こちら新エリー都ヤヌス区分局都市秩序部捜査課特務捜査班作戦室!   作:チキンうまうま

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 祝アプデ




俺と生真面目先輩 ②

 

 突然ですが、みなさん。やる気の起きない仕事ってありますよね。

 それがエアコンも効いてない、光を遮るもののない屋外だと余計にやる気って消えますよね。

 

「よ、よいこのみんな、こーんにーちはー」

「こんにちはだぷー!」

「「「「「こーんにちはー!!」」」」

「こんちはー…」

 

 たとえばこんな感じに。

 死んだ目をしたネジの横で、朱鳶が努めて明るい声で挨拶をした。返事をしたのは目の前に座る大量の子供達(クソガキ共)。そしてなんかよくわからんマスコットのにゃんきち…にゃん太郎だったかもしれない、の着ぐるみ。その3人が揃って平日の真昼間から新エリー都のある小学校を訪れていた。

 

 それ即ち─小学生達に対する交通安全教室、と言う奴である。

 

 

 

 

 

 

 

 そもそもは3日前に遡る。

 

「突然ですが、皆さん。急な仕事が入りました。」

「…急襲ですか?」

 

 厳かな顔で発表した朱鳶に、班員全員からのギラついた眼差しが突き刺さる。

 

 最年長の青衣は片方の目を瞑目しながらも三節棍を握りしめ、最年少のセスは緊張に武者震いを起こしながらも警棒に手を伸ばす。そしてネジは自身の装備たる特殊バックパックに手を伸ばした。

 が、発言した本人である朱鳶がそれを手で制す。

 

「いや、すみません。今のは私の言い方が悪かったです。急襲…と言うか戦闘ですらありません。」

「…なら、何かの捜査ですか?刑事課から救援要請とか?」

「え、刑事課って俺らにも救援出すんですか?」

「出すわけなかろう。あそこは排他的、かつ自分の手柄を重んじるである連中の集まりであるからの。」

 

 首を振りながら否定した朱鳶の発言を聞いて、全員が思い思いに口を開く。朱鳶は一度コホンと小さく咳払いをして、

 

「静かに!仕事はこれから発表します。」

 

 凛とした声で号令をかけた。その号令に全員が押し黙り、再び朱鳶に視線が集まる。

 

「その仕事は…小学生への交通安全教室です。」

「「「…はあ?」」」

 

 若干言いにくそうに告げられたその任務に、全員が素っ頓狂な声を上げた。班員の中でもとりわけ喜怒哀楽の激しいセスだけでなく、青衣までが声を上げるのは珍しい。

 

「あのー、班長。ちょい質問いいです?」

「どうぞ、ネジ。」

「はい。…あのー、それ、交通課の仕事では?あいつら何してるんですか?」

 

 手を挙げたネジが発したその質問にセスが大きく頷く。青衣は局内のデータファイルにアクセスしているのか、微動だにしていなかった。

 

「はい、その、交通課ですが…」

 

 ネジの質問に、ものっすごく言いにくそうに朱鳶は答えた。

 

「集団食中毒です。」

「はい?」

「ですから、集団食中毒です。保健所によると交通課の飲み会で出た牡蠣がダメだったのではないかとのことで。」

 

 作戦室に沈黙が降りた。

 

「牡蠣かあ…。」

 

 最初にその沈黙を破ったのはネジだった。

 

「牡蠣ならしゃーねえな。美味いもん。」

「いや先輩、美味けりゃ仕方ないんですか?」

「セスよ、こう思うのはこやつだけじゃ。普通はそんなことはない故、惑わされるでないぞ。」

 

 全員の思うところとは違うところに着地したネジにセスと青衣が呆れる中、ファイルをめくった朱鳶が続きを口にする。

 

「えーと続きですが…日時は3日後。5番街の小学校で小学4年生を対象に行われます。」

「ふむ、3日後か…些か困ったことになったやもしれぬ。」

「え、青衣さんもですか?俺もです。」

「…え、青衣さんもセスもなんかあるんです?」

 

 渋い顔で腕組みをした青衣はうむ、と頷いてから重々しく口を開いた。

 

「その日は生憎この機体(からだ)のメンテナンスの予定が入っておっての。技術部も絡むゆえ日時をずらすこともできぬ。」

「それは仕方ないですね。それで、セスくんは、確か…」

「1日出張です。11番街に。」

 

 そこで全員がちらりとネジを見た。その視線を受け、ゆっくりとネジは頷いた後満面の笑みで口を開く。

 

「俺、その日有給とっていいですか?」 

「良いわけないでしょう?」

 

 ネジの願いは朱鳶にバッサリと切り捨てられた。

 

 かくしてネジと朱鳶は交通安全教室とやらに行く羽目になったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、えーと…みんな、交通ルールは知ってるよね?」

 

 慣れないながらもマイクを握る朱鳶に、知ってるー、と校庭の地べたに座る子供達の無邪気な声が返ってくる。

 

「そ、そうだよね。なら…信号とかの話じゃなくて、えーと…道路交通法に着いてお話するね!」

「「!?」」

 

 ちょい待てや。朱鳶の口から飛び出したまさかの言葉にネジとにゃん…なんとかはそう言わんばかりの目を向けた。

 

「では、道路交通法第一条からですが…『班長ストップ。ストップ。それ小学生はわからないです。』…え?ああ、マイク!」

 

 小声で朱鳶を制して、手からマイクを取り上げる。そのままネジはマイクを口元に寄せ、何を話すか即興で考えながら口を開く。

 

「ここからは僕が話しますねー?僕のことは、気軽にネジお兄さん、って呼んで下さーい。」

 

 ネジがそう言ってチラリと校庭の隅へと目をやった。そこには彼の思う通り、小学校に来るまでに使った車両が置いてある。

 

「えーと、みんな自転車とか乗るかなー?それともスケボーとかスクーターとか使うのかな?」

 

 目線を子供に向けながら質問を投げかける。こう言った講話で大事なのは相手に返事をさせること。ただ一方的に話すだけの講話などつまらないことこの上ないのである。

 事実、ネジの目論見通りに子供達からは口々に返答が返ってきている。

 

「はーいありがとう。みんな色々使ってるねえ。じゃあ、そう言うのに乗って車の側を通る時、気をつけてることってあるかな?」

 

 車の鍵をポケットから取り出し、朱鳶に渡しながらネジはにこやかに全員を見渡した。マイクの音量を切って、小声で朱鳶に話しかける。

 

『班長、車持ってきてください。早く。』

『え、え?』

『いいから、早く。』

 

 背を押された朱鳶が車へと走っていくのを見て、ネジは再びマイクをオンにして声を張り上げた。

 

「……うん、じゃあ今日は車を運転する人にとって、どんな自転車が危ないかって言うのをお話していきます!じゃあとりあえず…治安局の車に乗ってみたい人手を挙げてー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「疲れたっす。もう二度としたくないっす。」

「お疲れ様でした、ネジ。…本当に、今日は助けられましたね。」

 

 どうにか交通安全教室を終わらせた帰り道。治安局へと戻る道を運転しながらネジは大きなため息をついた。

 

「いやほんとですよ。先輩、子供苦手なら先言ってくれません?」

「いえ、イメージの中ではできるはずだったんです。その、期末テストの話か交通法の話をするかで考えた時、交通法の方が興味を引けると思ったんですが…。」

「いやいくらなんでも難易度高いですって。小学生向けなんて身近な話してりゃいいんですよ。」

 

 片手でコーヒーを飲みながらハンドルを握る。はて、何か忘れている気がするが気のせいだろうか。

 

「…そうですね。勉強になりました。次回があれば今日を参考にします。」

「次は交通課の連中にしてもらいましょ…と言いたいところですけど異動の可能性もあるんですよねえ。嫌だなあ。」

 

 俺はガキにお話とかするよりギャングだのエーテリアスとドンパチする方が好きです。そう言ってネジは笑った。

 

「…そうですか?ネジは今日みたいに子供の相手をするのも向いていると思いましたが。」

「マジで勘弁。俺は基本荒事専門ですよ。」

「そう言うものですか…なら」

 

 夕日の差し込む車内で、助手席に座る朱鳶がつぶやいた。

 

「ネジにはもう暫くは私の部下でいてもらいますね。」

「そうっすね。俺が独立して班を持たない限りは…あぁぁあ?」

 

 それに対するネジの返事の語尾が尻上がりに上がっていき、ハンドルを傾けたからなのか車内が大きく揺れる。その奇行に朱鳶は訝しむような目を向けた。

 

「ネジ、どうしたんですか?」

「にゃんたろうくんを連れて帰るの忘れてました!」

「…一大事じゃないですか!すぐ引き返しますよ!」

 

 車内で2人の叫び声が響き、先ほどまで穏やかな帰り道を進んでいた車は一転、道路に跡を残すほどのUターンを決めて慌てて来た道を戻って行く。

 

「待って先輩!俺のスマホめちゃくちゃ着信来てません!?」

「これ全部にゃんきちくんからですか!?どれだけ待ってるんでしょうか彼…。」

 

 

 





朱鳶
 PVみる限り基本子供は苦手そう、と言うところからこの話は書かれました。

ネジ
 子供は苦手。『だってあいつら声高いじゃん。耳がキンキンするんだよ』とのこと。

青衣
 属性もりもり森鴎外先輩。使ってて楽しい。

セス
 俺こいつ好きだわ。詳しくは今回のアプデストーリーを見よう。

牡蠣
 美味しい。
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