東方白露伝   作:すぷりんくらー

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第玖話 紅霧異変 其ノ四

紅魔館のメイド、十六夜 咲夜に案内されてとある部屋に辿り着いた。扉が大きい事からこの館の中でも地位の高い者がいる、若しくは大人数が入るスペースなのだろう。

 

「此処でお嬢様がお待ちして居ります」

 

と、咲夜は私が戦うべき相手の部屋へとの案内を終わらせる。恐らく、『お嬢様』とやらに入るなと言われているのか、それとも負けた者が入るべきではないと自分の立場から客観的に見ているのか、どちらにせよこのメイドは上下関係をよく理解しているらしい。

 

「・・・さっさと終わらせるか」

 

そう言って扉を開くと、予想通りの赤い内装と、如何にも貴族様って感じのアンティークが置かれ、奥の高い玉座に『お嬢様』と思しき人物が座っている完全な趣味部屋となっていた。

 

「よく此処まで来れたわね、人間」

 

「お褒めにあずかり光栄です・・・って言えばいいかしら?前置きはこれくらいにして、さっさとあの紅い霧を止めて欲しいんだけど」

 

「私が目的を達成したら良いわよ?それとも、私を倒すか」

 

レミリア・スカーレットには目的がある。この幻想郷を支配し吸血鬼の国にし、天敵である太陽から逃れる永遠の夜を作り出すことである。その為、手始めに紅い霧で陽射しを遮断し、擬似的な夜で能力が上がっているうちに支配する作戦であった。それでも必ず異変解決グループがやってくるので先に返り討ちにするつもりだったのだ。

 

「倒させてもらうわ」

 

ここまでは予想通り、だがレミリアは決定的なミスを犯していた。それは、霊夢が強かったことである。

 

裕貴side

 

木でできた扉を斬り飛ばし、中へ進入する。部屋の中は子供っぽくて、そこら中に壊れたオモチャや家具が散乱してある。内臓にもみえる綿が飛び出た人形、脚以外は完全に粉砕されたテーブル、ボロボロになって尚動いている古時計、しかし壁には一切傷が付いていない。

 

「誰・・・?」

 

奥のベッドから声が聞こえた、恐らくフランドール・スカーレットだろう。

 

「ワー、マチガッテヘンナトコロニキチャッタナー、サッサトデナイトナー」

 

しまった、自分でも思うに凄く棒読みになってしまった。言いながら裕貴は出口から出ようとするが、

 

「待って」

 

(あ、ヤバイ死んだなこれ\(^p^)/)

 

一瞬死を覚悟するが、別にする必要なかった。

 

「どうして優しくしてくれるの?」

 

この時点で、フランがおかしい事が分かる。裕貴はまだ扉を破壊しただけで直接何か優しくしてあげたわけではない。バレバレの棒読みだったが。つまり、たかが扉を破壊した事が分かっただけで優しいと感じてしまうほど、優しくされなかったのである。

 

「・・・自分の為だ。自分が、見ていられないから。唯、それだけ」

 

事実、フランの狂気は誰かが如何か出来るものではない。しかし、異変解決グループの中でフランを知っているのは裕貴だけである。ならば、狂気を消すのではなく、狂気をフラン自身に認めさせる。狂気を、受け入れさせる。

 

「フラン、此処から出たいか?こんな狭っ苦しい部屋から出たくはないか?出たいならよく聞け、俺は助けない。手助けしか出来ない。後は、自分でなんとかしろ。お前を閉じ込めた姉に、そして自分にその狂気を認めさせろ」

 

刀を鞘に収め、部屋を出る。言いたい事だけ言って帰るとか酷すぎじゃね俺。直後、雄叫びのような凄まじい叫び声が部屋の外まで聞こえる。それと同時に爆発音と瓦礫の崩れる音がした。

 

「さて、霊夢が巻き込まれていないか見てこよう」

 

霊夢side

 

「その程度なの?吸血鬼って」

 

「・・・クッ」

 

霊夢レミリアを圧倒している。被弾は0、ボムは残り3、対してレミリアは残りスペルカードは2枚、負けていることにレミリアは顔を歪める。

 

(負けるわけにはいかない、あの子の為にも、負けるわけにはいかない!)

 

二枚目のスペルカードを宣言しようと手を動かした瞬間、爆発音と共に床が爆ぜた。煙が無いことから爆弾などではない、爆弾と言うより破壊されたに近い。瓦礫がパチパチと弾けるのを傍らに、一人の少女が出てきた。

 

「・・・フラン・・・?」

 

それはレミリアが知っているフランではない。狂気を纏い、全てを破壊する最凶の吸血鬼。しかし此処にいるフランは、真っ直ぐにレミリアを見据え、狂気を微塵も感じさせない、まだ地下に閉じ込める前の純粋なフランだった。

 

「何で此処にいるの?早く戻りなさい」

 

「お姉様!私、此処から出る!」

 

今、フランは何と言った?此処から出る?そんな事を許せるわけが・・・。胸中に抑え込んだ思いは、フランの目を見れば消えて無くなるものであった。

 

「私のこの狂気も衝動も全部受け止める!だから!」

 

「・・・だったら、この私を倒してから行きなさい」

 

僅かな怒気を含ませて諦めを促すが、今のフランが早々諦めるわけがない。互いが互いの最強の武器を呼び出す。

 

「神槍【スピア・ザ・グングニル】!」

 

「禁忌【レーヴァテイン】!」

 

魔理沙side

 

本を読んでたら遅れちまったぜ、爆発音がしたから来てみれば、なんだなんだ、仲間同士で争ってるじゃないか。

 

「なあパチュリー、どういう事だ?」

 

「私が知るわけないでしょ」

 

霊夢がつまらなそうな顔してるぜ、一体全体何だってんだ。

 

「よう、遅かったな」

 

お、裕貴?何か何時もと違う・・・気のせいか。

 

「何が起こったか分からないって顔だ。簡単に説明すると、今までずっと閉じ込められてたあそこのデカイ剣持ったフラドールって奴が、今槍持ってる姉のレミリアに自分を認めさせようと決闘を挑んだってわけ」

 

仲間同士で争ってるって強ち間違いでもないな。

 

「お〜い霊夢、大丈夫か?」

 

「はあ、まあ。戦わずして勝つのもいいでしょ」

 

「勝つか如何かはまだ分かってねえけどな」

 

あーあーあードンドン壊れていくぜ、こんなに激しい姉妹喧嘩は初めて見た。・・・ちょっとヤバイな、何かグラグラいってるし。え、ちょ崩れてるヤバイって!

 

「ヤバイわね。二人とも、外に出るわよ」

 

「わかったぜ」

 

そうして私と霊夢は後ろに飛んだ。が、裕貴だけが前に飛んだ。

 

「「裕貴⁉︎」」

 

そうして、瓦礫が裕貴を隠して見えなくした。

 

「裕貴!裕貴ーーーーッ!」




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