?」
「…そうは言ってない。ただ、あの時甘井が確かに生きていた……とは言い切れないんだ」
証拠品提示:『録音機能』
「視聴覚室には、録音機能があった。そして、タイマー付きの再生機能もだ」
「それを使えば、あらかじめ録音していた悲鳴を再生する事で、甘井は朝食会のタイミングで殺されたと誤解させる事が出来る」
「その予報は、雨模様だわ」
【反論】
「ごめんなさいね。見通くんと南界ちゃんが一生懸命考えてくれたのは分かるんだけど」
「お姉さんは、それ賛成してあげられないわ」
「冷静に考えてみてよ。そもそもお姉さんたちは、甘井ちゃんの悲鳴を聞いて、現場へ駆けつけたのよね?」
「それが何を意味するか分かる?視聴覚室で上がった声が、廊下へ聞こえたって事でしょ?」
「だから犯人が録音するにしたって、そんな悲鳴を上げられたら[外に筒抜け]なのよ?誰に聞かれてるか分かったものじゃないわ」
「勿論、聞かれちゃえばその時点で計画は台無し……」
「誰にもバレずに人ひとり殺そうって時に、そんな危なっかしい方法、取るかしら?」
[外に筒抜け]→[二重扉]
「それは違うぞ!」
「いいや、犯人が録音機能を使った時、声は外には聞こえなかったはずだ」
「だ、だけど……!事実として、あの時悲鳴は外にはっきりと聞こえたじゃない!」
「理由がある。視聴覚室は、二重扉になってただろう?二枚の扉を両方閉める事で、防音設備がはたらく仕組みになっていたんだ」
「おそらく、俺達が死体を発見した時内側の扉は開いていた……。そのために、中の声がこちらに聞こえていたんだ」
「犯人がそれを知っていたのなら、それを利用したトリックを使っても不思議はない」
「それは……。確かにそう言われれば、可能だったもしれないけど……」
「俺は……見通君の意見に賛成だよ。そうだとしたら、扉を開けた時に犯人の姿を見つけられなかった事が、不自然じゃなくなるんだ」
「でもさー、それじゃアリバイは全員なくなっちゃった訳だよね?」
「甘井が殺されたのは朝ご飯の数時間は前なんでしょ?だって、それじゃ皆寝てるじゃん!」
「起床時間の、数時間前……。夜時間……ってことですよね」
「夜時間って言うと……夜10時から朝7時の間……だね」
「広すぎるよー!」
「南界さあ、もっと正確な犯行時刻って分からないの?」
「あら、無茶言わないでよ。医者や鑑識でもあるまいし、死体から正確に何時間前に殺された……なんて分からないわ。ただの脚本家よ?私」
「もしくは犯人でもあるまいし……だねぇ」
「夜時間全体のアリバイ…があれば、確実に犯人じゃないって言える……んですけど……うーん」
「夜時間なんて、全員バラバラで夜は寝てるだろうし、完全にアリバイがある証明なんて出来る人間いねえんじゃね?」
「まいこは証明できるよお。だってまいこ、ずっとマーサお姉ちゃんと一緒に居たもん」
軽井沢の能天気な声が上がった。
「はあ?そりゃあ10時から7時までずーっとか?」
「ずーっとだよお。最初に会った時からずっと一緒に居るし、夜だってマーサお姉ちゃんのお部屋に泊まってるんだもん」
「ええ…何その過剰な百合営業……。引くわあ……」
「ちょっと、邪推しないでよね。お姉さんはまいこちゃんが放っとけないタイプだし気が合うから一緒にいるだけよ。『怖くてひとりじゃ寝れない』なんて言われたら、断れないじゃない」
「あー!軽井沢ちゃん、ビビってたんだ!お子ちゃまなんだー!」
「うるさいうるさーい!違うもん!」
「……分かった。とにかく、二人のアリバイは成立だね」
明日家が低身長二人を取りなしながら、水を向けた。
「それじゃあふたりとも。夕べは何してたの?誰か……怪しい動きをしていた人なんかは居なかったかな?」
「何って言われてもね……。探索の続き……なんて気分にもなれないし、結局あの後は夜時間まで食堂でずっとお茶してたわ。それからは朝までお姉さんの部屋にいたし」
「怪しい人物……って言ってもね。何人かがご飯食べにちょっと寄りに来たくらいで……殺人計画練るような余裕はなかったと思うわ」
「夜時間になる10時には、食堂の鍵が閉まっちゃうから……そのちょっと前に部屋に戻って……」
「ああーっ!」
琉球宮のすっとんきょうな声が割り込んだ。
「な、何?」
「鍵だよー!視聴覚室にも、鍵がかかってたんだよー!」
「そ、そうですね……?犯人が、きっと殺したあと……鍵をかけたんでしょうね……」
「じゃあじゃあ、朝みんなで死体を見つけた時、鍵を持ってきたのは?…青空ちゃんだよねー!?」
「つまりー……」
「犯人は青空ちゃんだ!」
「ちょ、ちょちょちょっと待ってよ!」
「鍵がかかった状態で録音した悲鳴を皆に聞かせて、その後隠し持ってた鍵を今取ってきたみたいに見せて、死体を発見させたんだー!」
「んー。確かに、悲鳴が再生される前に誰かが鍵を持ってきて視聴覚室を開けちゃったら、台無しだもんねぇ。犯人がずっと持ってたって考える方が自然かぁ。あの時ミョーに帰ってくるのが遅かったのは、時間稼ぎかなー?」
「違うって!鍵は置き場所んとこになかったんだよ!だから探してて、遅れちゃって……」
「それって証明できるのー?」
「証明、って言われても……!」
「私、居合わせたわよ、それ」
よく通る声で、南界が割って入った。
「彼女が鍵を見つけた瞬間。食堂の床の隅っこに、落ちてたんでしょう?」
「あっ!そーだったそーだった!」
「……ってあれ。そー言えば、何であの時南界も食堂にいたの?」
「あら。私もあの時悲鳴を聞き付けて……皆と一緒に視聴覚室の前にいたのよ。それで青空さんに付いていったの。……まあわざわざ鍵を一緒に探そうとまでは、思わなかったけど」
「な、なーに、それっ!?」
「え〜?なんかすっごい不自然な行動じゃない、それー?」
「そう言われても。私が犯人なら、わざわざ青空さんに罪を擦り付けられそうなのにこんな真似、しないわよ」
「そ、そもそも……!昨日の夜は私が視聴覚室の戸締まりをして、それ以降はずっと厨房の鍵かけに鍵はあったはずなんですっ!」
声野が、震えそうな声を押し留めながら言った。
「……へぇ〜?声野、昨日の夜視聴覚室に行ったんだ?そりゃかなり怪しいねぇ。鍵を返す振りして、そのまま隠し持ってたんじゃないのかな〜?」
「……それもないわ。お姉さんとまいこちゃんが、ちゃんと見たから。9時半頃に、声野ちゃんが鍵を返しに来た所。ちゃんと鍵掛けにかかっているのも見てるわ」
「でも……。じゃあ余計に謎っていうのは、変わりないんだけどね」
「さっきも言ったけど……。昨日お姉さんたちは、夜時間ギリギリまで食堂にいたの。夜時間になったら、食堂は勝手に閉まっちゃうし……それ以降は入れないはずでしょ?」
「犯人の子は、どうやって鍵を手に入れたのかしら」
「一応確認なんだけど……。声野君が鍵を返してから……三雲君と軽井沢君、二人が出て行くまでの間、食堂に来た人はいなかったんだよね?」
「うん、いなかったよお」
軽井沢が頷く。
「……いいえ、正確に言うと……」
「いたわ。一人だけ」
「えええ!?何それ!?じゃー絶対その子が犯人じゃん!」
「それはないわ。だって……もう、ここにいない子なんだもの」
「……?それって……」
「甘井ちゃんよ」
「あ、甘井さんが……?」
「だけど、彼女は今回の事件の被害者なのよ?それとこれとは関係……」
「いや、関係ないとは言い切れない」
証拠品提示→[甘井が持っていたメモ]
「これを見てくれ」
『Mew、見せたいものがあるの。鍵はわたしが何とかするから、0時に視聴覚室に来て!』
「甘井のメモ帳に残っていたものだ」
「えーっと、見せたいものが……」
「この一番上の、猫の鳴き声みたいなの何?ミュウ、って」
「めう、じゃない?…てことは、これって……」
「甘井さんが、誰かを呼びだしてた…って事?」
「そうだよね、昨日の夜12時に視聴覚室で、誰かと会おうとしてたんだ」
「じゃあそのために、鍵を持って行った……って事かな?」
「でも、見せたいもの……って何だろ?」
「視聴覚室に呼び出すってんなら、あり得るのは昨日のビデオじゃない?何かほんとにヒントっぽいものが映ってたとか……」
「そ、それはないと思います……!甘井さんの部屋のゴミ箱に、彼女のDVDが捨てられてたんです。真っ二つにされた状態で……そんなに嫌なもの、人に見せようなんて思わないはずです……!」
「……そうだろうか?」
「え、ど、どーゆう意味?見通だって、ゴミ箱に捨てられてるの一緒に見たじゃんっ?」
「……ああ。そして、あの部屋の不自然な点も一緒に見たはずだ」
怪訝な顔をする青空と声野を見つめ返す。
「甘井の部屋は……ゴミ箱もクローゼットも、もので溢れ返るくらい雑多だった。だが、床だけは髪の毛一本も落ちていないほどピカピカに掃除されていた」
「この不自然が起きた理由を推察するに。甘井以外の誰かが、彼女の部屋に入った痕跡を消すために、床を掃除したんじゃないだろうか」
「……つまり、あのDVDを叩き割って捨てたのは、甘井ではなく……犯人だったんじゃないだろうか?」
「そうすれば……この事件の『動機』も、推察できる」
「甘井が悪気なく見せようとした彼女のDVDは……。犯人にとって、何らかの逆鱗に触れるものだった」
「それこそ……。人ひとり、殺してしまうほどに」
俺の発言に、誰かが唾を飲み込んだ。
「じゃ、じゃあさ、これさ……呼び出された『誰か』が犯人って事で……ほぼ確定じゃない?」
「けどその『誰か』を、どーやって当てんだよ?」
「うーん、それは、えーっと……」
「……ごめん、もっと早くに言うべきだったのかも知れないけど……」
何か考え込んでいた明日家が、神妙な顔をして言った。
「俺は……やっぱりあの悲鳴は不自然だと思う」
「え?」
「皆、あの時聞こえた内容を、思い出してほしい」
「え?えーと……『やめて』『来ないで』って言ってたよね?」
「そんで、その後に悲鳴が聞こえた……と」
「……で、それの何が不自然なんだよ?」
「甘井君の声以外に、何も聞こえなかった事が……だよ」
「発言は明らかに、犯人に対し抵抗ないし逃げようとしているような物だった。なのに、声の他に椅子とか他の物が動くような、周りの環境音が何もなかった……。それって、変じゃないか?」
「そ…そう言われたら、そうかもしれないけど……」
「じゃあ、あの時実際に聞こえた声は何だったって言うのさ!?」
「えー、やっぱり、おばけとか?」
「急にオカルト!?」
「それか、集団幻覚だよー!」
「ひゃあー、話にならねえや。明日家自身はどう思うのー?」
「…俺は……」
「……正直、偽装されたものじゃないか、と考えるよ」
「例えば、何らかの方法で犯人が甘井君の声を騙ったんじゃないか……とか……」
「い、いやいやいや!」
「声マネってこと?そんなん、すぐバレるでしょ!?」
「そーだよお、現実的じゃないって!」
「…………」
……喉が、ひどく渇いている。
「……いや」
「それが出来る人物が一人だけいる」
人物指名:[声野美遊]
「……お前だ、声野」
「え……!?」
指を差された声野は、一瞬ぽかんとした後……愕然として目を見開いた。
「ちょ、ちょっと待ってください……!何で、私が……!?」
「……理由は、お前の才能だ」
選択肢選択:[超高校級の声優]
「声野は超高校級の声優……演技のプロだ。つまり……」
「あれは甘井の悲鳴じゃない。声野の悲鳴だったんだ」
「な……!」
「……む、無理です!そんなの無理ですよ!」
「演技って言っても、限界がありますよ……!他人の声そっくりそのままなんて、真似出来る訳ないじゃないですか!」
「そうか?お前は先日高梨や軽井沢の声マネをして見せたが……目の前にいる俺ですら、騙されそうな完成度だったぞ」
「……そもそも、初めに甘井を探しに行こうと提案したのも……視聴覚室に誘導したのも、お前だったよな」
「……そして、甘井に一番最初に駆け寄ったのも……お前だ。あの時、動揺した拍子にデッキのボタンに触れたように装っていたが……本当は、あの時録音していた悲鳴を消そうとしていたんじゃないのか?『新規録音は、ボタン二度押し。前の音声は自動消去で上書きされる』……だったよな?」
「ち、違います……!誤解ですよ、そんなの……!」
「そ、そもそも、おかしいじゃないですか……!呼び出されたのが、私だなんて決めつけないでくださいよ!なんで、甘井さんが私を呼び出すんですか?」
「私と甘井さんになんか、[何の共通点もない]んですよ!?」
[何の共通点もない]→[メモ帳のマーク]
「それは違うぞ!」
「甘井のメモ……クローバーと、羽がデザインされたマークが入っているよな」
「……これ、お前の校章と同じじゃないのか?」
「!!」
「あ……!確かに、よく見たらこれってレコ女のマークだ!」
「で、でも~……。めうちゃんの高校って、別のとこだったはずだよ?」
「声野の学校は、確か中高一貫なんだよな。だから、例えば……」
「お前と甘井は、同じ中学だったんじゃないのか?」
「うく…っ!!」
声野の顔が、ぐっと歪む。
「だ、だとしたら、確かに……。知り合いだったなら、呼び出しにも辻褄が……」
「…知りません、そんなの……!」
「甘井さんと同じ中学だったかなんて覚えてないし……、話した事ありません!」
「第一呼び出されたのが私かなんて、結局分からないじゃないですか!名前が書いてある訳でもないし……!」
「いいや。メモにはお前の名前が書かれていたんだ」
「へっ?で、でもどこにも『声野』なんて書いてないけど……」
「高梨」
「…んぁ。僕?」
「お前、これを見た時『猫の鳴き声みたい』って言ってたよな?」
「えー?あー……。いや、英語で書いてあるからさ~?」
高梨が、やや面倒そうに扇子を振りながら言った。
「欧米だと犬の鳴き声の表現って、Bow‐wow(バウワウ)じゃん?そんで猫の場合だと、Meow(ミャウ)とかMew(ミュウ)だから……猫っぽいなって思ったんだよねえ」
「…で、それが何よ?」
「Mewで、ミュウ。……“ミユウ”」
「お前の名前だ。声野美遊」
「…………!!」
「ほ、ほんとだ…!さ、さっきからさ?偶然にしては……」
「……その呼び方、嫌だって言ってるのに……」
声野が俯いたまま、ぽつりと言った。
「声野。……そろそろ、認める気になったか?」
「……まさか。偶然ですよ、そんなの」
「……やめてください、見通くん。いい加減にしてくださいよ。さっきから、言いがかりばっかり……!」
「……そうか」
「だったら……俺なりにまとめた形で、今からこの事件を振り返る。反論があるなら……言ってみせてくれ」
【クライマックス推理】
「初めに……。今回の事件の犯人は、甘井に呼び出され、夜0時に視聴覚室を訪れた」
「そこで何らかの行き違いがあり……結果的に犯人は、甘井を絞殺するに至った」
「殺人を犯し……隠ぺい工作を目論んだ犯人は、視聴覚室にある録音機能のシステムに目を付けた」
「自分の悲鳴を録音し、翌朝8時頃に再生されるようにセットした。そして、二重扉を片方だけ開けておく事で、再生時に音声が外まで聞こえるようにしたんだ」
「そして、翌朝朝食会に来ていない甘井を探しに行こうと、生徒をさりげなく視聴覚室の方へ誘導する。隠し持っていた鍵は、食堂を出る際そっと床に置いていったんだろう」
「そうして……悲鳴を聞かせた後、他の生徒と共に死体を発見したように装い……甘井がたった今殺されたように見せかけたんだ」
「勿論、これは他人の悲鳴を偽造しなくてはならないという、普通は無理のあるトリックだ」
「……だが、今回の事件の犯人にだけは、それが可能だったんだ」
「天才的な演技力と、七色の声を持つ『犯人』なら……」
「そうだろう?……『超高校級の声優』、声野美遊!」
「い……いや…………」
「いやああああああああっ!!!」
悲鳴をあげて、声野が頭を抱え髪を振り乱した。
しばらく黙った後……低い静かな声が聞こえてくる。
「……証拠は……」
「証拠はあるんですか?」
「あの時の悲鳴が録音された物だって……その声が私だって!呼び出されたのが私だって、私が実際に視聴覚室に行ったって、その証拠は!!」
「私が殺したって、はっきりした物的証拠はあるんですか!?あなたの言ってる事なんてっ……!全部こじつけじゃないですか!」
証拠品提示:[首元の痕]
「……証拠は、お前のリボンタイだ」
「!!」
「昨日までは……お前のタイには、花柄のブローチが付いてたよな?……それ、どこにやったんだ?」
「……こ、これは……いつの間にか、なくしてしまって……」
「なくした?それはおかしいな」
「自室のクローゼットには、それぞれの制服の予備が何着も用意されている。一つなくしても、いくらでも替えがあるはずだ」
「……う、ぐ……っ!」
「……甘井の首元には、紐状の物で絞められた痕と、花弁のような形をした痕があった」
「お前は、制服のリボンタイで甘井の首を絞め、殺害したんだ」
「恐らく、犯行は突発的なもので……とっさに身近にあった物で殺したため、証拠が残ってしまったんだろう」
「……お前は、ブローチをつけるのが怖かったんだ。決定的な証拠を、目に止まりやすい胸元につけておく事への心理的プレッシャーはかなりのものだからな」
「そして……甘井の喉元には、僅かに血が滲んでいた。絞殺する際ブローチが強く押し付けられ、皮膚が切れてしまったんだろう」
「殺してしまったあと……お前は証拠の隠滅に悩んだはずだ。ゴミ箱に捨てる訳にもいかない。例えば他の証拠……本物の呼び出しメモなんかは、千切ってトイレに流すなりどうとでも隠滅できるだろうが、ブローチはそうもいかない」
「他のところに隠しても、誰に見つけられるか分からない。だから……」
「……お前は今も、持っているはずだ。甘井の首元についた痕とぴったり合い……甘井の血が付着したブローチを」
「……………………」
反論はもう、何もない。血を失ったような真っ白な顔で、ぶるぶると震えている。
「あぁ…………」
糸が切れてしまったような、ため息ともつかない小さな声が声野から漏れた。
真っ青な顔をして、ただ呆然と下を見つめている。
「見通くん……私……」
「ヒロインになれると思ったのにな……」